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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第十九話 風紀委員その十一

「私は少し誤解していたな」
「あの、その誤解って」
「心の何処かで君がお父上と同じ資質を持つと思っていた」
「うちの親父は突然変異ですから」 
 だからだとだ、僕も井上さんにこのことはしっかりと言った。
「人間離れしてますから」
「その猟色、大酒、遊興はか」
「はい、ですから」
「君はお父上と違うか」
「一族でも親父だけです」
 八条家も色々な人がいるけれどだ、親父は本当に特別女好きで酒好きで遊び好きだ。確かに女好きの人や酒好きの人もいるけれどそのレベルが違う、親父は。
「あんな人は」
「そうか、やはり八条家の方々の中でも」
「そのことは覚えておいて下さい」
「わかった、ではな」
 こう応えてだ、そしてだった。
 井上さんは一旦自分のお部屋に向かった、その一一八号室に。
 そして晩御飯の時にだ、井上さんは自己紹介をしてだった。そのうえで皆にもこう言った。
「規律を乱す者は私が許さない」
「あの、規律をですか」
「そうだ、この八条荘の規律をだ」
 こう早百合先輩にも言うのだった、毅然として。
「それはあるな」
「いえ、これといって」
 畑中さんが井上さんに言って来た。
「ありません」
「そうなのですか」
「はい」
 こう井上さんに言うのだった。
「左様です」
「規律がないということは」
「常識さえ守って頂ければ」
 至って冷静にだ、畑中さんは井上さんに話した。
「それでいいので」
「そうしたお考えだからですか」
「はい、八条荘に規則はありません」
 明文化されたそれはというのだ。
「言うなら慣習法です」
「イギリスの様にか」
「別に文章で定めてはいませんので」
「では規律は」
「ですから常識の中で」
「それは困るな」
 井上さんは畑中さんの説明に困った顔になった、そのうえでこう言った。
「文章になったそれがないとな」
「お困りですか」
「そうです、どうも」
「井上様としましては」
「様付けは止めて下さい」
 井上さんは僕のやり取りと似た様なことを畑中さんにも言った。
「それは」
「左様ですか」
「私は執事様より年下ですので」
「いえ、私の方こそです」
「様付けはですか」
「はい、お止め下さい」
 どちらも言う形になった、ここで。
「それは」
「そうですか、それでは」
「はい、ですから」
 それで、というのだ。
「お止め下さい」
「では何とお呼びすれば」
「さん付けでしたら」
 それならとだ、畑中さんは井上さんに答えた。
「私としましても」
「そうですか、では私も」
「さん付けですか」
「若しくはお名前でお願いします」
 御飯を食べつつだ、井上さんは同席している畑中さんに和した。 
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