転生赤龍帝のマフィアな生活
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四十八話:改造人間
視界を包んでいた光が消えた後、親馬鹿の姿を見てみると銀色と褐色を基調とした体に銀色の複眼が特徴的なバッタの様なラ○ダーが立っていた。右腕にはアンカージャッキが付いていてパワーアップしたことを伝えて来る。
「これが改造の果てに手に入れた力、パンチホッパーだ!」
「てめえらの求めている力が何を目指しているのか俺には分からねえよ」
「男のロマンを理解できんような奴には娘はやれん! 理解出来てもやる気はないがな!」
何やら決め台詞のように言い放つ親馬鹿に思わず頭を抱えてしまう。よく、こんな頭のおかしい奴を教会は雇い続けたな。どんだけ人材不足に喘いでいるんだよ。こんなのを置いておくぐらいなら少々弱体化した方がマシだろうが。
「パパ、何でもいいから、さっさと死んで。私は今からダーリンとデートのプランを立てないといけないから付き合っている暇はないの」
まるで汚物でも見るかのような目で実の父親に死んでと言い放つイリナ。まあ、実際、あんなのが親だったら俺もあれぐらい言いそうだがな。それとイリナ、お前はいつまで俺の腕に抱き着いている気だ? 柔らかい物が当たって変態達が興奮して若干意識して気が散っちまうだろうが。
そんな気持ちを込めてイリナを見ると何故か当ててんのよ、といった感じの顔で笑みを返された。……ちっ、仕方ねえな。まあ、意識を戦闘に向ければそんなことすぐに忘れられるだろ。おい、誰だ。今、俺の事をムッツリって言った奴、親馬鹿ごと灰にするぞ。
「貴様…っ! イリナを洗脳しよって、生きて朝日を拝めると思うな!」
「どんな解釈したらそんな発想に行きつくんだよ、てめえは。ポジティブシンキングにも程があるだろうが」
「受けてみるがいい! パンチホッパーの力を!」
「だから人の話を聞けって言ってんだろうが!」
結局、俺の言葉を聞くことなく変身した状態で突っ込んでくるT・シドー。俺とイリナはそんな奴を木端微塵にするために奴を挟み込む様に二手に分かれて移動する。そしてそこから一気に方向転換してT・シドーに突っ込み、俺は拳を、イリナはトンファーをぶつけようとする。しかしT・シドーはその攻撃を強靭な脚力で飛び上がることで回避しそのまま回転して天井に張り付く。
「死ね、悪魔め! ラ○ダーパンチ!」
「誰が死ぬかドカスが!」
天井を蹴って高速で俺に突っ込み、アンカージャッキの付いた右腕でパンチをくらわして来るT・シドー。俺はその拳をがっしりと受け止めるがその拳の重みに耐えきれず立っていた床にひびが入り巨大なクレーターが出来てしまう。俺も晴れの活性で肉体を強化してなかったら手が痺れる程度じゃすまなかっただろうな。少しは傷がついたかもしれねえ。
「咬み殺す!」
「くっ! これも愛情の裏返しというやつか!?」
「純度100%の殺意の籠った一撃を受けてそう思えるお前が羨ましいぜ」
俺が腕を掴んだために動きが止まったT・シドーの腹部ににイリナの殺意の籠ったトンファー突き刺さり吹き飛ばされるが、それを愛情表現だと信じて疑わないT・シドーの思考回路に呆れを通り越して尊敬の念を抱いてしまう。まあ、絶対になりたいとも思わねえがな。
(体に迸る甘美な痛み……ああ、これを愛と言わずに何と言うのですか、ご主人様!?)
(死んだ方がマシな感性だよ、エルシャ)
(罵倒もまた愛情表現の一つ…っ! ああ、もっと、もっと私を蔑んでください!)
そう言えば、ここにもイカれた思考回路を持っている連中がわんさかいたな。最近少しだけ影を潜めていやがったから忘れてたぜ。というか、こいつらのいう愛が世間一般的な愛情表現だったら俺は異世界を探し出してそこに逃げ込むぞ。まあ、俺がボスであるうちは逃げてもすぐに帰ってくるがな。
「おいおい、情けねえじゃねえか、兄弟。お前の力はそんなもんじゃねえだろ」
「同胞よ、助太刀に来てくれたのか」
「おうよ、俺達は二人そろってこそ新の力を発揮するからな」
「アザゼル……てめえもかよ」
突如登場して、倒れ伏すT・シドーに手を貸して起こすアザゼル。こいつも絡んでくるとかなり面倒くせえな。イリナもいるから数的には特に不利じゃねえが、あいつらの頑丈さは筋金入りだ。アザゼルに関してはヴァーリが居りゃ、簡単に引き下げられるが今はいねえしな。
それにT・シドーの方は超ポジティブシンキングで娘のこれでもかという暴力と暴言を愛情の裏返しに脳内変換するからイリナが何と言っても無駄だ。また、星に変えるぐらいしか対処方法がねえ。なんだってあんなに頑丈なんだよ。あ? ギャグ補正だと? 知るかそんなもん!
「じゃ、てっとり早く俺も変身するか。変身!」
「おい、待て。お前は改造人間じゃねえだろ」
「うるせえ! ヴァーリは純粋無垢な子なんだよおおおっ! それをてめえは穢しやがって!」
「最近まともな会話が成立してねえ気がするのは俺の気のせいか?」
そんなことを真剣に考えているとT・シドーのように光に包まれて変身していき、緑色を基調とした体に赤の複眼が特徴的なバッタに似た姿になるアザゼル。アンカージャッキは左足に付いてるとこから考えるとあれは足技が主な戦闘手段か。まあ、接近戦の方がこっちとしてはありがたいから光の槍を投げられるより楽だ。
「こいつの名前はキックホッパーだ。てめえを地獄に叩き落とすために作り上げた至高の一品だぜ。おい……今、こいつを笑ったか?」
俺が楽に戦えると踏んでニヤリと笑った事に反応したのかアザゼルが仮面を被った状態で睨みつけて来る。そんなアザゼルに対して俺はわざとあざ笑うように笑い声を上げる。それに対して親馬鹿共が殺気を出してさらに俺を睨みつけてくるが、その程度でビビる俺ではない。イリナクラスの殺気は出せねえと俺を怖がらせることなんざ出来ねえんだよ。カス共が何をしようが俺には関けえねえ、全て力でねじ伏せる!
「ぶはっ! はーはっはっは! カス共が俺を地獄に叩き落とすだと? 最高のジョークだな。カスにはカスの身の程ってもんがあるだろうが。俺はカス共にどうこうできる存在じゃねえんだよ。てめえらがいくら足掻こうが無駄だ。カスはカスらしく地面に這いつくばってりゃいいんだよ」
そう言い放って、挑発するようにクイクイと手で煽る。それに反応して一気に俺に飛びかかかって来る親馬鹿共。はっ、てめえらが何度でも俺に立ち向かってくるなら、俺は何度でもてめえらを叩き伏せる。そしてその身で味わえ―――格の違いをな!
「○イダーキック!」
「ライ○ーパンチ!」
「おせえんだよ、カス共が!」
アザゼルの放つ飛び蹴りを紙一重で躱し、その勢いを利用して顔面にカウンターで全力の拳を叩きこむ。そして地面に叩きつけられるアザゼルを確認したと同時にすぐそこに近づいていたT・シドーのパンチを嵐の炎を纏ったシールドを創り出して防ぐ。シールド自体は直ぐに壊れたので奴の拳を軽く避けるが嵐の炎の特性である分解だけはしっかりと働いていた。
「ぬっ!? ライダースーツが溶けているだと!」
「勝手に自滅してりゃ、世話ねえな。それと突っ立っていて大丈夫なのか?」
「ロール、吹き飛ばしなさい!」
「しまっ―――!?」
実の父親に対して完全に殺す気で『雲ハリネズミ』を叩きこむイリナ。なぜ、叩きこむという表現なのかというとイリナが『雲ハリネズミ』をトンファーで打って普段よりも遥かに早い攻撃に変えたからだ。若干『雲ハリネズミ』の悲鳴が聞こえたような気もするがこの際、気にしてもしょうがねえだろ。
とにかくT・シドーは俺の攻撃から起き上がったアザゼルを一緒に巻き込んで壁際にまで吹き飛んでいき外に出そうになったところで何とか踏みとどまる。簡単に退場はしてくれねえか。そうなってくるとあれを使ってもいいかもしれねえな。俺は懐からボンゴレリングとは別のリングを取り出して手にはめる。
「この程度じゃ、俺達は倒せねえぞ、糞野郎が!」
「イリナ、帰ったらパパと一緒にお風呂に入ろう!」
「死んでも嫌ね。私はダーリンと一緒に入るわ」
「くそがっ、どういう会話をしたら俺に矛先が向くんだよ」
意味不明の会話をして俺を巻き込もうとする紫藤親子に溜息を吐きながらグローブから“オレンジ”色の炎を噴出させる。今まで使う機会がなかったからずっと使ってなかったが……まあ、コントロール出来ねえことはねえだろ。
「キックホッパーの力はこんな物じゃねえぜ。ライ○ーキック!」
今度は上に大きく飛び上がりそこから高速で降下しながら蹴りを放ってくるアザゼル。俺はそれに対してゆっくりと手をかざして奴を睨みつける。
「頭が高えんだよ、カラス風情が……―――落ちろ!」
「なんだこりゃ!? 急に重力が…っ!」
何倍にも倍加した重力を宙に浮かんでいるアザゼルにぶつけて地面に叩きつける。そしてさらに重力を強くして床にめり込むくらいにまで押し付ける。今俺が使っている炎は『大地の炎』だ。大地の炎はシモンリングをはめねえことには使えねえ仕組みになっているらしいからわざわざ取り出してはめたんだ。
それと大空で十分だからという理由と、俺がボンゴレボスであってシモンのボスじゃねえという理由で使ってこなかったが親馬鹿共の相手には丁度いいだろう。因みにこれは偶然、闇の商人から手に入れたもんだから他の属性のリングは持ってねえ。そもそもシモンファミリー自体がつぶれたのか、マフィアをやめたかの理由で今は存在しない。まあ、特に興味がなかったから大して調べてねえんだけどな。
「同胞よ!? 貴様よくも私の同胞を痛めつけてくれたな!」
「カス共が俺に逆らうからだ。大地の重力!」
「か、体が引き寄せられていくだと!?」
俺の放った球状の大地の炎の重力によって引き寄せられていくT・シドー。さてと、てめえらを重力で動けなくしたところでボコボコにしてやるとするか。幸いイリナも今か今かと眼光をぎらつかせているから作業ははかどるだろ。そうして、まずはアザゼルにむけて拳を振り下ろ―――
「イッセー君!」
「ヴァーリ! パパを助けに来てくれたのか!?」
拳を止めて高速で飛んできたヴァーリを眺める。アザゼルは娘が助けに来てくれたと思っているのか感無量といった感じの顔を浮かべている。だとしたらとんでもない勘違いだな。ヴァーリの顔は明らかに怒っていますといったように頬をプックリと膨らませているからな。
(ヴァーリたん来たあああああっ! ペロペロ!)
(愛らしい、愛らしいよー! やっぱり、ヴァーリたんは天使!)
ああ……うるせえな、こいつら。ヴァーリが来ると普段の数倍活性化しやがる。白龍皇に反応して活性化する赤龍帝というのならまだ聞こえはいいんだが、こいつらの場合、ヴァーリという個人に反応して活性化するからたちが悪い。歴代白龍皇の方も最近、徐々におかしくなってきているらしいからこっちと同じような状況にならないことを祈るぜ。頼むから俺をストーカーするような奴は出てきてくれるなよ。
「パパ……僕この前、イッセー君と喧嘩したらダメって言ったよね?」
「ま、待ってくれヴァーリ。これには大切な理由が―――」
「言ったよね?」
「はい……言いました」
ヴァーリに睨まれて、思わず正座をするアザゼル。こいつは毎度娘に弱くて助かるな。イリナの父親の方は娘に対しても普通に反撃してくるからな。まあ、持ち前のポジティブシンキングのおかげだろうがな。そう思ってチラリとT・シドーとイリナの方を見る。
「待ってくれ、イリナ! その関節はそっちには曲がらな―――アアアッ!?」
「ごめん、パパ。手がちょっと滑っちゃった。あ、足が滑った」
「グフウッ!? そ、そこは男の急所だぞ…っ」
どうやら、イリナが手や足を滑らせて危ないことになっているが俺がどうこうできる問題じゃねえな。それにこれも全部、親馬鹿共の自業自得だ。今更同情なんざするわけがねえ。ただ、かなりグロい光景になっているとだけは伝えておこう。
「パパ、僕との約束を破ったんだね……僕、信じていたのに」
「ヴァーリ、パパの話をよく聞いてくれ!」
「もう、パパなんか知らない! 僕、家出する!」
「ヴァーリィィィッ!! パパが、パパが悪かったから帰って来てくれよおおおおっ!」
泣き叫びながら腕を伸ばすアザゼルに背を向けてプンスカといった効果音を出しながら歩き去っていくヴァーリ。そして俺の前で立ち止まり俺の腕を掴む。そんな行動に困惑する俺をよそにヴァーリはニッコリと満面の笑顔を浮かべて口を開く。
「今日からイッセー君の家に住むからよろしくね、イッセー君」
「何がどうなったらそうなるんだよ、くそがっ!」
その後色々と話し合ったが、結局、俺が折れてヴァーリは俺の家に住むことになり、それを知ったイリナと少し一悶着あったが(主に俺が)今度行く、デートでイリナが主導権を握るということで手を打つことに成功した、が……今から不安でしょうがねえな、おい。
後書き
大地の炎はもう少し後で出す予定でしたが使いたかったので出しました。
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