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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第十九話 風紀委員その六

「だから八条荘に入るのよ」
「あえてですね」
「両親の許可は得ているわ。お兄様からも」
 今度はその家族構成も言ってくれた、何か何でも喋ってくれる人なのでわかりやすいと言えばわかりやすい。
「ちゃんとね」
「そうですか」
「そして学校にも」
 先輩はさらに言う。
「許可は得ているわ」
「あの、何か」
「何かとは」
「先輩は本当に真面目な人なんですね」
 僕は井上さんとお話をしていてしみじみと思った。
「何でも」
「真面目で悪いのかしら」
「いえ、それは」
「そうね、真面目で悪いことはないわ」
 その真面目な口調で僕に言うのだった。
「だから誰にもとかく言われる筋合いはないわ」
「それはそうですね」
「そして貴方が真面目に学生生活を送っているのか」
 まさにだ、そのことをというのだ。
「私は見るのよ」
「だから八条荘にもですね」
「入るのよ。わかったわね」
「わかりました、それじゃあ」
「それじゃあですね」
「今日から入居させてもらうわ」
「畑中さんにもお話が済んでいるのなら」
 それならだった、管理人とはいっても実質的に全て畑中さんにお任せしている僕もだ。特に言うことはなくて。
 それでだ、僕も言うのだった。
「今夜入居祝いの晩御飯になりますので」
「入居祝いのか」
「はい、パーティーです」
 それを開くというのだ。
「パーティーをしてもいいですよね」
「構わない」
 硬質のその声でだ、井上さんは答えてくれた。
「パーティーは好きだ」
「ならいいですけれど」
「私がそうしたことを嫌いだと思うか」
「実は」
 とても真面目な人だからだ、パーティーみたいな賑やかなことはお嫌いだと思った。それで断られるかもとも思ったがだ。
 それでもだ、井上さんは。
「そうでもないんですね」
「好きだ、ただしだ」
「ただし、ですね」
「パーティーは真面目にするべきだ」
 このことは絶対だというのだ。
「賑やかにすることもいいが」
「真面目に、ですね」
「そうだ、そうするべきと考えている」
 そのパーティーもというのだ。
 そしてだ、井上さんはここでだ。顔を赤くさせて視線と顔を僕だけでなく宮下君からも逸らしてそのうえでこう言った。
「ましてや。男女がだ」
「あの、それって」
「口にしたくないが」
「そうしたパーティーはですか」
「絶対にあってはならない」
 どうしたパーティーかはわかった、僕も井上君も。僕達はそうしたことはあまりだった。
「それはないな」
「そんなのないですから」 
 絶対にだとだ、僕もそのことは保障した。
「うちのアパートにそうした人いないですから」
「だといいがな」 
 鋭い目でだ、僕を見据えて言って来るのが怖かった。
「だが、わかるな」
「はい、若しあれば」
「その時は」
「覚悟することだ」
 その全身に氷の様な、それでいて燃え盛る炎を宿らせて言って来る。鬼の怖さはこうしたものかと心の中で思った。 
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