箱庭に流れる旋律
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ハープナーを撃て
ハープナー、登場する
前書き
自分が更新を中止していた間に、感想の方でコラボのお誘いをしてくださった方がいたのですが・・・ログインしていない状態で感想を書いてくださったようで、その方が誰なのかも分からないのです・・・
お手数おかけしますが、これを読んでくださっていましたら、ユーザー名か作品名を教えてくれないでしょうか?
「えっと・・・本当にどうしましょうか?僕、何が何だか出状況を把握しきれていないんですけど」
「そうですね・・・とりあえず、このまま逃げ回りましょうか」
「・・・出来ることなら、僕たちに出来ることをしたいんですけど」
「ご主人様ならそう言うとは思いましたが、これを仕掛けて来た側に音楽シリーズのギフト持ちがいた場合を考えてください。その時に私たちが動けない、ではどうなることか・・・」
ラッテンさんの言ってることは分かるし、自分のギフトだからそれが本当にあり得るということもよく分かる。でも・・・やっぱり、なんだかいやだ。
三人いれば何とかなるかな、と思っていこうとして・・・
「お兄さん、ユイも同じ気持ちだけど、ここは耐えよう?」
「そ、そう、です・・・ここは、もうちょっと我慢して・・・」
でも、今演奏してくれてる二人の・・・より正確には、ロロちゃんがそう言ってくれたことで、どうにかとどまれた。アンダーウッドでここまで暴れられて一番つらいのはロロちゃんのはずなのに、頑張ってくれてるんだ。僕が勝手に動いてどうする。
「・・・スイマセン、分かりました。ひとまず、このまま逃げの一手で行きましょう。竪琴の音も聞こえてきますし、何が起こるか分かりませんから」
「はい、オッケーですご主人様」
「でも、こっちに何か向かってきたら、どうしましょうか・・・?」
「その時は、仕方ないから・・・ッ!?」
「--------------GYEEEEEEEEEEYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaEEEEEEEEEEEEEEYYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaa!!!」
つい反射的に、この場にいる全員が両手を使って耳をふさいでしまう。空を飛んでいた分音源から近かったことと、全員に共通して耳がよかったことからの反射的な行動。そして・・・両手を使ったことで、ユイちゃんとロロちゃんの演奏が、止まる。
「ッ・・・――――」
とっさに両手で耳をふさいだまま剣の舞を歌い直して、皆を回収する。僕は楽器を演奏するわけじゃないから、両手が空いてなくても演奏できるので。
「ご、ごめんねお兄さん。つい・・・」
「す、すいません、お兄ちゃん・・・」
『大丈夫だったから、気にしないでください。耳が戻るまでは、このままで大丈夫ですから』
喋れないので携帯に打ち込んで見せて、周りを確認します。まず上を見ると、大きな龍が。
・・・・・・え、龍?
「・・・ご主人様、これ割と本気でマズイかもしれません」
「ラッテンちゃん、あれってそんなに危ない物なの?」
「・・・純血の龍種。最強種の一角よ、あれ」
えっと・・・つまり、白夜叉さんみたいなもの、ってことなんでしょうか?かなりピンチだったり?そう考えながら上を見ると、龍の鱗がはがれて、放たれてきます。それらは、地面に落ちるまでの間に姿を変えて・・・蛇、蜥蜴、サソリ等になって、人を襲い始める。
僕らの上からも降ってくるので避けながら進みますけど、当然よけきれないものもあるわけでして。で、そういったものは・・・
「・・・レヴィお姉ちゃん、凄いですね・・・」
「ええ。何せ自分、ニンジャっすからね」
「ニンジャ凄いわね・・・」
「すごいでしょう?」
いや、本当にすごい。下の戦闘状況を見る限り決して弱くない・・・むしろ強いはずの相手なのに、一瞬でバラバラになってましたから。そして、僕たちに破片の一つも、血の一滴もかけない気配りまで。
「・・・レヴィちゃんって、何者なんですか?」
ラッテンさんが演奏を交代してくれたので、そう尋ねてみた。
「そうッすね・・・今は、奏さんに仕えるニンジャッすよ?全力でみなさんをお守りするッす」
「・・・期待、させてもらいますね」
「・・・期待されちゃったら、頑張るしかないッすねぇ」
そう言った次の瞬間には、周りにいた魔物がみんな細切れになる。今更かもしれないですけど、どこまで強いんですか?
「審判権限の発動が受理されました!只今から“SUN SYNCHRONOUS ORBIT in VAMPIRE KING”は一時休戦し、審判決議を執り行います!プレイヤー側、ホスト側はともに交戦を中止し、速やかに交渉テーブルの準備に移行してください!繰り返し
「--------------GYEEEEEEEEEEYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaEEEEEEEEEEEEEEYYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaa!!!」
黒ウサギさんの声を遮って雄たけびを上げた龍は、一度地上に急接近して、再び空に戻る。
「な、何・・・!?」
「・・・審判権限が受理されたから、引き揚げたのよ。多分、ただそれだけ」
「それだけのことで、こんな・・・」
龍から離れた位置に降りた僕たちには被害はなかったけど、ただそれだけのことで多くの被害が出ている。魔物はどんどん回収されていき・・・それと一緒に、人も回収されていく。
「・・・ッ、だ、ダメ!」
「ロロちゃん!?」
そんな光景を見ていてもう我慢が出来なくなったのか、ロロちゃんが演奏しながら剣に乗って飛び出していく。手の届く子供を乗せて・・・でも、戻ってはこれそうにない。
やっぱり、近づいたらもう戻ってくるのは難しいよね・・・もちろん、ロロちゃんをこのままにしておくわけにもいかないし。
「・・・僕、ロロちゃんのところに行ってきますね」
「はぁ・・・ご主人様って、なんだかんだ思い切りがいいですよね・・・ダメです、危険すぎます」
「分かってますけど、このままにしておくわけにはいきませんから。・・・ガロロさんにロロちゃんを任されたのは、僕なんです」
どこに音楽シリーズがいるか分からないから二人は残ってくださいと言いつつ、僕は歌いながら剣とともに飛び、その先に有るお城を目指します。
もちろん、回収できる限りの人を回収しながら、ですけど。逃げることも逃がすことも出来ないとはいえ、一緒に行動していた方が安全なのは間違いないですら。
そのほとんどが子供で、泣いてるんだから・・・さ。
「全く・・・いい人ッすね、奏さんは」
「・・・・・・!?」
歌うのをやめないで驚きの表情を向けると、声のした方には予想通りレヴィちゃんがいた。
「自分、音楽シリーズのギフト持ちじゃないっすから。奏さんやロロさんを守ってほしいと、二人に言われてきたッすよ」
・・・確かに、レヴィちゃんはどっちにいても問題がない人だ。むしろ、一緒に来てくれると心強い。
それに、どうせもう戻れないんだからいっかと言う投げやりの考えもあって。
さて、無事に終わるといいなぁ・・・
♪♪♪
「殿下―!おじ様―!ゲームが休戦になったけど、続きはどうするのー!?」
階段を駆け上がってきたリンは、なんだかとてもうるさかった。失礼な言い方だとは思うけど、他の表現がないんだもの。
「・・・・・・殿下―!!殿下殿下でんかでんか、で・ん・かー!!!」
幼さゆえのきれいな声が回廊にこだまして、そしてその本人が拗ねたように唇を尖らせて頬を膨らませているものだから・・・微笑ましくって、つい笑いが漏れてしまったわ。
「リン。殿下なら先ほど城下町の様子を見に行ったわよ」
だから、月光を浴びて竪琴を演奏しながら、そう伝える。
「そっか―。じゃあ私とアウラさんの二人でお留守番?」
「一応私は仕事をしているのだけど、そんなものよ。・・・とはいえ、私たちは主催者じゃないから休戦の誓いを守る義務もない。巨人族を率いて戦う指示も出るでしょうし、私はその時前線にでる必要があるから、今は大人しく英気を養っておきましょう」
多分、今私の眼もとは笑っているのだと思う。今回手に入れた黄金の竪琴は、私の手にしっくりきた。ギフトを宿しているとかそんなことは関係なく、相性がいいのよね。
「それで、どう?うまく行きそうですか?」
「そうね・・・多分、大丈夫なんじゃないかしら?妙に自信が湧いてくるのよね」
「へえ、それはいいことだな」
と、そこで殿下の声がした。声の方を見ると、殿下とグライアが来るところだった。帰って来たのね。
「アウラ。リン。ゲームが休戦になったのは聞いたよな?」
「勿論ですわ」
「なら話が早い。アウラとリンはころ合いを見て巨人族とともに“アンダーウッド”を攻め落とす。タイミングは敵の主力が分散されるのを見計らって俺が知らせる」
「分かりましたわ」
「頼んだぞ。・・・相手側に音楽シリーズのギフト持ちがいる以上、こちらも音楽シリーズをぶつけるしかない」
そんなこと、自分のギフトがそれだけのものであることは、ちゃんと理解しているわ。だから、
「勿論です。音楽シリーズ“竪琴”のギフト保持者、“魔女のハープナー”として、全力を尽くさせていただきます」
♫♫♫
殿下達の立てた作戦は、うまくいくはずであった。
巨人族に対して音楽を奏でるにしても、敵側の音楽より味方の物の方がいいに決まっている。その力を持ちいれば、まず押し負けることはないだろうと判断したのだ。
ただ一つ誤算があるとすれば・・・それは、城の中に三人の音楽シリーズがいたことだろう。
一人は、殿下達の勢力であるアウラ。だから、これは問題ではない。問題なのは、残りの二人。
ロロロ=ガンダックと天歌奏。
貴重なギフト保持者だからこそ、何かあった時に困るからこそ、二乗に残るはずと判断されたギフト保持者は、城の中に入り込んでいる。
このことがどれだけ被害を出すことが出来るか・・・それ次第で、参加者たちが勝利できるかが変わるだろう。
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