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俺って問題児扱いなの?

作者:ぷる之介
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00 えっ、俺って問題児だったの?

「……暇だ」

 青い空の下、広大に広がり続ける草原の上で、一人の青年がそう呟いた。

「……暇だ」

 再び同じことを呟く。

そんな青年の眼には、今の生活(平和)に満足している反面、何にも関心がないようにヤル気のなさがにじみ出ていた。

 ……なぜ青年がこのような状態になったのか。それは少し時をさかのぼることになる。


 それは今から一万年も前のこと――

彼はある世界で事故死と言う形で生を終えた。
いや、なんで初っ端から死んでんだよと思うだろうが、それが彼にとってはすべての始まりだった。
なんと彼の死は、実は神によるもので、その理由は『寝ぼけて殺してしまった』という、とんでもない理由だったのだ。
そこで神は青年に罪滅ぼしということで、別世界へと『転生』させようと話を持ちかけた。
無論、青年はその話に乗った。じゃないと今の彼は存在してない。

 しかし彼が転生した場所は元の世界ではなく、『魔法』のある世界だった。
正確にいうと、『魔法』が生まれる前の人類が生まれて間もないサバイバルな世界だ。

 電気もない、ガスもない、2000年代の日本で生きていた彼にとってこの世界は過酷な世界だった。
しかし青年はめげなかった。
 苦しいながらも、辛いながらも、青年は必至に生きて生き抜いて、そしてある特別な力とであった。
それが彼にとって転生以来初めての歓喜に溺れた瞬間だった。

 この世界は『魔法』が使える。だが今はその『魔法』が生まれていない世界だ。
じゃあ誰がこの特別な力――『魔法』を創ればいいんだ?

 魔法と出会った青年は、ふとそんなことを考えた。そして結論は至った。
――俺が、魔法を創る真祖となればいいのだ、と。

 そう心に決心した青年は、早速実行へと移した。
最初は簡単な魔法、たとえば火や水など五大元素しか操ったり創れたりしなかったが、後に青年はより強大な魔法を扱え創造するようになり、やがて魔法で『不老不死』を手に入れた。

 永劫に老いることなく、死ぬことのない肉体を手に入れた青年はさらに強力な力を手に入れ、やがて青年は自身の名を『オーディン』と改めた。
 それから人類が宗教と言う概念を持ち始めた時、彼はその強力な力を使って後に現れた魔法使いたちを一掃し、ついに魔法使いとして最強の地位『究極の魔法使い』と呼ばれるようになった。

 そんな青年に恐怖した人々は、青年を『神』のように敬い、そして彼を中心とした『神話』を創造した。
 『北欧神話』と語り継がれることになるそれは、またたく間に全世界と全魔法使いの間へと広まり、語り継がれていった。
 その間に世界の派遣を争う戦争が数多ったが、その度に青年は『究極の魔法使い』として、『最高神』として戦争を沈め、その支配力を強めていった。
 それにより世界は平和になり、誰もが彼を『神』として、『究極の魔法使い』として、『魔法使いの真祖』として敬うようになった

 ――そして、今に至る。



「……はぁ、暇だ」

 覇気のない声音で同じようにそう呟く青年、もとい『オーディン』。

「あ~、何かい同じこと言ったんだろ俺……たしか百年ぐらい前からずっと言っているような気がする」

 なんで『究極の魔法使い』『最高神』『魔法使いの真祖』『戦と死の神』と呼ばれている俺がこんなつまらない日々を送っているんだ?

 ……つーわけで、少し自己紹介させろ。暇つぶしも兼てな。あっ? さっき聞いたからもういいって?
だが断る。俺は自己紹介をするぜ。

 俺の名前は『オーディン』。この世界では『究極の魔法使い』『最高神』『魔法使いの真祖』『戦と死の神』とか呼ばれているが、まぁ種族はごく普通な『人間』だ。

 あっ、今『なんで人間』なの? とか思った奴がいるだろ?
なに、至極簡単で単純なことだよ。
 まず俺たち魔法使いっていうのは種族名じゃなく、言葉の通り『魔法を使える者』という意味で、魔法使いはみんな『人間』だ。
 だから俺は別に神様みたいな偉い存在ではない。ただこの世界で『一番強い』から、神様みたいに扱われているだけだ。

「まっ、そのおかげで暇なんだけどな」

 強大すぎる力は人を孤独にする――アニメとかでよくあったセリフだったけど、実際にその通りだ。
だーれも相手にしてくれない。みんな揃ってオーディン様オーディン様って……お前ら全員滅ぼすぞって言いたくなる。そしたらみんな慌てふためいて面白くなりそうだし。

 ……まっ、やらないけどな。
たとえどんなに暇でも、俺や人々が渇望した平和なんだから、そう簡単に壊してたまるかよってんだ。


「でも、暇なもんは暇だ。これは譲れない」

 清々しいほどの青い空を見ながら、俺はため息混じりで苦笑した。

「「あー、暇が売れたら人稼ぎできる自信があるわ(ね)」」

 ……今絶対に誰かとハモったわ。どうやら俺の他にも同じことを考えている奴がいるそうだな。
会ってみたい、そして話あいたい。そしたらこの暇すぎる現状も少しはマシになるはずだ。

「まっ、それもできるはずがないか」

 どこの誰かも知らないのに、探す方法がないからな。

「もう考えるのも疲れたし……ねよっ」

 最後に盛大なため息をして、俺は目を閉じて寝ようとした。







「……ん?」

 しかし、俺のその行動は"嬉しいことに"邪魔された。
なぜなら俺が目をつぶろうとした瞬間、空から一枚の『手紙』がひらひらと降ってきたからだ。

「手紙? なんでこの空間の中に?」

 今俺がいる空間はトールやロキといった部下の魔法使いから逃れるために作った、いわば俺だけの空間で、決して誰も入れることができない場所なのだ。
 故に、この空間内には外からの干渉が不可能なはずだ。

「……未知だ(Acta est fabula)

 どこぞのニートのようなことを言いながら、俺は空から降ってくる手紙を手に取った。
手紙にはご丁寧に『オーディン様』へと書いてあり、これが俺宛なのだということを再確認できた。

「くくくっ……久方ぶりのイベントの予感だぜ」

 口元を緩めながら、俺は手紙を開きその中身に記されてある文章を読んだ。






【悩み多し異才を持つ少年少女に告げる


 その才能を試すことを望むならば


 己の家族を 友人を 財産を 世界のすべてを捨て


 我ら"箱庭"に来られし】






「なんだこれ? 変な手紙だな。まぁ承けてやるけどよ」

 手紙を読んだ後少し胡散臭そうな気がしたが、俺はすぐに手紙の内容を承諾した。
どーせトールとかロキとかが上手くやってくれるだろうと思いながら、半ば投げやりに。

「んおっ!?」

 その瞬間、突如その手紙から眩い光が溢れだし、俺の視界を奪った。





そして――"俺達"は上空4000メートルという空中へと『投げ出された』

 

 



 
 


















 
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