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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第十九話 風紀委員その九

「けれどあんなね」
「ハーレムとか酒池肉林は」
「うん、興味ないから」
「そうなんだね」
「うん、それにああした生活ってね」
 酒池肉林、甘美な響きの言葉にしても。
「絶対に身体に悪いよ」
「お酒に美食に女遊びってね」
「どう考えても身体に悪いよ」 
 僕はこのことからもそうした生活について述べた。
「何もいいことはないよ」
「実際お酒と遊びで健康を害した人多いしね」
「そうだよ、だからね」
「大家君はそうしたことには興味がないんだ」
「酒池肉林にはね」
「真面目だね」
 僕の話をここまで聞いてだ。宮下君はしみじみとした口調で答えた。
「親父さんとはそこが違うんだね」
「僕は僕、親父は親父だよ」
「女遊びとか興味ないんだ」
「そうして楽しんで身体を壊したら意味ないよ」
 それこそだ、そんな事態になったら。
「だからね」
「健康には気を付けて」
「節制してね」
 そうしてとだ、僕は宮下君に答えた。
「やっていくよ」
「それも親父さん見てなんだね」
「そうなんだ、実際ね」
「ううん、そこが難しいね」
「人間ってね」
 本当にとだ、僕はまた言ってだった。
 そうしてだった、この日の学校生活も楽しんだ。そうして。
 八条荘に戻るとやっぱり井上さんがいた、黒いスラックスにブレザー、それとネクタイという全く室内着に見えない服でいた。靴は皮の黒だ。
 その井上さんを見てだ、僕は思わず眉を顰めさせて問うた。
「あの」
「何だ?」
「何でスーツなんですか?」
「それが私の普段着だ」
 こう僕に言って来た。
「室内着だ」
「本当ですか?」
「何かおかしいところがあるか」
「あります」
 僕は驚いて言った、流石にこうした事態は考えていなかったので驚いた。
「室内着がスーツって」
「私のスタイルだ」
「だからですか」
「寝る時は脱ぐ」
 井上さんはまたしてもきっぱりと言い切った。
「パジャマにな」
「あっ、お休みの時はパジャマですか」
「何か悪いか?」
「いや、女の子だなって思いまして」
 もっと言えば少女趣味だとだ、僕は思って言った。
「それで」
「悪いか、私も女の子だぞ」
 井上さんは眉を曇らせてお顔を赤くさせて言い返してきた。
「それならパジャマで寝ることもだ」
「当然ですか」
「ジャージでは寝ない」
 実は僕は冬はジャージを着て寝る。夏は膝までの半ズボンとシャツだけになってそうして寝る。暑いからだ。
「ましてやネグリジェや裸もだ」
「裸は幾ら何でも」
「破廉恥だ」 
 また懐かしい単語が出て来たと思った、その言葉に。
「全く以て」
「破廉恥ですか」
「そうだ、破廉恥だ」
 裸で寝ることはとだ、井上さんは必死の声で僕に言って来た。
「服は常に着ないと駄目だ」
「それもきちんとですね」
「そうだ、この八条荘にそうした不届き者はいないな」
 どうにも時代かかってきている喋り方に思えてきた、井上さんのそれは。聞いていると本当にそう思えてきた。 
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