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(仮称)問題児たちと一緒に転生者が二人ほど箱庭に来るそうですよ?

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箱庭の説明を聞くそうですよ?

 
 
 黒ウサギが耳をいじられ、十六夜等3人が耳をいじり、飛鳥とフレメダが我関せずと湖で釣りをしているという少々カオスな状態に陥ってしばらく経った。


「―――あ、あり得ない。あり得ないのですよ。まさか出会ってから話を聞いてもらうまでに2時間近くも消費してしまうとは。学校崩壊とは間違いなくこのような状況を言うに違いないのデス」


 そのとき黒ウサギの精神は正常に働いているのが不思議なくらいズタボロだった。唯でさえ顔合わせをミスり、飛鳥とフレメダに銃弓の遠距離攻撃と魔法と忍術と気功術と宝具でフルボッコにされた直後に耳を引っ張ったり握ったりと弄り倒しにあった訳だ。

 まあ、前者は黒ウサギの自業自得だから仕方ないね。取り敢えず、全て避けたとはいえ、プチマダンテとかメヒャドとか魔貫光殺砲とか嵐遁・励挫鎖苛素とか天泣とか雷遁・偽暗とか土遁・飛び礫とか風遁・無限大突破とかを飛鳥とフレメダが撃ちまくったとだけ言っておく。

 メガライアーとか火遁・爆風乱舞とかメドローアとかザラキーマとか塵遁・限界剥離の術やらの一撃の範囲が広かったり喰らえば軽く5回は死ねる威力の攻撃をしないのが優しさらしい。


「いいからさっさと進めろ」


 だが、とりあえず話を聞いてもらえる状況を作れたので彼女はどうにか気を取り直す。詳しくは省くが、彼女はここでへこたれるわけにはいかないのだ。


「それではいいですか、御五名様。定例文で言いますよ? 言いますよ? さあ、言います!  ようこそ〝箱庭の世界〟へ! 我々は皆様にギフトを与えられた者だけが参加できる〝ギフトゲーム〟への参加資格をプレゼンさせていただこうかと思い、召喚いたしました!」
「ギフトゲーム?」
「そうです! 既にお気づきでしょうが、御五名様は皆、普通の人間ではございません! その特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた〝ギフト〟――恩恵でございます。〝ギフトゲーム〟はその恩恵を用いて競い合うためのゲーム。そしてこの箱庭の世界は強大な力をもつギフト保持者がオモシロオカシク生活できる為に造られたステージなのでございますよ!」


 そう言って、黒ウサギは両手を広げて箱庭をアピールする。ここで、久遠が質問をする為に挙手をした。


「まず初歩的な質問からしていい? 貴女の言う〝我々〟とは貴女を含めた誰かなの?」
「YES! 異世界に呼び出されたギフト保持者は箱庭で生活するにあたって、数多ある〝コミュニティ〟に必ず属していただきます♪」
「嫌だね」
「属していただきます! そして〝ギフトゲーム〟の勝者はゲームの〝主催者(ホスト)〟が提示した商品をゲットできるという、シンプルな構造になっております」
「………〝主催者〟って誰?」
「様々ですね。暇を持て余した修羅神仏が人を試す為の試練を称して開催されるゲームもあれば、コミュニティの力を誇示する為に独自開催するグループも御座います。特徴として、前者のゲームは自由参加が多いですが〝主催者〟が修羅神仏なだけあり、凶悪かつ難解なものが多く、見返りは大きですが命の危険があります。しかし、〝主催者〟によりますが新たな〝恩恵(ギフト)〟を手にすることも夢ではありません。
 後者は参加の為にチップを用意する必要があるゲームが大半です。参加者が敗退すればそれら全ては〝主催者〟コミュニティに寄贈されるシステムですネ」
「後者は結構俗物ね。………チップには何を?」
「様々で御座います。金品、土地、利権、名誉、人間……そしてギフトを賭ける事も可能です。新たな才能を他人から奪えばより高度なギフトゲームに挑むこともできるでしょう。ただし、ギフトを賭けた戦いに負ければ当然――ご自身の才能を失われるのであしからず」
「そう。……ゲームそのものはどうやったら始められるの?」
「コミュニティ同士のゲームを除けば、それぞれの期間内に登録していただけたらOK! 商店街でも商店が小規模のゲームを開催しているのでよかったら参加していってくださいな」
「……つまり〝ギフトゲーム〟はこの世界の法そのもの、と考えてもいいのかしら?」


 お? と驚く黒ウサギ。


「ふふん?中々鋭いですね。しかしそれは八割正解の二割間違いです。〝ギフトゲーム〟の本質は一方の勝者だけが全てを手にするシステムです。我々の世界でも強盗や窃盗は禁止ですし、金品による物々交換も有ります」
「そう。中々野蛮ね」
「ごもっとも。しかし主催者は全て自己責任でゲームを開催しております。つまり奪われるのが嫌な腰抜けは初めてからゲームに参加しなけばいいだけの話でございます」


 さて。と黒ウサギは話の流れを区切る様に言って、一枚の封書とテーブルを虚空から取り出した。


「話した所で分からないことも多いでしょうから、ここで黒ウサギと一つゲームをしませんか?」
「ゲームだって?」


 今まで沈黙を保っていた十六夜はピクリと片眉を上げた。


「ルールは至ってシンプル。ジョーカーを含めた53枚のトランプの中から絵札を1枚選んでとっていただきます。カードに触れるのは一人一回までとさせていただきます♪ 商品は、そうですねぇ……黒ウサギに何でも一つ命令できるということにしましょうか♪」
「ほう?……何でも、ねぇ………」
「勿論性的なことはダメですヨ!!??」
「冗談だ」


 そう言って、十六夜は黒ウサギの豊かな胸部をしげしげと見た。視線に気付いた黒ウサギは赤くなり、飛鳥と耀はゴミを見る目で十六夜を見ていた。ちなみに、飛鳥とフレメダは話半分で聞き流していた為、無反応だった。


「チップには、………貴女の言うギフトを賭けないといけないのかしら?」


 僅かに竦んだ様に久遠は尋ねた。黒ウサギはそれに感づき、挑発するようにとてもイラつく態度と雰囲気を持って答えた。


「最初のギフトゲームということでチップはなしとさせていただきます。強いて言うなら皆さんのプライドを掛けるといった所ですか。
 自信がないのであれば、断ってくださっても結構ですよ?」


 なんとも小馬鹿にしたような態度である。小一時間前に弄られまくっていた者が弄りまくっていた者達にする態度ではない。普通なら怒るか帰るか更に弄るか、何れかをする場面であろう。――まあ、黒ウサギは内心では冷や汗ダラダラの状態なのだが。

 が、ここでこんな挑発に乗るのが問題児である。


「随分と楽しい挑発してくれるじゃねぇか」
「お気に召してくれた様で何よりです。あ、因みに申しますと、黒ウサギは〝審判権限(ジャッジマスター)〟と呼ばれる権限を有しております。ウサギの目と耳は、箱庭の中枢に繋がっているのです。ですので、イカサマ等のルール違反は無理デスヨ?」


 この辺からソコソコに話を聞いていた飛鳥とフレメダの感想は―――

『(こいつ等チョロすぎだろ。チョロインか? チョロインなのか? 結局、今日日ラノベでもここまでチョロい奴なんざ居ない訳なんだが?)』
『(……こいつ等、交渉事には天地がひっくり返っても絶対に向かんな)』

 ―――の一言に限る。とはいえ、飛鳥もフレメダもそんな挑発に乗る必要も義理もないのでその場から動かない。
 そんな二人に黒ウサギは若干焦った様な声で歩み寄って来た。


「えと、あの! 御二方はやらないのですか? 体験版ギフトゲーム……?」
『ああ、やらない。結局、やる意味も義理もない訳だし、大体、そこの三人と違ってそんなやっすい挑発に乗るほど俺等若くない訳だ』
『……アレが挑発だとしたら、掛かるのは相当の阿呆か馬鹿だけだ。……反応するだけ時間と労力の無駄だ』


 ピクッと三人の眉が動いたが、気にせずに二人は黒ウサギにそう言った。
 その言葉に対し、黒ウサギは肩を落として三人の下へ戻っていく。正直言って、彼女にはギフトゲームを体験させる事以外に目的が有ったのだが、この際仕方ないと結論付けたのだ。


「で、では御三方、ゲームを始めさせていただきます」


 そうして、ゲームがスタートした。十六夜が一番手を名乗り上げ、テーブルのカードをざっと見た。


「さっきは粋な挑発をありがとよ」
「き、気に入っていただけて何よりデス……」
「これはその礼だ!!」


 突如、十六夜はテーブルを平手で叩きつけた。黒ウサギは突然のことに驚き、春日部と久遠は表になった絵札のカードを取っていった。


「ホワッツ!? な、何をやっているんですか!?」
「一人一回、絵札のカードを選びとる。ルールには抵触していない筈だろ」


 すぐさま黒ウサギはウサ耳を立ててどこかと連絡を取り始めた。そして少ししてから項垂れた。


「うう、箱庭の中枢から正当であるとの判断が下されました。し、しかし、十六夜さんがまだですよ!!」


 どうやら十六夜は黒ウサギを憤慨させてしまったようだ。が、十六夜は表情を変えることなく―――

「俺を誰だと思っているんだ? ほらよ」

 ―――手のひらを返す。そこには、クラブのK(キング)があった。それを見て黒ウサギは目を丸くした。


「一体どうやって!?」
「憶えた」
「……は?」
「だから53枚のカードの並びを憶えたんだよ。このカードの隣はダイヤの2、クラブの9、スペードのJ(ジャック)だ」


 何でも無さそうに言う十六夜に、黒ウサギは目を見開いて唖然としていた。

 どっかのドラマで似た様なやり方や言い分があったが、アレはパーフェクトシャッフルがあってこそ。黒ウサギがやったシャッフルはカードゲーム等で見られる様なオーソドックスなシャッフルだった。


「ゲームに勝ったら言う事を一つ聞いてくれるンだったな。……俺が聞きたいのはただ一つ。手紙に書いてあったことだけだ」
「なんでございましょう」


 十六夜は、何もかも見下すような視線で一言―――

「この世界は………面白いか?」

 ―――と、問を投げかけた。


「――――――――」


 春日部と久遠も無言で返事を待つ。
 五人を呼んだ手紙にはこう書かれていた。


〝己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨てて箱庭に来い〟と。

 それに見合うだけの催し物があるのかどうかは、修行の名目の下に世界巡りに来た飛鳥とフレメダは兎も角、十六夜達三人にとって、それはそれは大変に重要なことだった。
 そして、十六夜の質問に黒ウサギは満面の笑みで答えた。


「―――Yes♪ 『ギフトゲーム』は人を超えた者たちだけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギは保障いたします♪」


 
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