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魔法少女リリカルなのは Searching Unknown

作者:迅ーJINー
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第二話

 
前書き
 指が進まない。エタらないように頑張ります。 

 
「ん?……んんっ!?」

 銀行強盗から数日後。出勤してきた直人がタイムスケジュールを確認していると、朝から我が目を疑っている。

「おいこれ……俺今日死ぬんやないか……」
「どうしたんです……あっ」

 横からティーダが覗くと、言葉を失った。デスクに置かれた端末の画面には「空士009部隊との合同実戦訓練」とあった。実戦訓練の中には、隊員同士による戦闘訓練が含まれているからだ。

「あの『狂戦士』がおるとこやで……」
「ですねぇ……それにあの二人も一緒だ」
「あいつら俺らよりしごかれてるらしいから、勝てる気がせんのやけど」

 始まる前から敗戦ムードが漂う二人であった。



 そしてあれよあれよという間に訓練の時間がやってきた。両隊の隊長が挨拶をすると二つのグループに別れ、交互に鬼ごっこをするといった内容だ。直人とティーダは同じグループに放り込まれたが、そこには懐かしい面々もいた。

「おう、お前らもこっちか」
「あら、久しぶりね」
「訓練校以来だな」
「まぁ、部隊が違いますからな」

 ミリアとヴァイスの二人である。二人ともかなりの経験を積んだのか、直人からは卒業後より凄みを増しているように見えた。

「それで直人、少しは私と戦えるくらいにはなったのかしら?」
「それは後のお楽しみって奴やで」
「この私を前によく言えたわね、訓練校では一度も勝てなかったくせに」
「昨日の俺に負けるわけにはいかんやろ?」

 同じチームのはずなのに火花を散らす二人。ティーダは尻込みして入れず、ヴァイスは止める気がなくニヤニヤして眺めている。するとそこに彼らの先輩が現れた。

「お前たち、こんなところで同窓会でもするつもりなら今すぐ帰れ、足手纏いだ」
「失礼致しました」

 真っ先にミリアが反応したため009部隊の人間だと思われる。頬に真っ直ぐ縦の傷が入った、スキンヘッドで浅黒く焼いた肌と戦うための筋肉に身を包んだかのような男が警告を飛ばす。すぐさま全員居住まいを正して敬礼すると、男は鼻でため息をつき、その場にいる全員に訓練条項を話していく。

「――以上が、今回の訓練条項だ。質問があるならどんなことでも構わんから今の内に出しておけ。始まったら抱えたまま悩んでいる暇などないぞ」

 全員がデバイスに出されたメモを見ながらその上官を質問攻めにする。それら一つ一つをおざなりにせず、全てに丁寧に答えていくと、彼に相手側の上官から準備完了の報が届く。

「向こうの準備が整ったようだ。もう質問はないか?」

 全員が「ありません」と同時に答えると、彼は静かに頷き、準備完了の報を相手側へと伝える。

「では今この瞬間から訓練開始だ。まず我々は逃げる側となった。各自散開し、制限時間まで逃げ回れ!」
「了解!」

 隊長の鶴の一声で、各自散開してポジションについた。



 そんな中、フレディは無限書庫にいた。もちろんここにも職員はいるのだが、彼は自分の仕事だし他人に見せられたものじゃないと言って一人で文書を探している。流石に広すぎるので、おおまかに伝えてそれらしきものが記述されていそうな書類が置かれたパーティションに来ている。

「これじゃねぇ……これも違う……あれなんだっけなぁ……」
『何探してんだよ旦那』
「俺があそこに飛ばされた原因になったロストロギアだよ。普段ならどうでもいいが、もしあれが何者かの手によって起こされた現象だとしたら、放っておけば俺の名に関わる」
『勤勉なこって。そんなもん、適当に女コマして探させりゃいいじゃんよ』
「二度も言わせるな。これは「俺」の名に関わることだ。もしあれがもともと「そういうもの」なら、じゃあ仕方ないで終わることなんだがな」
『律儀だねぇ、普段からこうならいいんだけどな』

 ケタケタ笑う腕輪を適当にあしらいながら、とてつもないペースで書類と格闘していく彼であった。



 そのまま無事に鬼ごっこ訓練は終わり、いよいよ一対一の実戦訓練へと移る。

「さて、いよいよお前らお待ちかねのタイマンだぜ、やりたいって奴は前に出な」

 そう言われてしまえば出てしまうのが若気の至りというもので、早速直人が名乗り出る。すると009からはミリアが立候補してきた。

「やっぱお前さんが出てくるか。けど訓練校時代の俺と思うなや」
「そこまで叩いてみせるってことは、少しはできるようになったのかしらね」
「叩きのめす!」

 一言だけ叩きつけて親指を地面へ突き出す直人。少年時代から変わらない宣戦布告のスタイル。それをまるで聞き分けのない子供を見るような目で見ながら、ゆっくりと獲物である十文字槍を手にするミリア。一触即発の空気は、訓練校時代より厳しく刺すように二人を包み込む。

「弱い者ほど吠えたがる……どうやら、まだまだ躾たりないようね」
「行くぞオラァッ!」
「来なさい、差を見せてあげる」

 その火蓋は、直人が背中に担いだ大剣に手をかけながら駆け出すことで切られた。まず一合。直人の振り下ろす一撃をミリアは刃で流すとそのまま顔面を突く。だがその程度は彼も想定済みか、流された勢いで転がりながら片手で受身をとると倒れたまま空いた手で拳銃を取り出し、すぐさま三発ほど発泡。しかし、受身をとったことで間合いが生まれたためか、ミリアも横っ飛びで魔力弾をかわす。

「すぁああああああああああああっ!」

 するといつの間にか立ち上がった直人が、剣を引きずりながらミリア目掛けて再びダッシュする。もはや超低空飛行と言ってもいいくらいだが、飛行魔法を展開して加速する。

「いつの間に……」
「俺だって少しは成長したんやで。通り一辺倒の戦術ばっか使うかいな」
「そう、でもまだ甘い!」

 しかしその程度の勝手を許す彼女ではない。振り上げて構え直そうとする直人の剣を槍の穂先で弾くと、そのまま首筋に刃を突きつけた。

「これ以上やるなら、無傷じゃすまないわよ?」
「生憎、お前さん相手に無血で勝てるなんてハナっから考えてへんねん」

 すると直人は突きつけられた刃を左拳で弾く。が、すぐさま鳩尾に彼女の美脚が鞭のごとく叩き込まれる。

「しつけの足りない駄犬はさらに扱かないとダメみたいね」
「カハッ……犬扱い?昇格したな、前は生ゴミ呼ばわりされてただけに」
「無駄口だけは一人前ね」

 今度は顔面を逆の脚で蹴り飛ばされる。普通なら脳震盪が起きてもおかしくない威力だが、それでも彼は立ち上がる。するといつの間に手元に戻したのか、弾かれたはずの剣が右手にあった。

「目に物見せたるでゴルァ!」
「吠えるだけなら虫にもできるのよ。そんなボロボロの体でこれ以上何ができるのかしら」
「これ見てから言えや!」

 そう叫んだ直人は剣を地面に突き刺し、まるでバイクのスロットルを回すかのように拳を捻る。直人の全身から吹き出したオーラのようなものが剣に吸い込まれ、突き刺した地点を中心に魔法陣が描かれた。何かしらを察したミリアが剣を弾きにかかるが、不可視のバリアのようなものに槍が弾かれる。

「くっ!?何これ!?まあいいわ、止めれないなら……」
「喰らえ炎蛇の牙!フレイムタワァァァアアアッ!」

 剣から吹き上げた炎が蛇の如くうねって彼女を襲う。しかしその程度は想定済みか、穂先に魔力を集中させてバリアを展開して凌ぐ。

「とりあえず耐えれないことはないわね……ちょっと苦しいけど、でもこの状況なら撃ってる向こうの方が消耗する」

 しばらくしてから炎が収まると、すぐ動けるようにバリアを解除した。しかしその瞬間、彼女の首筋に金属の感触が突きつけられた。

「な……」
「一瞬気を抜いたな?それが敗因や」

 その正体は直人の持つリボルバーだった。声を聞いた瞬間全身が震え上がる。

「だとしても、いったいいつ?」
「もしこれがかわされることがわかっていれば、どこに避けるかは見てから追っかけたらええ。それに今回は防がなあかん技にしたんや。攻撃側と防御側にラグがあるなら、そのラグの間にこれくらいできるわな」
「でもラグなんてコンマ何秒のものなのに……まさかその間に?」

 平然と直人は言うが、ミリアはそれがどれほどのことなのかを想像するだけで背筋が更なる驚異で震える。それと同時に全身の力が抜けて腰から体を崩し、自らの獲物を手放した。

「……この場は、私の負けね……」
「きっちり勝たしてもろたわ。ほな肩貸せ」

 互いにデバイスを待機状態に戻し、すっかり腰が抜けたミリアを担ぐ直人であった。またその後、先輩たちと一対一を行ったものの、全員に叩き潰されたのはまた別の話。



 ほぼ同時刻。グレアムの執務室にフレディはいた。

「一体何の用事かな?貴様が私を自分から訪ねてくるとは」
「レジアスが俺に頼んできた例のブツだよ。あれにも闇の書同様、人の手が加えられていることがわかった」
「なんだそんなことか……」
「ああ、それだけなら俺もどうでもいい。問題は、そんなことができる人間が今も生きてるってことだ。このまま放っておけば、俺の名に関わる」

 フレディは無表情のまま淡々と語る。

「で、それが誰だか調べろというのか?」
「いや、それも調べがついた。問題はそいつが『暁』にいるってことだ」
「何だと……」
「この男について情報があるならよこせ。俺のやり口は知ってるだろ?」

 彼が出してきた画像には、手入れがされていない長髪の科学者が写っていた。それはかつて、竜二が働いていた楽器屋の店長のものと酷似していた。

「知ってどうするつもりだ?」
「何故そんなものに手を出したのか問い質す。だがこいつも科学者だ。そんな大したことじゃないなら無傷でほうっておいてやるが、もしそうでないなら……わかるだろ?」

 そう言って獰猛な笑みを浮かべるフレディ。常人なら一目見ただけで震え上がって意識を失いかねない恐怖を与えるが、数々の伝説を打ち立てて来た歴戦の勇士には通じない。

「この男なら今、竜二君の故郷で楽器屋をしている。表立った動きはないと、現地に派遣した者から定期報告を受けている」
「リンディ達以外にもやってんのか、ご苦労なことだ」
「言っておくが、この男を殺すと面倒なことになるぞ。彼は管理局側の人間なのだからな」
「ほう、スパイでもやってやがるのか。なら殺しはしねぇ。どうするかは俺が決めるがな」

 そう言い残すと、フレディはグレアムから離れる。そして執務室を出る前に振り返った。

「そういや、竜二って奴はどうしてんのかねぇ。あれから全く音沙汰がないようだが」
「彼に関しては私にもわからん。ただ死んではいないとだけ聞いている」
「そうかい……クククッ、管理局入りした直人といい、楽しみな跳ねっ返りが増えて俺は嬉しいよ。邪魔したな」 
 

 
後書き
 直人君、ちょっとは成長したようです。そして奴は出さないって言ったのに出てきてしまった。話作るのに便利なんだけど扱いに困るクソ野郎、誰かどうにかしろよもう! 
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