義勇兵
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3部分:第三章
第三章
「河原崎重吉中尉」
「はい」
その彼河原崎重吉はだ。その言葉を聞いて振り返りだ。そのうえで応えるのだった。
「司令、こちらに来られたのですか」
「話を聞いてな」
厳しい顔のイガグリ頭の男だった。帝国陸軍の軍服は大佐のものである。その彼が来てだ。そのうえで彼に対して言ってきていた。
「それでだ」
「左様でしたか」
「次の出撃の時にはだ」
司令は河原崎を見てだ。そのうえでまた声をかける。
「頼むぞ」
「わかっています」
敬礼と共に頷く彼だった。
そしてだ。次の出撃の時だ。
スコットは飛行服を着てそのうえでだ。カーチスP40に乗っていた。そしてそのうえで、である。滑走路にいる劉に対して声をかけた。
見れば彼は整備点検の指揮にあたっていた。その彼に声をかけたのである。
「では今から」
「はい、それでは」
二人は顔を見合わせてだ。そのうえでまた話す。
「行って来ます」
「健闘を祈ります」
二人は英語で話していた。スコットはその中で言うのであった。
「日本軍もしぶといですね」
「存外に」
劉もそれを話す。
「劣勢になればなる程粘りを見せます」
「普段あれだけ闘争心を見せてそのうえですか」
「はい、敵がどれだけ多くても退きません」
それもまた日本軍だった。実際に中国戦線では二十万の大軍を僅か一万で破ったこともあるし何倍もの大軍と常に渡り合ってきたのである。
劉はその日本軍を知っていた。だからこその言葉だった。
「だからこの戦闘機もです」
「念入りに整備して下さったのですね」
「私は飛べません」
ここでこうも言うのだった。
「ですから。その分です」
「整備をして下さったのですね」
「絶対に故障はしません」
劉は断言した。
「そして性能を完全に引き出しています」
「では私はその戦闘機で」
スコットはそのP40を見ていた。その機首がやや大きい独特のシルエットの機体を見ながらだ。彼は意を決して言うのであった。
「戦います」
「健闘を祈ります」
「それでは」
二人で敬礼をし合ってだ。そのうえで出撃する。重慶上空に行くとだ。もう日本軍が来ていた。すぐに彼等との戦闘に入る。
「いいか」
スコットが部下達に指示を出す。
「一機ずつ戦うな」
「常に編隊で、ですか」
「そうしてですね」
「そうだ、敵を侮るな」
これを強く言うのである。
「甘く見たらやられるのはこっちだ」
「だからこそですか」
「ここは」
「そうだ、絶対に一機になるな」
彼はまた言った。目の前にいるその日本軍の隼達を見てである。
「わかったな。それならだ」
「了解です」
「それならです」
「行きましょう」
こうしてだった。日本軍の戦闘機隊に向かう。そしてだ。
河原崎もだ。そのP40の編隊を見てだ。部下達に告げる。
「編隊で戦う」
「はい」
「そうしてですね」
「敵は強いぞ」
彼もであった。奇しくもスコットと同じことを話していた。
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