八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二十三話 マレーシアという国その四
「一年E組でござる」
「わかったよ。一年E組だね」
「覚えて頂ければ何よりでござる」
「それじゃあこれからね」
「宜しくお願いするでござる」
「お互いにね。それどだけれど」
僕はマルヤムさんにここで問うた、その問うこととは。
「マルヤムさんは部活は」
「そちらでござるか」
「うん、どの部活に入るつもりかな」
「拙者忍者でござるから」
それで、とだ。マルヤムさんはその古風なござる口調で僕に答えてくれた。
「忍術部に」
「そこになんだ」
「拙者真の忍者を目指しているでござる」
何か話が凄くなってきた、話を聞いていて思った。
「それで、でござる」
「忍術部に入って」
「己の心身を磨くでござる」
「自分自身を磨くことはいいことだよね」
「忍術は忍ぶこと」
実際に求道的な言葉でだ、マルヤムさんは言った。
「それこそが心身を最も鍛えるものでござる」
「そうした考えなんだね」
「拙者は。ただ」
「ただ?」
「武士道も同じでござる」
こちらもというのだ。
「それ故にもむのふの道も歩んでいるでござる」
「そちらも」
「そうでござる、だから剣道部も考えているでござるが」
「掛け持ち出来るよ」
部活のそれはとだ、僕は答えた。
「うちの学園は」
「では剣道部に入ることも」
「うん、いいよ」
そうだとだ、僕はマルヤムさんに答えた。
「忍術部に入って剣道部に入ることもね」
「ではそうさせてもらうでござる」
「そういうことだね」
「では日本でも忍術と武士道を学ぶでござる」
「日本でもっていうことは」
このことからだ、僕はあることに気付いてその気付いたことをマルヤムさんにすぐに尋ねた。
「マレーシアでも」
「己の鍛錬をしていたでござる」
「そうだったんだ」
「忍術と剣道で」
「マレーシアにもあるんだ」
「日本から八条グループの方が来られていてで、ござる」
ここでまた八条家の名前が出た、僕にとっては何かありきたりというかやっぱりと思った。八条家の人間ということもあって。
「その方々の中に忍術、剣道の達人の方がおられたでござる」
「それでその人に」
「教えてもらったでござる」
忍術、そして剣道をとだ。僕が言おうとしたところで。
ここでだ、マルヤムさんは自分からこう僕に言った。
「人の道も」
「そうなんだ」
「そうでござる、まさに我が師でござる、そして」
「そして?」
「師に日本行きを提案してもらったでござる」
「それで日本に来て」
「本場の忍術と剣道、そしてその道を学びに来たでござる」
その来日の理由もわかった、そしてだった。
そうしたことを話してだ、そのうえで。
マルヤムさんは僕に自己紹介を全て終えてだった、武士の様に頭を深々と下げて一礼してだった。そうしてだった。
その場を静かに後にした、それから。
僕はクラスに戻ってそのまま日常に戻った、その後でだった。
部活まで出た後で八条荘に帰るとだ、畑中さんの奥さんにこんなことを言われた。
「実は新たに入居された」
「マルヤムさんですね」
「はい、あの方に忍者食はあるかと言われました」
「忍者のですか」
「そうしたものがあるかと」
「そうなのですか」
「普段は普通の食事を召し上がられているとのことですが」
それでもというのだ。
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