剣聖龍使いの神皇帝
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第2巻
合同授業
六月が始まったばかり何だが、今年は異常気象らしく梅雨を通り越して夏に突入したような感じである。校舎から第一武道館まで続くベルトコンベアの道に屋根が付いているためか、全くと言って良い程暑くない。午後からの実技授業は、ほとんど見学なので俺としてはつまらない授業でもある。
「全く今年は随分と異常気象のようだな」
「そうね。あとは諸葉を見る目線が気になるわね」
俺は黒の戦闘服で、サツキはいつも通りの戦闘服に沙紀はいつも着ているキャリアウーマンのような服装だ。前にいる者達は、上級生の男女が俺らを見るようになる。
「ほら彼、例の神皇帝の・・・・」
「ああ、本当に仲睦まじいんだねえ」
何て言っているが、サツキとの関係はまだ妹に留まっているが俺としては恋仲は何人増えようが問題ない。照れているが、すぐに真顔となり第一武道館へ向かう所で一度ベルトコンベアを降りるとそこにはマヤがいた。俺は降りるとサツキはなぜ?という顔といつの間にかいた静乃だった。
「紹介するが、昨日から家に住む事になったまーやだ。ほら、校長先生にいつもくっついている」
「ええええええっ!何で諸葉と一緒に住んでんのよ、漆原は知ってたの?『昨日の電話で知ったわ』何で漆原だけそうなるのよー」
「四門摩耶と言うのです。まーやの事はまーやと呼んでほしいのです」
そんで軽く自己紹介を終えた後に再度ベルトコンベアに乗ってから、第一武道館に入るが結界に入ったかのような感じとなる。亜鐘学園に三つある武道館全て、特殊なアンセスタルアーツによって内部が異空間になっている。俺らの拠点もある意味で異空間に存在するけど、拠点D×Dには異空間に創造した地球が四つある事だ。『アース』『ナイトメア』『PMW』『魔』の四つで、天使・悪魔・堕天使・妖怪・人間が一緒に生活している中央エリアと金属生命体でトランスフォーマーはサイバトロンエリアに、人が操縦する事で戦う事や防衛に使うためのゾイドを扱う人間が暮らすゾイドエリア。
で、亜鐘学園の異空間というのは、この中でどれだけ物を破壊しようが元に戻るし、大怪我をした時も外に出れば問題ない。誰が特殊なアンセスタルアーツを使っているかは知らんが、いずれは分かる事だと思っている。現実空間と異空間の境目で、感覚が少し違うように思える。ま、俺や沙紀は元々異世界から来た者なのでここを通っても何も不思議ではないが、サツキや一年生達は気味悪がっていた。だけど二ヶ月経てばいつの間にか慣れたようで、あとは昨日の深夜に届いたメールを見た時は今日にでも来るのかなと思った。
「今日は確か合同授業だったよな」
「ええそうよ。ただ諸葉にとってはつまらない授業だと思うけど」
「兄様は兄様の戦い方があるからね、私や漆原も絶対に兄様に追いついて見せる!」
「ああ、その時はその時で一緒に戦おうな」
「まーやもやる時はやるのです」
まーやは何が出来るのかはまだ分からないが、見学席に沙紀と共に向かい俺ら三人は武道館の中心に向かった。中は既に四クラス分の生徒が集まっていたが、半分は馴染のない上級生である。今日は一年と二年の合同授業で、両学年の一組と二組がこの第一武道館に集合してた。まーやと沙紀は見学席で見ていたが、手を振るので俺は手を振るがサツキと静乃は何か納得していない様子。
「ハイ、全クラス集合ー」
授業開始のチャイムが鳴り、四クラスの担任達が号令をかけたので全員号令に従う。集合した生徒の群れに行くが俺の場合は一番後ろにいて、しばしの様子見。白鉄でも黒魔でもない俺にはいらない授業だが、レクチャーするぐらいの事も出来る。四クラス分の生徒が思い思いの場所に座るが、サツキと静乃は俺と一緒に座る。
「今日は主に一年生の皆に、《救世主》の戦いにおいては『攻撃は易し、防御は難し』である事を学んでもらおう」
授業を取り仕切っているのは、ウチの担任である田中太郎先生である。相変わらずの黒縁眼鏡に七三分けの四十路前後の冴えない男であるが、風采の上がらない男は貫録ある他の三教師を差し置いてる様は一種異様だ。一番下っ端だから雑用係なのかもしれない。
「光技にも《金鳥》、闇術にも《上天の障壁(エーテル・バリア)》と言った強力な防御の業はあるけどね。往々にして使いづらいんだ。逆に光技の《金剛通》や、闇術の各種《護法印》は使いやすいけど、防御力は今一だしね。攻撃に関する光技や闇術なら使いやすく強いの、エグいの、テンコ盛りなのに、比べたらどうにも心もとない」
一応言っておくが、《上天の障壁(エーテル・バリア)》と《護法印》はここでは違う言い方をしていた。《上天の障壁》と《護法印》と呼んでいたらしいが、こちらの情報と一致させるためにあえて説明する場面に入れさせてもらった。剣に守るためのプレートアーマーがあっても、銃弾の前には無力となる。戦車装甲の進化は停止しているが、大砲やミサイルの破壊力発展は進み過ぎかもしれない。ま、俺らの守る服は全武装に特化された服装でもある。
「まして《異端者》の攻撃力は我々よりも強い。防御系の業を使うのは最後の手段、ダメージを少しでも軽減したい時に使うくらいのつもりでいた方がいい。あるいはいっそ、こっちの攻撃を相手の攻撃にぶつけて、相殺してしまうのがてっとり早いんだ。この時、ちょっと面倒なのは黒魔の皆だ。第一階梯闇術《火炎》は冷気系の攻撃を相殺しやすいんだけど、水系は逆に相性が悪い。でも第二階梯の《猛火》なら冷気も水も相性が良い・・・・」
「ハイ、先生!」
「はい、嵐城さん。質問どうぞ」
「ガードするのが難しいなら、避けた方がいいと思うのですけど?」
真面目で努力家もあってか、起立をしてから質問をするサツキ。
「いい答えだね。それが一番いい守備技術なのは間違いない。ただ、黒魔の皆にそれは難しいし、白鉄の君でも例えば超広範囲に炎のブレスを吐かれたりしたら回避は難しいだろう?」
田中にやんわりと諭され、また体育座りをするサツキだった。
『まあ相棒だったら簡単に避けられるよな?』
『そうだな。それかラードゥンの障壁で守られながら一直線に進むというのも一つの戦術だな』
『確かにコイツの障壁はそこらの奴らよりも硬いもんなー』
『私は基本的に前には出ませんが、主である一真様からの指令ならば障壁を何個も作れますけどね』
と俺の中にいるドラゴン達が俺しか聞こえない声で話していた。あとは茶化する空気がなかったのは、多くの一年生が同じ考えだったためである。二年は昨年同じ事を聞いたに違いない。
「まあ、実技授業で講義ばかりというのも退屈だったね。一つ、誰かに手本をやってみせてもらおうか」
田中は居並ぶ生徒達を見渡す。その時だったが、見学席にいたのは沙紀とまーやだけではなかった。
「手本なら灰村君にやってもらいなさい、田中先生」
その発言に、生徒達がザワザワする。いきなりの指名にも関わらず、俺は見本出来ないと言いたいが声の主を探すといた。灰村諸葉の時は見知らぬ男だったが、零達也の時に会った事はあった。偉そうな態度で足を組み、見学席に座っていた。切れ者と見えるが、ただの凡人が何を言っているのやら。
「兄さん・・・・」
見学席の男を見て、静乃が息の飲んでいたが俺は大丈夫だと言いながら、頭を撫でる。すると落ち着いたのか、不安しなくなった静乃。あとまーやと沙紀がいる所とは反対側にいるので、問題はない。
「もうすぐ『イギリス本部長(サー・エドワード)』が視察に来る。サーは灰村君にいたく関心を抱いておられるのだ。いつ何時サーが視察しても良いよう、今後しばらくは灰村君を中心に授業を進めなさい」
理事長がもし《救世主》だったらそんな事言わないが、ただの凡人が言うのであればいくらここの理事長でも文句言えるのが教師というもんだ。印象最悪の場面での横槍だったが、コイツは調子に乗っている。
「お言葉ですが、理事長と言えど授業のやり方について口を挟むのは頂けませんな。現場に任せて頂きたい」
田中が真っ直ぐに反論したのか、一見貧相だが権力者相手に臆する事なく立ち向かっている。俺は気配を感じさせないようにしていたのか、理事長は俺を探すように首を動かしていた。
「確かにあなたはこの学園の経営者ではありますが、この学園も我々教師も、まして生徒達はあなたの私物ではない」
「フン、賢しげに道理を説くか。校長といい、《救世主》というのはどうしてそう小癪なのかねえ」
「理事長こそ、どうぞ己の本分を弁えて頂きたい」
田中と理事長の間に、電気が鳴っているように聞こえる。緊張感高まるが、生徒達も互いの顔を見合わせて不安そうになる。授業所ではない雰囲気になってしまうので、俺は気配を消して理事長の隣に拳銃を頭に向けてから言った。
「そこまでだ!」
「・・・・何時の間にここに来たのかね、それも拳銃を持つ生徒は規定違反だ」
「お生憎様だけど、俺はアンタの駒になった覚えはないからとっとと口を閉ざせ。それとも今すぐ零社長に言って理事長職を解任させてやろうか?先ほどの会話は、既に零社長の耳に入っている。俺は拳銃や伸縮警棒を持つ権限を持っているから、持っていても不思議ではない。テメエみたいな凡人野郎に指図される覚えはないから、引っ込んでな!」
そう言ってから、殺気と覇気をこの男にぶつけた後に見学席から一瞬にしてサツキのところに戻ったが、この雰囲気を何とかしないといけないので銃をしまってから言ったけど。
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