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転生赤龍帝のマフィアな生活

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四十七話:ヤンデレイリナちゃん

 
前書き
うちのイッセーとゼノヴィアがナハト・リコリスさんがアットノベルスで投稿しているネギま作品『ネギま!英雄の魂と幻想』にクロスとしてお出かけしています。気になる方はご覧になってください。

それでは本文をどうぞ。 

 
トンファーから紫色の炎を噴出させて俺達を睨むイリナ。その周りには無数の『雲ハリネズミ(ポルコスピーノ・ヌーヴォラ)』が浮いており俺達を虎視眈々と狙っている。そして俺達を取り囲む鉄格子は雲の炎で今もなお増殖し続けその強度を上げ続けている。

俺は手を胃の辺りにおきながらそんな現状を打破すべく頭を回す。まず、考えられる現状打破の方法は三つある。一つ目は正攻法で真正面からイリナを破ってここから出て行くという事だ。こっちは幸いにもヴァリアー幹部が全員そろっているんだ。普通に考えりゃ、こっちの方が圧倒的に有利だ。………普通に考えればな。



「ふふふ……イッセー君との殺し愛、楽しみだなあ。群れてる邪魔な奴らは消しちゃってもいいよね? この空間には私とイッセー君だけが居ればいいんだもの。
私とイッセー君以外―――ミンナ、キエチャエバ、イインダ」



勝てる気がしねえよ! 何だあれ、ヤンデレを突き詰めていった結果、死神にでもなったのか!? 滲み出る殺気というか、死の気配で足の震えが止まらない。この俺ともあろうものがまさか、生まれたての小鹿みたいな状況になる時が来るとはな…っ。

ダメだ、一つ目の方法はどう考えても無理だ、最悪全滅の恐れすらある。となると、二つ目の方法だな。俺達は鉄格子に囲まれているとはいえ、全く逃げ場所が無いというわけじゃねえんだ。百八十度を囲まれているが逃げ場所は存在する。それは足元だ。

ここは一階じゃねえから床を破壊すれば下の階に降りられるはずだ。そこから逃げれば何とか脱出は可能だ。だが、これにも問題は生じる。そもそもイリナがキレているのは俺らが校舎を壊したからだ。それなのにまた壊したらどうなる? さらにキレて人として越えてはいけない何かを越えかねねえぞ。

つまり俺が取るべきは第三の方法だ。そいつは―――


「俺が道を開く、てめえらは逃げろ!」

「なっ!? 何考えてんだクソボス! そういうのは部下の仕事だろうがあああっ!」

「とっとと行け。てめえらが居ると邪魔なんだよ。これは命令だ―――行け!」


俺は雨の炎と憤怒の炎を混ぜた弾丸を放ち俺達を取り囲んでいた鉄格子の一部を吹き飛ばす。鉄格子は雨の炎の鎮静の効果で一時的に増殖を止められたせいで修復が出来ずに道が開けっ放しになる。俺はその道に向けて幹部たちを放り棄てていく。


「イッセー君は逃げないの?」

「敵前逃亡はしねえ」

「ふふふ、やっぱりイッセー君はカッコイイね」


そう言って少し頬を赤らめながら笑う、イリナ。こうやってみると普通の可愛い女の子に見えるから本当に不思議だ。ただし、全ては肌に痛みを感じる程の濃厚な殺気により台無しになっているがな。

だからと言って逃げ出すわけにはいかない。俺の背中にはボンゴレファミリーの威信がかかっているんだ。敵の前で無様にその背中を晒すわけにはいかねえ。俺はニヤリと笑い銃を構える。さあ、どこからでもかかってきな! そうして構える俺に対してイリナは何やら思案顔をして突如何かを思いついたように声を上げる



「やっぱり、殺し愛はやめてイッセー君を捕まえて既成事実を作った方がいいかな」



「カストカゲ、逃げるぞ!」

『敵前逃亡はしないのではなかったのか? 相棒』


俺は過去を振り返らねえ男なんだ、そんなことは知らねえな。そもそもあれは敵なんて生易しい物じゃねえ、もっと恐ろしい何かだ。というか、殺気は収まったがさっきよりもヤバい目で俺を見て来るイリナから一秒でも早く逃げ去りたい。時折『子供は十人位欲しいかな……』とか聞こえてくるのは全て幻聴だ。そうだ、そうに決まっている。


「ロール、形態変化(カンビオ・フォルマ)よ」


イリナの呼びかけに反応して『雲ハリネズミ(ポルコスピーノ・ヌーヴォラ)』が光り輝き変化を起こし始める。そして光がやんだ時にはイリナの手には棘付きの手錠が握られていた。あの手錠は変幻自在に大きさを変えたり、瞬時に増殖して何重にも相手を縛り上げることが出来る物だ。……俺は何故、ヤンデレ気質のイリナに拘束具という絶好の獲物を与えてしまったんだ。まるで俺があいつに縛られるために送ったみてえじゃなえか。


((((え、違うんですか?))))

(当たり前だ!)


久しぶりに出て来たと思ったら何を考えてやがんだ変態共(こいつら)は、一体全体、俺をどんな人間だと勘違いしたらそんな発想に辿り着くんだ。さも当たり前のように聞き返して来るこいつらも胃痛の一部ではあるが今解決しねえといけねえのは、ゾッとするような笑みを浮かべて目の前にいるイリナの方だ。


「イリナ、落ち着け。そういうのは俺達にはまだ早い!」

「イッセー君……今度はヴァーリに告白されたんだよね?」

「なんでてめえが知ってんだ!?」

「私はイッセー君の事なら何でも知っているよ。だって―――ダイスキナンダモン」


目から光が消えてゆっくりと俺に近寄って来るイリナ。俺はそんなイリナの姿に思わず恐怖してしまい、一目散に逃げ出す。俺は何が何でもこのヤンデレ幼馴染みから逃げ出してやる! 何が何でもな!





「俺は……無力だ」


結論から言うとすると、普通に逃げられなかった。普段のイリナなら逃げることも出来ただろうが今日のイリナは凄まじい力を発揮して俺を捕縛してきやがった。俺も最大限に抵抗したんだが全ての攻撃を粉砕されてあえなく御用となったわけだ。

今のイリナの状態は名づけるとするなら、(ハイパー)ヤンデレモードだな。普段よりも遥かに力が上がったあの状態はそうとしか言えない。と、まあ、色々と考えている俺だがこれは単なる現実逃避でしかない。何故かと言うとだ。


「イッセー君、もう逃がさないからね」


イリナが倒れた俺の上に馬乗りになって乗っているからだ。現実逃避のついでに詳しく状況を説明してやろう。俺の腕は後ろに回した状態でガッチリと手錠が何重にもはめられている。そして足にも同じように何重にも手錠が嵌められている。その状態で俺は仰向けにされ、イリナが俺の腰のあたりに座って獲物を前にした獣の様な目で俺を見下ろしているという状態だ。

俺は必死に手錠をちぎろうともがいているが、この手錠は他ならぬ俺が作った(ボックス)兵器だ。そう簡単にちぎれるわけがない。禁手(バランス・ブレイカー)を使えばいけるかもしれねえが僅かでも不審な動きを見せたらイリナが俺の動きを阻害してくるのでそれも無理だ。要するに詰んでいる。


「うふふふふ……イッセー君。今から私が何をするか分かる?」

「イリナ、取りあえずこの手錠を解け、話はそれからでも遅くねえ」

「今から私とイッセー君は一つになるんだよ」

「頼むから話を聞いてくれえええっ!」

「もう、うるさいよ。そんなイッセー君にはこうしてやるんだから」


突如、イリナの顔が俺の目の前に近づいてきたかと思うと貪るような口づけをされる。イリナの舌が俺の中に入ってきて俺の口内を蹂躙していく。そのまま長時間の間、俺はイリナの口づけを受け続けることになる。

そしてどれ程たったか分からないところでようやく解放される。イリナはゆっくりと涎の糸を引きながら口を離していき、完全に上気した顔に潤んだ目で俺を見つめながらペロリと涎を舐めとる。その官能的な姿に思わず俺は見入ってしまうがイリナの言葉を聞いて直ぐに後悔した。


「イッセー君……私の初めて貰ってね」

「カストカゲ! 助けてくれ!」

『おめでとう、相棒。遂に相棒は大人の階段を昇るのだな』

((((今夜は赤飯炊かないとダメですね))))


くそがっ! カストカゲと歴代赤龍帝(マゾヒスト・ヴァーサーカーズ)の奴ら完全に俺を見捨てやがった! どうにかしろ、何とかこの状況を打開する方法を考え出せ。俺がそうやって必死に考えていると。俺の下腹部からカチャカチャとベルトを外す音が聞こえてきたが必死にそれを幻聴だと信じて打開策を練る方に集中していく。

く、早く何かを思いつくんだ、俺! 人生で一番ではないかというほど俺が焦っているところで俺のズボンにイリナが手をかけた感触が伝わって来る。
ああ、もうダメだ、お終いだと思った瞬間――


「イリナァァァッ! パパが助けに来たぞおおおおっ!」


鉄格子が吹き飛ばされ、左腕が巨大なドリルになった親馬鹿が突如として現れた。この瞬間だけは親馬鹿に心の底から感謝した。しかし、そんな俺とは違いイリナは明らかに不機嫌なオーラを出し俺の上からどき、親馬鹿は殺意の籠った目で俺を睨みつけてきていた。

おい……待て。なんで襲われている俺がまるで嫌がるイリナを無理やり押し倒したみたいな視線を受けないとならねえんだ。


「貴様、よくも私のイリナにその様なふしだらな事を強要してくれたな!」

「まて、どこをどう見たら俺がイリナに強要したように見えるんだ? どう見ても俺が被害者だろうが」

「黙れ! どうせ監禁束縛されて上から蹂躙されたいという願望があったのだろう!」

((((その気持ち良く分かります))))


取りあえず、このバカ共の頭をかち割りたい。誰がそんな家の歴代赤龍帝(マゾヒスト・ヴァーサーカーズ)みたいな発想するかってんだよ。余りにも当てはまりすぎて歴代赤龍帝(マゾヒスト・ヴァーサーカーズ)が全員頷いて同意してんじゃねえか。

というか、客観的に状況を説明されるとキツイもんがあるな。俺の今の状況って人としてどうなんだよ。イリナも、もう少しまともな方法を考え付かなかったのかよ。それと今まで無視してきたがその手についた大層なドリルは何だ? そんな俺の視線に気づいたのか親馬鹿が自慢げに語り始める。


「ふっふっふ、このドリルに気づいたか。これは我が同胞(はらから)により改造人間T・シドーとして生まれ変わった証である超高性能ドリルだ、しかも両腕だ!」


そう言って、右腕もドリルに変形させる親馬鹿改めT・シドー。……何つう無駄な改造をしてんだ、こいつは。というか親馬鹿の同胞(はらから)というと堕天使総督のあいつしか思い浮かばねえんだが破門とかされなかったのか? まあ、破門したところで関係なく俺にはふっかけて来るだろうがな。


「さらに、ドリルだけではない、光粒子砲も備えているのだ! 滅せよ、悪魔め!」


ドリルがさらに変形して腕についたバズーカ砲のような形状に変わりそこから極太のレイザー光線が俺目掛けて放たれる。俺はそのレイザー光線を取りあえず大きく足を上げて足の手錠にぶつけて防ぐ。

すると運のいいことにそのまま手錠が砕けてくれたので直ぐに立ち上がり
赤龍暴君のマント(ブーステッド・マンテッロ・ジ・ティラーノ)』に禁手化し、腕の手錠も引き千切って拘束を解く。その様子を見ていたイリナが折角捕まえたのにと残念そうな顔をしていたが無視する。どうせすぐに親馬鹿に向けての怒りに変わるだろうからな。


「はっ、おかげで拘束が解けたぜ。感謝するぜ」

「折角、イッセー君を捕まえたのに……うふふふふ―――咬み殺す!」

「イリナ、早くパパの元に戻ってきなさい。その悪魔の傍に居る必要はない」

「私はイッセー君を愛しているから一緒にいるだけよ。この気持ちは何があっても変わらないわ!」


イリナのストレートな言葉に思わず顔が熱くなっちまう。これだけストレートに言われると流石の俺も思うところがあるからな。まあ、なんにせよだ。今はあの改造人間になった親馬鹿を何とかしねえとな。その為にはイリナの力が必要だ、親馬鹿には娘の力が一番有効だからな。


「イリナ、あいつの動きを止めろ。俺がカッ消す」

「…………」

「イリナ?」


何やら拗ねたように頬を膨らませて俺の方を見ているイリナ。……俺を取り逃がしたことをまだ後悔してんのか? それともあれだけ言っても何も言わない俺に拗ねているのか……。取りあえず、機嫌を直してなおかつ数分前の悲劇を起こさないようにしねえとな。そうなると、ある程度の譲歩は必要か。


「イリナ……あいつをカッ消したら二人でどっかに出かけるぞ」

「え? ……そ、それってデートの誘い?」


俺はその質問に首筋が熱くなるのを感じながら黙って頷く。そうするとパッと顔を輝かして嬉しそうに笑うイリナ。よし、これで俺の身の安全は保たれたはずだ。おまけに戦力も手に入れられた。まさに一石二鳥だ。べ、別に他に理由なんかねえぞ! 俺もイリナとなら別にデートしてもいいかなんてこれっぽちも思ってねえからな、本当だ!


「き、貴様、この私の前で娘とデート宣言だとおおおおっ! ええい、我が超高性能ドリルの前に塵屑となるがいい!」

「はっ、やってみな! イリナ、抑えろ!」

「任せて、“ダーリン”!」


イリナの呼び方に激しくツッコミを入れたい所だが今は親馬鹿の方が先なので迫って来る親馬鹿のドリルに対応する。俺は床を抉り取りながら突き進んでくるドリルを宙に飛んで躱しそこから素早く炎の連撃をぶつけていく。しかし、改造された影響か大してダメージがない。仕方ねえ、予定通り大技で決めるか。俺は地面に降り立ち止まり構えを取る。その間にも親馬鹿は肉薄してくる。


「馬鹿め! 立ち止まったが最後、このドリルでミンチにしてくれるわ!」

「させないわ」

「なに!? イリナの手錠だと!?」


手錠が親馬鹿に絡みつきその動きを止める。でかした、イリナ。
俺は動きの止まった親馬鹿に向けて攻撃を放つ。


「X BURNER!」


「ぬおおおっ!?」


「ねえねえ、デートはどこに行くの? 私はダーリンとならどこでもいいんだけど……」


炎に飲み込まれ吹き飛んでいく親馬鹿。その様子を見ても一切心配せず、勝ったとしか思わないイリナが俺の方にかけて来る。そして嬉しそうに俺の腕に抱きついて、上目づかいで見上げて話しかけてくる。

その仕草は非常に可愛らしく思わず、抱きしめたく―――ゲホン、ゴホン、とにかくイリナが抱きついてきたわけだが、俺の超直感はまだ勝負が終わっていないことを知らせてきていた。そしてその予感通り、吹き飛んで瓦礫の中に埋もれていた親馬鹿が瓦礫から飛び出して来る。


「まだだ、私には切り札がある!」


そう言って何やらベルトらしきものを取り出す親馬鹿。何をする気だと思ってみているとおもむろにベルトを自分の腰に巻き、変なポーズを取り始めた。……まさか変身する気かよ。


「改造の果てに手に入れた力とくと見るがいい! 変身!」


その言葉と共に俺達の視界は光に包まれていった。
……ああ、絶対面倒くさいことになるな。そんな俺の気持ちを知る由もなしに。

 
 

 
後書き
次回はパパゼルも登場します。
そして変身はどんな奴にするかは未定です。 
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