義勇兵
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4部分:第四章
第四章
「絶対に油断するな」
「油断すればこっちがやられますね」
「撃ち落されますね」
「そんな恥をかくな」
彼は部下達に厳命する。
「絶対にだ。いいな」
「油断して倒されるのは武士の恥」
「だからこそですね」
「そういうことだ。それならだ」
こうしてだった。彼等も敵に向かう。忽ちのうちに激しい格闘戦となった。
空中でそれぞれの編隊が激しく乱舞してそのうえで互いに火を噴く。機銃の音が鳴り響きそれが敵を屠らんとする。その中でだ。
スコットはだ。己の機体を見ていた。そのうえで言うのである。
「いい性能だ」
自分の乗っている機体がだ。普段とは全く違うことに気付いたのだ。
まず動きが違う。操縦桿の動きが軽く機動性能も速度もだ。普段より出せていた。
そのうえで敵を狙う。機銃のその狙いもだ。
敵の動きは素早くそうは当たらない。しかしであった。
その反応のよさに満足する。劉の言葉は嘘ではなかった。
「大尉は本当に完全にしてくれたな」
それを確かめるのであった。
そしてだ。そのP40でだ。一機の隼を見据えた。
他の隼よりもまだ動きがいい。それを見てだった。
「いいか」
「はい」
「隊長、何でしょうか」
「あの隼は任せろ」
その隼を見ての言葉である。
「いいな、あれはだ」
「隊長がですか」
「相手をされるのですね」
「フォローは不要だ」
こうも告げる。
「それぞれの敵に向かえ。いいな」
「編隊単位で、ですね」
「このまま」
「敵もそれを崩していない」
一対一であるがそれでもだ。編隊対編隊でもある。それがわかっての言葉だった。
「それならだ」
「わかりました、それなら」
「それで」
部下達もそれに頷いた。こうしてだった。
スコットはその隼に向かった。そのうえで機銃を撃つ。だがそれはあっさりとかわされた。隼は身軽に右に動いて上からのそれをかわしたのだ。
「くっ、やる!」
「あのカーチス」
その隼に乗っていた河原崎がだ。ここで言う。
「やけに強いな。ここはだ」
「隊長!」
「大丈夫ですか?」
「ああ、任せろ」
彼もまたこう言うのだった。
「ここはだ」
「そうですか」
「このままですね」
「そうだ、任せろ」
また言う彼だった。
「俺一人でやる。いいな」
「了解です」
「それでは」
「しかしだ」
ここでもだ。スコットと同じことを告げるのだった。
「編隊は崩すな」
「それはですね」
「決して」
「そうだ、崩すな」
また部下達に命じる。
「わかったな」
「了解です」
「それではこのまま」
「編隊で向かえ」
こうしてであった。全員で敵の編隊を迎え撃つ。
しかしである。ここでだ。
河原崎は実質的にスコットとの一騎打ちに入っていた。互いに旋回し合い犬の闘いの如く狙い合う。その中でだった。
攻撃もし合うがそれでもだった。攻撃は避けられていくのだった。
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