八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二十三話 マレーシアという国その十一
「マレーシアの国旗をです」
「祖国の、ですね」
「その国旗を飾られています」
「あの三日月のある」
「そうです」
まさにその国旗をというのだ。
「飾られています」
「そうなんですか」
「国旗を飾られている」
それが、というのだ。
「それがまさにですね」
「そうです、愛国心ですね」
「日本に来てまで国旗を飾られるなんて」
「それはどなたもですが」
「えっ、そうなんですか?」
僕は奥さんの言葉に驚いてだ、思わず問い返した。
「どの人も」
「はい、外国から来られた方は」
それこそ他の娘達もというのだ。
「お部屋に国旗を飾られています」
「そうだったんですね」
「どの方もそれぞれです」
「愛国心があるんですか」
「だからこそです」
国旗をだ、自室に飾るというのだ。
「これが他国では普通なので」
「ううん、僕ですと」
僕はここで自分のことを言った、僕自身はというと。
「旭日旗が好きで」
「どうされていますか?」
「実はネクタイピンがそれです」
旭日旗の模様だ、理由は実は愛国心ではなくてあの旗が格好いいからだ。とはいっても日本も嫌いではない。むしろ大好きだ。
けれど国旗を飾るとなるとだ、そこまではだ。
「けれど」
「それでもですか」
「国旗は持っていないです」
こう奥さんに答えた。
「けれどですか」
「はい、海外から来られた方は」
「どなたもですか」
「お部屋に飾られています」
「そうなんですね」
「そして、マルヤム様は特に」
今の話の主役であるこの人はというと。
「国旗を何枚もお部屋に飾られています」
「一枚だけじゃないんですね」
「そうです、壁に天井に机にも」
「机にもですか」
「飾られています」
「小さな国旗ですね」
机に飾られていると聞くとそうだと連想した、それでこう言った。
「よく売られている」
「そうです、その国旗をです」
「そうですか、本当に愛国心が強い人なんですね」
「そのうえで日本を理解されようとしている」
「そうした人こそがですね」
「両国の真の友情を築かれます」
そうだというのだ。
「双方に敬意を持っているからこそ、そして」
「まだあるんですね、あの人には」
「誇りがある」
「それもですか」
「あの方は媚びられる方ではありません」
「堂々とされていますね」
僕はこのことはもうわかっていた、あの人は胸を張っていた。そのうえで僕に堂々と話していた。そうした話し方をする人は媚びないことはわかっている。
それでだ、奥さんにこう答えられた。
「媚びる人じゃないですね」
「どなたにも」
「媚びる人はですね」
「友好の橋渡し役にはなれません」
「そうですよね」
「媚びる方はどういった方か」
このことはだ、奥さんは毅然として答えた。
「それはその相手が強い方なので」
「媚びるんですね」
「若しくは一方的に思っているか」
「偏愛の可能性もありますね」
「一方にそうすれば」
「もう一方には」
「辛く当たります」
こういうものだ、人間は一方に媚びるともう一方には強く出る。そうして精神のバランスを取るものだろうか。
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