| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

宇宙世紀UC外伝 もう一つのUC計画

作者:C.D./hack
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

出撃

 
前書き
ようやく出撃。名前はまだ募集。 

 
 二日後 ラー・デルス

「なぁ、少しは話聞いてくれんかなぁ、フヅキ」

それを聞いたフヅキは汚物を見る瞳でカペルを見た。
まぁ、綺麗な瞳なのでカペルはなんともない様子でそれを見ていたが内心、

(やっべー、このせいで俺、訴訟起こされてビスト財団から追い出されて破滅すんじゃねぇか!?)

と思っていたのは秘密である。

「あんなこと言って悪かったよ。俺は褒め言葉のつもりで言ったんだぜ?」
「いきなり胸が大きいなアンタっていう人がいますか!?普通!?」
「見た目より少し年いってんだよ!ちょっとしたジョークとして受け取れねぇのか!?」

舞台は二日前、カペルがラー・デルスに入ったところから始まる。

あの後すぐにカペルスウェイトがデッキに運び込まれ、微調整をしていた時だった。
長時間追加装備を組み立て、更にジェガンの整備をしていたら、フヅキが片手に差し入れを持って現れたのだ。

「どうぞ」
「お、ありがとう。気がきくなぁ、アンタ」
「フヅキです。ついでに言いますが、私の方があなたより階級は上です」
「え?マジか。どんぐらいだ?」

「中佐です」
「へぇ、高給取りで美人で気遣いできて胸デケェってあんたいい嫁さんに…………」

ビシッという音が聞こえた。カペルはその音がフヅキの方からしたため、そちらを見た。
見ればフヅキの顔は真っ赤に染まっている。

「今、胸がなんて言いました?」
「ん?胸がデケェって。あ、そうだ。別に隠す必要もないんだからタブレットどかしたらどう、ぶべらっっ!!」

フヅキ渾身のタブレットの一撃が、カペルの顔面にクリティカルヒットした。

「おま、ちょ、何すんだよ!!痛いじゃねぇか!!」
「胸のこと撤回してください!!こう見えてコンプレックスなんですよ!!」
「そんなたかが胸のことで、ウゴォ!!」

もう一回、今度は顔面ではなく、正真正銘男の魂にフヅキの蹴りが炸裂した。

「二度と!言わないでくださいね!」
「ふぁ、ふぁい…………」

ということがあった。

それ以来カペルはそのことを言っていないのだが、その場にいた整備兵からいろいろ伝わってしまったらしい。
ついでに噂だが、すでにそいつらの魂は使い物にならなくなるほど蹴りを受けたらしい。中には新しいものに目覚めてしまった奴もいるらしく、

「ブヒィィ、もう一回お願いしますゥゥ!!」

というのを一室から聞いた奴がいるらしい。恐るべし、フヅキの蹴り。

「あーもうわかった!!しちまったことに対するけじめはつける。それでいいだろ?」

フヅキは相変わらずタブレットで体の前面を隠しながら、嘘つきを見る目でこちらを見ていた。

「でぇじょうぶだよ!!そんぐらいの約束守んなきゃ男じゃねぇ」
「そうですか。ならけじめ、期待してますよ」

去り行くフヅキの背中を見送りながら、カペルはモビルスーツデッキへ向かった。

(さてと…………後は微調整だけだ。シャンブロのクロー、バックパック変形システム、アームドアーマーを一つの追加ユニットとして使用する。その名もガイトラッシュ)

「ま、微調整っつっても、10分ありゃ終わる」

鼻歌と独り言を言いながら、カペルは調整を始めた。

「あの、カペル中尉!僕らにもそれ…………見せてもらってもいいですか?」

若いメカニック二人がそう言うと、カペルは満面の笑みでいいぞと言った。

「うわぁ、サイコフレーム…………!すごいなぁ!」
「あれ、お前らサイコフレーム知ってんのか?」
「知ってるもなにも、僕たちのいるアナハイムが研究してるやつですよ!!努力し続けて、それが認められてコレの開発班に入れてもらったんです」

この若さで…………と内心思いながら、カペルは二人の名前を聞いた。

「僕はヨハン!で、無口なこっちの人が…………」
「ロジャー」

こら、見せてもらってるんだからもう少し愛想良くできないのか?と言いながら、ヨハンは熱心に設計データとOSを見ていた。

「あ、カペル中尉。ここ、こうすれば出力と冷却系が上がりますよ」
「お、マジか。ありがとよ、たのんだわ」

そうしているうちに、ガイトラッシュは完成した。カペル一人が作っていたものよりも数段良くなって。

「ありがとうな、二人とも。アナハイムの方でも頑張れよ」
「はい!こっちも大事なデータ見せてもらってありがとうございました!!」

二人が去るのを見送ると、コクッピットを除いた。
そこに、一つの影があった。

「誰だ!?」
「あ、カペル。出られなくて困っていたんだ」
「番外個体!?なんでここにいんだよ!」
「ついて来ちゃダメだったか?」

いや、別にダメじゃねぇけどと言ったところで言葉に詰まったカペルはそのままコクピットに入り、ハッチを閉めた。

「何をするんだ?」
「起動実験」

起動実験を開始していきなりだった。カペルスウェイトの全身から、蒼炎と共に同色の燐光が溢れ出たのは。

「っ、何だ!?」
「あ、う。なんか、頭に…………!」
「番外個体!?」

カペルが後ろを振り向くと、番外個体は言葉を発した。

本物(オリジナル)の、ラプラス憲章…………そこに、答えがあ……る」
本物(オリジナル)のラプラス憲章…………!?番外個体、お前何言っ、何だ!?」

虹色の光が広がった。

(この光は……ッ……俺をあの悪夢から連れ出した……!?)

虹色の光が周囲を包み込む中、その先に見えたものは。
白鳥と。

(あの男は!?)

初代連邦首相リカルド・マーセナス。

(何を話してんだ!?)

そう思った瞬間に虹の燐光が一層強くなり、その奥に見つけた言葉は。

「ラプラスの箱!?なんだ!?なんだって言うんだよ!!うわっ!!」

女の声が頭蓋の奥で響き渡る。

「星の輪の子供…………可能性を超えてしまった子供」
「ニュータイプを超える存在」
「あなたなら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()
「大佐をよろしくね」

「大佐?シャアのことか!?あんたは一体何者なんッ」

虹の光に押し出されると同時に後ろからの声に引っ張られる。
猛烈な勢いでカペルは自身の意識が引っ張られるのを感じた。

「カペル、ダメだ!!それ以上は…………!」
「番外個体、すまない!真実をみないといけねぇ。そんな気がするんだ!だから、だから…………!」
「君は来ちゃいけない!」

虹の中でカペルを押し出そうとする男が叫んだ。

「あん、たはッッ…………!」
「意識の集中する場所は、全てが良い意思というわけではない!君が全てを吸収した瞬間、君は俺と同じようになるぞ!」
「誰なんだよ!!」
「カミーユ・ビダン!今はこれしか言えない!いつか、現実で会える時が来る!それまで待て!!」
「クソッ、何も知れないでェ…………ッ!」

そのまま現実世界へとカペルは引き戻された。虹の深淵に、黒い黒い何かを見て。




「かはぁ!!ハァ、ハァ…………番外個体…………大丈夫、か?」
「大丈夫だ…………カミーユ・ビダンのおかげで助かった。あのまま居続けたらお前の意識は引っ張られていたよ」
「マジ勘弁だよ」

そこからサイコフレームの調整をしたが、異常な数値のまま変わらなかった。
ため息をつくと、コックピットハッチの外から叩く音がする。

「あ?」

ハッチを開くと飛び込んできたのは。

「大丈夫ですか!?」

フヅキだった。

「…………フヅキ、心配しているところ悪いんだが一つ聞いていいか?」
「へ?」

首をかしげたフヅキにカペルは問うた。

「お前には」
「あの光がどう見えた?」
「…………」

「最初は暖かいと思いました。けど、奥が。そこから炎がどんどん強く熾って行くのが」
「とても……怖かったです」
「まるで、パイロットの命を燃やすようで」
「そう、か…………心配ありがとよ」

カペルが息をついた時、戦闘宙域に入ったというアナウンスが響いた。

「チッ…………休む時間はなしか」
「番外個体、フヅキと一緒に行け。俺はこのままパイロットスーツ着て出撃()る」

番外個体を下ろすと、カペルは再びそれを起動させた。
今度は何も光らなかったが、カペルは自分の体が妙に熱くなるのを感じていた。

「カペル・グラウス、カペルスウェイト・G(ガイト)R(ラッシュ)出撃()るぞ!!」

出撃カタパルトという鎖から解き放たれた黒妖犬は、その黒い体を宇宙になじませつつ、青いスラスター光を煌めかせた。 
 

 
後書き
えーと、昨日は楽しかった!

感想・アドバイス・お気に入り登録・誤字・脱字ありましたらください。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧