八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二十話 サッカー少女その八
「駄目だと思うからな」
「あの帝国海軍ですか」
「格好いいな、海軍は」
「そうですね、うちの学園というか八条グループは海軍と縁が深かったですし」
そしてだった。
「今も自衛隊と縁がありますし」
「特に海上自衛隊とな」
その帝国海軍の後継者と言うべきあの自衛隊とだ。
「縁が深いな」
「はい、それでなのですか」
「江田島に小学校の時に行ってだ」
どうもその時が井上さんが今の様になったはじまりらしい。僕もその話を聞いて思った。
「その素晴らしさ、折り目正しい格好よさに感激してだ」
「それで、なんですね」
「こうした生活態度にしているのだ」
折り目正しく生真面目なものに、とだ、井上さんは話してくれた。
「この様にな」
「そうですか」
「そうだ、そしてだ」
「そして?」
「走っている時に会ったのだが」
ここでだ、井上さんは僕にこの話題をしてきた。
「新しい入居者に会った」
「あっ、もうですか」
「ふむ。大家さんはもう知っていたか」
「昨日畑中さんから」
聞いたとだ、僕は井上さんに答えた。そしてここで。
早百合先輩もだ、演奏を止めてそのうえで僕に聞いてきた。
「あの、今日は」
「はい、もうです」
僕は早百合先輩にも顔を向けて答えた。
「来られてるんです」
「それはまた早いですね」
「朝早くというかもう三時位には」
「朝のですか」
「まあ夜って言ってもいいですけれど」
そうした早い時間にとだ、僕は早百合先輩に答えた。
「もう来られていて」
「それでなのですね」
「私とランニングの時会った」
ここでまた井上さんが言って来た。
「その人とな」
「一体どういった方でした?」
「夜道であまり見えなかったが随分と瞬足でだ」
足が速くて、というのだ。
「それでだ」
「それで、ですか」
「朝まだ暗いせいで顔もあまり見えなかった」
「じゃあどういった人か」
「よくわからなかった」
そうだったとだ、井上さんは僕に話して来た。
「どうもな」
「そうだったんですね」
「そうだ、申し訳ないがな」
「そうなんですか」
「私の後ろから来てだ、あっという間に追い抜かされた」
その瞬足でというのだ。
「そして私が帰った時にだ」
「もう、ですか」
「その人はランニングの後の整理体操を終えてシャワーを浴びに行っていた」
「お風呂場では会われなかったのですか?」
早百合先輩が井上さんにこのことを問うた。
「そちらでは」
「うむ、それがだ」
「それが、ですか」
「実は私はお風呂場に入る前に自室にバスタオルやシャンプーを取りに行っていたのだ」
「あれっ、シャンプーならありますよ」
お風呂場にとだ、僕は井上さんに答えた。
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