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俺って問題児扱いなの?

作者:ぷる之介
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01 箱庭に集った四人の人外

 

 どうも、さっきぶりだな。
俺は今、現在進行形で上空4000メートルから"落ちている"。いや、別にふざけてはいないからな。

「ん?」

 俺は景色を見てみようとふと周りを見渡すと、あら不思議! なんと俺の周りには男の子が一人、女の子が二人が同じように落ちているのだ。

 なんか一癖も二癖もありそうな雰囲気だが、あの問題児(ロキ)よりかはマシだな。
あいつはマジで悪態神だからな。


 そんなことを思いながら、俺たち四人と一匹は森林に囲まれている湖ぽいところに水しぶきを上げて着水した。

 俺たちはそれぞれ自力で這い上がった後、口々に文句を言い始める。

「信じられないわ、いきなり空に放り出すなんて。下手をすれば地面に当たって即死よ!」

「場合によっちゃゲームオーバーコースだぜ、これ」

「……」

 上から『お嬢様』『俺問題児!』『クール(または無関心)』なオーラがにじみ出ている少年少女たち。
だけど、なんでコイツ等が怒っているのかに俺は疑問を覚えた。

「(たかが上空から落とされただけじゃん)」

 俺は心の中でそう思いながら簡単な魔法で服を一瞬で乾かし、その場に座って三人の様子をうかがってみた。

「で、誰だよお前ら?」

「それはこちらのセリフよ、目つきの悪い学生君?」

 お互い腰に手を置いて、一歩も譲らないように言い合う。

「……一応確認しとくが、もしかしてお前らにも変な手紙がきたのか?」

「そうだけど、その『お前』って呼び方を訂正してくれない? 私には"久遠 飛鳥(くどう あすか)"っていう名前があるの。以後気を付けて。
……それで、そこで猫を抱きかかえている貴女は?」

「……"春日部 耀(かすかべ よう)"。以下同文」

「そう、よろしくね春日部さん。それで、野蛮で凶暴そうな貴方は?」

 なるほど、お嬢様オーラな子が"久遠 飛鳥"でクールぽい子が"春日部 耀"か。
よし、覚えたぞ。

「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な"逆廻 十六夜(さかまき いざよい)"です。
粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様?」

「……取扱い説明書があるなら考えておいてあげるわ」

「そうかい。だったら今度作っておいてやるから覚悟しとけよ、お嬢様」

 かかかっと最後に笑ったあと、十六夜は俺の方を見てきた。

なんでこっち見てくんだよ……って、俺まだここに来て一言も喋ってなかったな。
三人(十六夜と久遠だけだが)の話を聞いては色々と思ってたから、つい俺も話していた気になっていたぜ。

「んで、そこの面白い髪色をしているお前は誰だ?」

「誰が面白い髪色だクソ餓鬼。これは地毛だ」

 まったく年上に向かっていきなり何つーことを言いやがる。こちとらこの髪色が少しコンプレックスになってんだよ。

 つーか何で前が白髪で後ろが茶髪なんだよ。改めて思うが、前後の時間のバランスがおかしいだろ。
なんで前の方が老けてんだよ、若白髪の領域を超えてるぞ。

「オーデ……"芳野 創生(よしの そうせい)"だ。少し特殊だが、分類上"人間"だ」

 あっぶね……! 髪色(コンプレックス)について考えてたせいで、危うくオーディンと名乗るところだったぜ。
もしこいつらが転生前の俺と同じように2000年代の日本人だったら、名前(オーディン)ぐらい知っているかもしれないからな。

 ……いや、絶対に知っているか。
特に高校生ぐらいだったらゲームとかで一度は聞いたことがあるだろうからな。

「へぇー、中々興味深そうな自己紹介だな」

「あら奇遇ね。私も同じことを思ってたわ」

「……」

 すると何故だろうか、十六夜と久遠が面白そうな目で俺を見てきた。
それに比べ春日部は相も変わらずクール……いや、これは無関心と言うべきか。



 ……つーか、いつまで隠れている(・・・・・・・・・)つもりなんだあの『ウサギ』は?
気配も消せてないどころか、木の後ろからウサ耳がチラチラ見えてんじゃねぇか。隠れる気がないだろ。
 こいつらも気づいているみたいだし、そろそろ出て来てもらいたいのだが。

「別に面白くとも何ともないぜ俺は。それよりも、これからどうするつもりだ?
手紙を寄越したくせに出迎えの一つも来ないじゃねーか」

「そうね、これじゃ何も分からずじまいだわ」

「じゃあそこに『隠れている奴』にでも話を聞いてみるか」

 そう言い、十六夜は一本の木の方へと目を向ける。

その時、ウサ耳がビクッ! となったのは言うまでもない。

「あら、気づいてたの?」

「当然、かくれんぼなら負けなしだぜ。そっちの二人も気づいてたんだろ?」

「……風上に立たれたら嫌でもわかる」

「隠れるも何も、さっきからずっと見えてたろ」

 主にウサ耳とか。

「へぇ、面白いなお前ら」

 十六夜は軽薄そうに笑いながら、俺と春日部に好戦的な目を向けてくる。

ちなみに創生の場合、長年の戦場で身についた直観により、たとえ目視できない者であっても生きている限り相手の情報を少なからず得ることができる。

「で、早く出てこいよ。じゃないと痛い目にあうぜ?」

 十六夜がそう言うと、木の後ろからウサ耳を生やした美女がゆっくりと現れた。

「や、やだなぁ御四人様。そんな飢えた狼さんみたいに怖い顔で見られると私、黒ウサギは死んじゃいますよ?
ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いていただけたらうれしいでございますヨ?」

「断る」

「却下」

「お断りします」

「10文字以内で答えるなら、聞いてやってもいい」

「あっは、取りつくシマもございませんね♪」

 両手を万歳して降参のポーズをとる黒ウサギと名乗った美女。


すると何を思ったのか、春日部は黒ウサギの背後に行き、ウサギの象徴ともいえる長い耳を掴んだ。

「ちょ、ちょっとお待ちを! いきなり初対面で黒ウサギの素敵耳を引き抜こうとするのは、いったいどうゆう了見ですかぁぁぁ!!!」

「好奇心のなせる業」

「自由にもほどがあります!」

「へぇ、このウサ耳って本物なのか?」

「私も触ってみようかしら」

 春日部の悪態から脱出して安心したのもつかの間、黒ウサギの耳は十六夜と久遠によって再び引っ張られてしまった。

「(なんつーか……餓鬼だな)」

 そんな光景を見ながら、俺は一人そう思った。













◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

~30分後


「はぁはぁ……あ、ありえなのですよ。学級崩壊とはきっとこのような状況を言うのに違いないのです……」

 黒ウサギの耳を引っ張り続けて30分後、三人は飽きたらしく黒ウサギの耳を離し、傍に合った岩に座り込んだ。
 とうの黒ウサギとはいうと、三人の悪態により疲れ切っていて地に手を置いて呼吸を整えていた。

「というかあなた! なんで助けてくれなかったのですか!? 何度も助けを求めたじゃないですか!」

 すると黒ウサギはいきなり立ち上がり、俺にいちゃもんをつけてきた。

「助けるも何も、何度もこちらを見てくるだけで何も言ってこなかったじゃん」

「だから目で訴えてたんじゃないですか!」

「知るかそんなもん。口で言え、口で」

「一番マシだと思っていたのに実は四人の中で一番ゲスな人でしたよこの方!?」

 それはお前の勝手な感想であって、俺が四人の中で最もマシな奴とは限らないだろ。
つーか、三人の中に混ざっていなかっただけでもマシな方じゃね?

「いいから話を進めろよ」

「うぅ……わかりました」

 十六夜の言葉に少し涙目になりながら、黒ウサギは返事をした。
そして気を取り直した黒ウサギは、咳払いをして両手を広げて言った。

「ようこそ皆様、『箱庭』の世界へ! 我々は御四人様に『ギフトゲーム』の参加資格をプレゼントしよう思いまして、この世界にご招待しました!」

「「「「ギフトゲーム?」」」」

「YES! 既にお気づきかもしれませんが、御四人様は普通の人間ではありません」

 だろうな。上空4000メートルから落とされて生きている時点で、もう普通の人間じゃないのは決まっている。

「(つまり十六夜も久遠も春日部も、俺とは違えど特異な能力を持っているわけか)」

 そう思いながら、再度三人を観察する。

俺とは違い三人から『魔力』を感じないところからすると、先ず魔法使いじゃないのは明白だろう。
だが十六夜から感じるエネルギーは、少し魔力のそれと似たようなものを感じるが、魔力とは違う……まぁ一言で言うと『異質』だな。実に興味深いことだが、追求するのは後々でいいか。

 そして俺は再び黒ウサギの話に耳を傾ける。

「皆様の持つ特異な力は、さまざまな修羅神仏・悪魔・精霊・星から与えられた『恩恵(ギフト)』。
ギフトゲームとはその"恩恵"を駆使して、あるいは賭けて競い合うゲームのこと!
この箱庭はそのステージとして作られたものなのですよ!」

 大げさに身体で表現しながら、黒ウサギは言い切る。
その中で疑問を感じた者が手を上げて黒ウサギに質問をし始めた。

 最初に手を上げた久遠は、自分の能力を賭けなければならないのかについて。
春日部は説明にの中であった『主催者』についてだった。

 その問いに黒ウサギは丁寧に説明して、最後に『コミュニティ』と呼ばれるグループに所属しなければならないことを説明した。



「―――と、以上が箱庭で生活するにあたっての必要最低限の説明です。
他に質問がある方はいらっしゃいますか?」

「「俺だ」」

 俺と十六夜は同時に手を上げた。

「なんだ創生もか? だったら先に言ってもいいぜ」

「別にお前が言っていいぞ。たぶん同じ(・・)ことだからな」

「……じゃあ、一緒に言うか?」

「……のった」

 俺と十六夜は黒ウサギの方へと顔を向けた。

「えっと、どんな質問でしょうか? できれば別々に言ってほしいのですが」

「なに、いたって簡単な質問だぜ黒ウサギ」

「つーかそれ以外に興味がない」

「……はい?」

 頭に?のマークを見せながらこちらを見てくる黒ウサギに、俺と十六夜は不敵な笑みをみせながら、全く同時に、少しのブレもなく言った。

「「―――この世界は『面白い』か?」」

 その言葉と共に久遠と春日部も黒ウサギを見据えた。

そして黒ウサギは少し間をあけた後、笑みを見せながら自信満々にその質問の回答を言った。

「――YES! 『ギフトゲーム』は人を超えた者が参加できる神魔の遊戯。
箱庭の世界は外界よりも格段に面白いと、黒ウサギは保証いたします♪」

 その答えに満足した俺と十六夜は溢れ出る歓喜を堪えることができず、大声で笑った。




 


 









 
















 
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