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いつか止む雨

作者:九曜 瑞
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序 いい雨だね

「今日も、雨だね。雨は……好きだな」

 ここは高水鎮守府。鎮守府と言っても、今は僕しかいないんだけどね。
 かく言う僕も昨日着任したのだけど。
 提督が着任するまでに、やれることはやっておこうかな。

 しかし、どうして僕なんだろう。
 新設された高水鎮守府、艦娘の数が揃ってきたため空白地を埋める形で東北に作られた。
現状としては優先度の低い鎮守府……だと思う。
 とは言え、まだ新米艦娘の僕一人で大丈夫なのだろうか。
 ちゃんと……できるかな。

 居住区の掃除は終わったかな、執務室に入るわけにはいかないから草むしりでもしていよう。
 提督が到着する予定時間まで三時間、何もしないでいるより、動いている方が気が紛れるね。
 
「雨……やんだのかな?」
 僕の体に降り注いでいた霧雨が、ふと止んだ。時計を見ると二時間ほど経過していた。
 後一時間、かな。
「風邪ひくよ?」
「えっ?」
 突然の声に驚き、後ろを振り返ると青年が僕を心配そうに見つつ、傘をさしてくれていた。
「夏の雨とはいえ、あまり濡れすぎると体に良くないよ」
 そして彼は微笑みながら、僕に来ていた上着を羽織らせて続けた。
「草むしり一人で大変だっただろう、明日雨がやんだら一緒にやろうか。とりあえず鎮守府に入ろうか」
「は、はい。ご案内します」
「うん、よろしくお願いするよ。時雨」 
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