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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第二十四話 ウチナンチューその三

「大阪や奈良の方も」
「そうなんですね」
「日本の誰もが」
「東北の時みたいに」
「はい、忘れられない記憶となりました」
「東北は特にですね」 
 まだあの神戸の時の方がましだった、あの震災に比べたら。
「酷かったですね」
「全くです」
「あの時の政府も」
「言うまでもありません」
 それこそだった、阪神大震災の時も酷かったけれどそれ以上にあの時の政府は酷かったとだ。皆口を揃えて言う。
「最低でした」
「そうでしたね」
「はい、本当に」
 それことだ、畑中さんは今度は忌々しげに僕に答えた。
「何もかもが」
「原発のことも」
「その他の対応も」
「その全てがでしたね」
「最低でした」
「しかも責任者は」
 当時のその彼等はというと。
「今も逃げていますね」
「責任逃れに」
「そうですよね」
「そうした意味でも最低です」
 本当に何もかもがだ、あの時は。
「何も肯定出来ません」
「醜いものも見ましたね」
「はい」
 畑中さんの口調は今も忌々しげだった。
「醜く卑劣で」
「あそこまで人間は醜くなれるんですね」
「はい、人間は何処までも美しくなることが出来」
「醜くもですね」
「何処までも」
 こちらもというのだ。
「そうなります」
「そうですね」
「その通りです、しかし」
「しかしとは」
「先程言いましたが」
「美しくもですね」
「なることが出来ます」 
 言葉は可能形であった、否定ではなく。
「そうなります」
「そういえばあの東北の震災の時も」
「政府関係者はそうでしたが」
 特に首相はだ、とにかく醜く卑しかった。けれどその他の人は。
「それ以上にです」
「多くの人がですね」
「はい、素晴らしい心を以て」
「そうしてですね」
「多くの人を助けてくれました」
「そうでしたね」
「あの時も」
 あの震災の時もというのだ、神戸の。
「そうでしたから」
「だからですね」
「人は醜いものだけではない」
「そのことはですね」
「覚えておいて下さい」
 こう僕に言ってくれた。
「これはどの場所もです」
「同じですね」
「左様です」
 畑中さんの言葉はとても強かった。
「人は極めて複雑です」
「醜いものであり」
「そして薄汚くもあります」
 こうした負の一面もまた事実だというのだ。
「このことはです」
「どうしてもですよね」
「否定出来ません」
「そうですよね、けれどですね」
「醜悪であると共に」
「美麗でもあるのですね」
「そうです、だからこそ人は素晴らしいのです」
 いつも以上にだ、畑中さんの言葉は僕の心に残った。そして畑中さんは僕にこうしたことも言ってくれた。 
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