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ボスとジョルノの幻想訪問記

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アリス・マーガトロイドの秘密 その①

ボスとジョルノの幻想訪問記12

あらすじ

 レミリアとフランドールの強襲によって壊滅に追い込まれた永遠亭!
 よって記憶を失ったドッピオが消滅し、再び死のサイクルへ戻ったディアボロ!
 寝る姫様!
 そして、魔法の森に佇む奇怪な民家にいたのは・・・・・・!?

*   *   *

 ボスとジョルノの幻想訪問記 第12話

 アリス・マーガトロイドの秘密①

「さぁ、どうぞ上がってください。まともなもてなしは出来ないけど、外よりかは安全だと思います」

 突然の訪問であるにも関わらず、初対面でしかも怪しげな格好をした俺を快く出迎えてくれた彼女の名前はアリス・マーガトロイドと言うらしい。

「ええ、覚えづらい名前とよく言われるんですけど。ええと、あなたの名前は聞かせてもらえますか?」

 彼女は廊下を歩きながら苦笑していった。見た感じでは普通の家である。少し古いが、暖房も入っているようで家の中はほんのり暖かかった。

「・・・・・・何と呼んでもらっても構わないが・・・・・・」

 口を濁してしまった。既に組織に属していない俺が身分を隠す必要はないのだが『クセ』だった。未だに見知らぬ人間に素性を明かすことにはかなりの抵抗がある。

「そうですか? うーん、でもぱっと思いつきませんが・・・・・・」

「では、・・・・・・適当に『ボス』と呼んでくれ」

 言った後で「しまった」と思ったが今更取り消せるはずがない。不審がられないだろうか、と思っていると。

「『ボス』? 何面の?」

「ん?」

「あ、いや。何でもありません」

 今彼女が何と聞いたのかはよく分からないが、どうやら承諾したようだ。危ないところだった。

(しかし、この他人に対する無干渉ぶり・・・・・・。もしかすると、俺のような客は珍しくないのかもしれん。こんな場所に住んでいるからだろうな)

 そのまま部屋に通されると、俺は目を伺った。そして全身が強ばる。動機が激しくなり、息が上がる。さらには汗が噴き出す。
 アリスが通した部屋には夥しい数の――『幼女』がいた。

「・・・・・・ッ!? な、何だこれはッ!! こ、こんな、こんな数ッ!!」

 今まで見たこともない数――――ざっと数えただけで20人はいるだろう。大きくても膝丈程度しかないが、全員『幼女』の見た目で動いていた。俺にとっては地獄絵図以外の何物でもない。
 『死』の象徴なのだから。

「うおおおおおおおおおおッ!! こ、こいつらはッ! マズイ!!」

「ちょ、ボス!? 落ち着いてください!」

 アリスが制するが俺はそんな言葉に聞く耳は持たない。腰を抜かし、ただただ叫ぶしかなかった。過去に一度も無かった・・・・・・こんなに大勢の『幼女』が出現することなんて、一度もだッ!! おそらくは到底予想も出来ないような死が発生するに違いない。
 そう、それこそ『生き地獄』を永遠に見せられるはずだ。
 死にそうで死なない一線をふらふらと綱渡りするように、いたぶり、蔑み、そして殺す。

「や、やめろおおおおおお!! い、嫌だ・・・・・・『予知』、予知が・・・・・・出来ないッ・・・・・・!? お、やめろッ、側に来ないでくれ・・・・・・」

 完全に気が狂ってしまっていた。ただ恐怖を目の前にした子供のように叫ぶしかなかった。動揺が最高潮に達し、呼吸もままなら無い。もちろん、そんな精神状況下で上手くスタンドが扱えるはずもなく、『墓碑銘(エピタフ)』は全く未来を移しこめはしなかった。

「お、俺のそばに近寄るなアアァァァーーーーーーーッ!!」

「ボス!!」

 と、俺の右頬に鋭い衝撃が走った。

「――――はっ!?」

 突然の出来事に頭が混乱する。なぜ、なぜ俺の頬に衝撃が走ったんだ? いや、それよりも俺のことを「ボス」と呼ぶのは・・・・・・一体誰なんだ・・・・・・? そして、この全身にかかる重さは、暖かさは・・・・・・一体。

「――――落ち着いてください。あなたの過去に何があったかは分かりませんが、この子たちは大丈夫です」

「――――あ」

 アリス・マーガトロイドは我を完全に失った俺を優しく抱き、宥めるように優しく言った。その言葉で視界が再び色を取り戻し、安定していく。

「落ち着きましたか?」

 アリスは恥ずかしそうにしながらも真っ直ぐ俺の目を見て言う。もちろん、俺は「あ、あぁ・・・・・・」とそら言のように頷くだけだった。

「えっと、何かトラウマがあるようですね・・・・・・。あなたのことは詳しくは知りませんが、この子たちは安全です。ですが、何も知らなかったとは言え非常にあなたを動揺させてしまったことを深く謝ります。ごめんなさい」

 俺は言葉を失った。それは俺が恐怖によって何も言えなかったからではない。このとき俺はアリスが何を言っているのかはほとんど理解できていなかったが、一つだけ分かった。
 彼女の『優しさ』が心で理解できた。
 しばらく呆然としていた俺の頬に何かが伝い、落ちていく。今まで一度も感じたことのない感覚――――。

「何か辛いことがあったんでしょう・・・・・・。思い起こさせた私が言うのも間違っているかもしれませんが、もう安全ですよ、ボス」

 そのまま俺は――彼女の腕の中で再び子供のように叫んでしまった。

*   *   *

「・・・・・・すまない。取り乱してしまって・・・・・・」

 落ち着いた俺は椅子に座って彼女と話していた。

「いえ、重ねて言うようですが私も悪かったです」

 そう言う彼女の言葉は少々小恥ずかしいものだった。

(・・・・・・まさか、こんな女性がこの世に存在するとはな・・・・・・)

「あの子たちも深く反省しています。急に驚かせてしまってごめんなさいってね」

 今はこの場にアリスの言う『幼女』たちの姿は見当たらない。アリスと話していた風は無かったが。

「出来た子供たちだな・・・・・・ここは孤児院のようなところか? こんな辺鄙なところで・・・・・・他の手伝いとかはいないのか?」

「えっ??」

 と、アリスは目を丸くした。何かまずいことでも聞いてしまったのか?

「えっと、子供に見えますか? あの子たちが」

「は・・・・・・? いや、どこからどうみても人間の子供だろう」

「・・・・・・そ、そっか」

 と、アリスは嬉しそうな顔をする。そして衝撃的なことを述べた。

「彼女たちは人間じゃあ無いですよ」

「・・・・・・そ、そうか」

 なるほど、妖怪なのか。と、俺は一人で納得していた。ん? 妖怪ならなおさらヤバくないか・・・・・・?

「私の人形です。自慢のね」

「そうか、人形か・・・・・・え?」

 ニンギョウ・・・・・・? ニンギョウって人形のことか? あれが?

「はい! 実はみーんな私が一人一人手作りで作った人形ですよ」

 アリスは鼻を高くして言った。

「・・・・・・いや、でも動いていたぞ? ロボットじゃあないのか?」

「あぁ、それはですね・・・・・・」

 と、アリスは両腕をテーブルの上に出して指を妙な動きで動かした。すると、がちゃりと廊下の扉が開きメイド服のようなものを着た先ほどの『幼女』が一人だけ入ってきた。

「・・・・・・っ!」

 少し動揺してしまうが、大丈夫だと心に言い聞かせて自分を押さえる。
 その間に『幼女』はとてててて、と歩きこちらに近寄ってきた。

「シャンハーイ」

「うおっ」

 と、突然声をあげたと思うとジャンプして――――そのまま宙に浮かんだままになる。

「・・・・・・!? これは、一体??」

「えっと、実は私が糸で操ってるんですよ。目を凝らせば細ーい糸が見えるはずです」

 彼女の言うとおりに『幼女』の周りを注意深く見ると発見する。微妙に光っている細い線が確かに延びており、それはアリスの指先まで繋がっていた。

「キヅカナイナンテ、バカジャネーノ?」

「しゃ、喋ったぞ!?」

「あはは・・・・・・それが私の人形です。そして、同時に私の能力です」

 『人形を操る程度の能力』と彼女は説明した。

 俺は再びその『幼女』をまじまじと眺めると・・・・・・確かに体の所々に縫い目が見られるのが分かった。しかし、ぱっと見ではほとんど人間と差し支えがない。表情も固定されていないのも、人間味を帯びている。

「その子は『上海人形』。首を吊っているのが『蓬莱人形』。踊りと歌が好きなのが『西班牙人形』。槍術が得意なのが『仏蘭人形』。小さいのから大きいのまでが『露西亜人形』。それから・・・・・・」

 彼女は楽しそうに人形についての紹介を始めた。彼女のせりふと共にどこからともなく「ホウラーイ」や「オルレアーン」などと言いながら人形たちが現れる。一度は恐れていた『幼女』だが、人形と分かれば何故か恐怖心も沸かなくなっていた。

「・・・・・・本当に人形が大好きなんだな・・・・・・」

 がやがやと騒ぐ人形たちに囲まれて彼女は幸せそうに頷いた。

 がたんっ

「む、二階からか・・・・・・? 何かが倒れるような音が・・・・・・」

 おそらく二階からだろう。するとアリスは「あっ・・・・・・」と声をあげて「また私の人形が喧嘩してるみたいね・・・・・・」と呟いた。
 そんなアリスを見てふと笑いが出てきてしまった。

「ふっ・・・・・・賑やかだな、ここは」

「あら、ボスは賑やかなのは嫌い?」

 本当は静かな環境が好きなのだが俺はそう言う気にもなれず――。

「悪くないな」

 本心からそう言った。

*   *   *

 場面は移り変わり、ここは永遠亭。

「・・・・・・」

 心を破壊された鈴仙・優曇華院・イナバは呆然と病室の床にへたり込んだままだった。
 すると、彼女の膝に水があたる感覚がする。何だ、と思い足下を見ると水色の液体がそこにはあった。それはどこからか流れ出ており、出所を確認すると『壁』だった。

「・・・・・・あ」

 鈴仙はおもむろに立ち上がり、病室の戸棚から大きめの瓶を取り出す。そして、無意識のうちに瓶のふたを開けてその液体を手で掬い取って瓶の中に入れた。
 彼女はほぼ無意識の行動だったが、それは正しかった。なぜなら『もしピンチのときに』と永琳が何度も何度も鈴仙に教えていた緊急時の対策だからである。

「――――優曇華、もし私が動けないときは『瓶』で私を詰めるのよ。入れ物だったら何でもいい。不死である私が戦力外になるとき、それはきっと何かに捕まったり全く動けない状況になるときよ。そうなった場合、私はとある薬を体内で作り出して自分に服用するわ」

 その薬とは『服用した者を液体に変える薬』だった。幻想郷が管轄ではない死神と共同で開発した薬である。永琳はそれを錠剤として体内で服用できるようにし、その死神は持っている武器にその効果を付与したという。
 ちなみに、もう一つ。輝夜の能力を利用して生み出した薬もあると言うが、鈴仙はそこまでは聞かされていない。
 永琳は鈴仙にそう教え込んだ。数十年以上前の話である。

「師匠・・・・・・師匠・・・・・・」

 鈴仙はうわ言のように繰り返し、壁から溢れ出る液体を瓶に詰めていった。

 13話へ続く――――!!

*   *   *

 後書き

 今回はここまでです。短いですが申し訳ない。
 ちなみに、永琳が使った薬の正体が分かる方、いらっしゃったら嬉しいですね。まぁ、彼は「作ったのは私ヨ」とか言いそうですが。

 あと、ボスとアリスがイチャコラしてます。パルスィ呼ぶぞ。

 というわけで12話が終わりです。まぁ、導入のような話ですから、短いのもしょうがないですね。

 では、13話で。 
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