老騎兵
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2部分:第二章
第二章
そしてだ。ソ連軍にまずはフィンランド軍の砲撃が浴びせられた。それを受けた戦車や大砲が吹き飛んでいく。
「いいか、この砲撃が終わればだ!」
「はい!」
「もう横につきましたし」
「一気に突っ込む!」
そうするというのだった。
「いいな!」
「了解です!」
「それじゃあ!」
部下達もスッタの言葉に頷いてだった。そうしてだった。
砲撃が終わった瞬間にだ。砲撃を受け怯むソ連軍に銃撃を浴びせる。忽ち側面にいた兵士達が撃たれそれで吹き飛ぶ。そして。
サーベルを抜いた。それで。
「突撃っ!」
「行くぜ!」
「熊共覚悟しやがれ!」
全騎兵により斬り込んだ。これで決まった。
「戦車や装甲車には目をくれるな!」
「ええ、わかってます」
「流石に相手はできませんからね」
「歩兵をやれ!」
そちらをだというのだ。
「斬れ!いいな!」
「もう斬ってますよ!」
「こうしてね!」
フィンランド軍の騎兵達のサーベルが煌く。煌くその度に鮮血が沸き起こり腕が飛び首が落ちる。そして逃げ惑う敵兵を踏み躙りだ。そのうえで彼等の軍を突破したのであった。
その突破されたソ連軍に歩兵達と僅かばかりの戦車隊が総攻撃を仕掛ける。こうしてであった。
フィンランド軍は勝利を収めた。騎兵隊もそのことを祝っていた。
硬い黒パンをソーセージと一緒に煮たものを食べながらだ。彼等は話すのであった。
「勝ったな」
「ああ」
「あいつ等は数だけだな」
「そうだよな」
「質は大したことないな」
このことが話される。
「じゃあ勝てるか?」
「このままな」
「いや、侮るな」
だがスッタは驕りかける彼等を制止した。
「驕ればそれでだ」
「負ける」
「だからですか」
「装備は向こうの方がずっといいんだ」
ここではあえて数のことは話さなかった。
「わし等は今だに騎兵隊だぞ。向こうにはもうないだろう」
「そうですね。こっちは戦車なんて碌にないですしね」
「戦闘機も」
あるにはあるがだ。どれもお話にならない旧式機ばかりである。フィンランド軍はお世辞にも充分とは言えない状況であるのだ。
「言われてみればそうですね」
「今の俺達なんて向こうから見れば」
「ちっぽけなものですよね」
「そうだ。あの戦車を見ろ」
スッタは今度はソ連軍の戦車のことを話した。
「あれは凄い戦車だぞ」
「ああ、あのハッチが二つ開くあれですね」
「鼠に見えるあれですか」
「確かT-34でしたね」
その名前も誰かが言った。
「随分と強いですよね」
「動きは速いしぶといし」
「おまけに火力はあるし」
「あれを見てもソ連が強いことはわかる」
語るスッタの表情は険しい。
「いいな。絶対に油断するな」
「油断したらその時は、ですね」
「国がなくなりますね」
「連中にとっては我が国は小国だ」
最早国力がお話にならないまでに開いていた。何しろソ連の人口は優に一億を超える。それに対してフィンランドはだ。精々五百万といったところなのだ。
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