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ルドガーinD×D (改)

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二十四話:ご利用は計画的にな

静まりかえる校舎、ここではつい先ほどまで悪魔陣営と教会陣営という、普通であれば決して交わることも、話合う事もない両者が会談を行っていた。
つまりは普通ではないことが起きたという事なのだ。

その普通でない事というのは教会において厳重に保管されていた聖剣エクスカリバーが聖書にも載る高名な堕天使、コカビエルに奪われたという事だった。
その奪還、または破壊の為に二人の聖剣使い、ゼノヴィア、紫藤イリナの両名がここ駒王町に派遣されたのだった。そして会談を開いた理由は今回の件で悪魔の介入を防ぐ為のものだ。

その時の言い分がここ駒王町の統治者であるリアス・グレモリーのプライドに触ったものの会談自体は特に問題もなく終わった。
エクスカリバーに恨みを持っている木場祐斗も若干の殺気を出しながらも、この町に復讐対象が居るのだから焦ることは無いと自分に言い聞かせて何とか耐えることに成功した。

会談が終わり、去り際にゼノヴィアがチラリとアーシア・アルジェントの方を意味あり気に見ていたがここで斬りかかればつい先ほどまで行っていた会談の意味がなくなると判断して何も言わずに立ち去っていった。

彼女は魔女であると聞いていたアーシアが悪魔にまで落ちているのを見て自らの手で断罪してやろうと考えたが、同時にリアス・グレモリーの眷属に手を出せばどうあがいても悪魔側の介入は避けられず、最悪の場合、堕天使と悪魔を同時に相手にしなくてはならなくなる可能性が出てくるとも考えてやめにしたのだ。

両者が手を組んでいないのは明らかではあるが、それは今現在の事実でしかない。
これから邪魔な自分達、聖剣使いを討つために手を結ぶ可能性も十分ある。
リアス・グレモリーの性格上は考えられないが、上から命令されれば動くしかない。

神に使える身として向かって来る者は全て断罪するつもりなので少々、数が増えても問題はないというのが彼女の本心ではあるが、今回の件はコカビエルという大物が控えているために慎重に動かなければならず、また頭では二人では戦力的に厳しいとも分かっていたので安易に敵を増やすような真似は愚策だと結論付けたのだ。要するに任務を最優先したのである。

そして、彼女達が去った後にまた一人、この場から去ろうとしている者がいた。


「待ちなさい、祐斗! はぐれになんてさせない……あなたは私の大切な『騎士』よ!」


木場祐斗である。彼はこの町にエクスカリバーを持った敵が潜伏していると聞いた時からグレモリー眷属を離れて復讐の為に動く算段だったのだ。
しかし、それを彼の主であるリアス・グレモリーが許すわけもなく、彼の手を掴んで必死に止める。

その様子に自分が本当に必要とされているのだと分かり、彼は若干の嬉しさと同時に重い罪悪感を抱く。しかし、今ここで止まってしまえば自分は二度とここを離れられなくなると思い、主の手を振りほどく。


「………それでも僕は、許せない」


それだけ言い残し、背を向ける。彼女達には本当に感謝している。
しかし、自分は“みんな”の為に復讐を果たさなければならないのだと。
そして、優しい彼等を巻き込むわけにはいかないと、そう考えて歩み始める。
すると、そこに自分以外の足音が聞こえてくる。

恐らくはまた彼等のうちの誰かが自分を止めに来たのだろうと思うが、足を止める気は彼には一切なかった。
むしろ、足を速めて振り切ろうと、それがダメならまた手を振り解けばいいとそう考えた。しかし、次の瞬間に起きた出来事は彼の予想を大きく超えていた。


「ふざけてんじゃねえよ!」

「イッセー!?」


自分の脳が大きく揺さぶられる、周りから悲鳴が聞こえる。
気づけば自分は地面に打ち付けられていて、それを怒りの形相をしたグレモリー眷属、
唯一の『兵士』―――兵藤一誠が見下ろしていた。

彼はそこで自分の頬に違和感を感じ、ようやく自分の現状を理解する。
ああ、自分は彼に殴られたのだと。そこまで理解して出て来た感情は殴られた怒りでも苦しみでもなかった。ただ純粋な疑問だった。なぜ、彼は自分のような人間の為にこうも怒っているのか。

分からないままにも彼は起き上がり再度、その場から立ち去ろうとした。
イッセーは自分の主の気持ちを蔑ろにした自分に怒って自分を殴ったのだろうと勝手に結論付けて歩き出そうとして―――再び殴られた。

今度は倒れこそはしなかったが、口の中に鉄臭い血の味が広がる。
本当になんでイッセーは怒っているのかと彼はますます分からなくなった。
そうして悩んでいる彼の耳にイッセーの言葉が飛び込んできた。


「おまえを見ているとな、ムカムカするんだよ!
 ひとりで世界中の不幸を背負ったような顔をしてんじゃねえ!」


そう言われたところで今の今まで全く出てこなかった怒りが木場の胸に湧き上がってくる。
何も辛い経験をしてきたことが無い彼がそんなことを言っているのが許せなかった。
まるで、自分の不幸を分かっているかのような口ぶりが許せなかった。


「君に……僕の何が分かるって言うんだい!?」


彼にこの気持ちなんて分かるわけがない。自分の事なんか何一つ分からない。
そんな気持ちを込めて木場は彼を殴り返した。
その拳を彼は避ける素振りすら見せずに自らの顔面で受け止める。

一切怯むことなく、再び怒りの形相で睨みつける。
彼もまた、木場に対して怒りを持っていた。
しかし、それは八つ当たりなどの子供のような怒りではない。
もっと、強く、もっと、優しい、怒りだった。
木場が自分達を頼ってくれないことに怒っていたのだ。

そしてイッセーの怒りは自分に対する怒りでもあった。木場にしてもルドガーにしても仲間である自分に頼ってくれない。それは自分が弱いからだと、彼は弱い自分に対しても怒りを抱いていたのだ。しかし、そのことに悩んでいた彼だが今は吹っ切れていた。
話さないのなら無理やりにでも話させてしまえばいいと。話さないこいつらが悪いのだと。
そして決めた。そっちがそうなら殴ってでも本音を言わせると。


「わかんねえ……わかんねえよ!
 おまえみたいに黙ってたら、何にもわかりっこねえだろうが!」


「何を言えと言うんだい!」


「かっこつけてんじゃねえ! 苦しいんなら苦しいって言えよ!
 つらいんならつらいって言えよ!  助けて欲しいなら助けて欲しいって言えよ!!
 俺達―――仲間だろうが!!」


再び、殴り飛ばされる木場。崩れ落ちながら木場はその時初めて彼の拳が痛いと思った。
肉体ではなく自分の心そのものを殴り飛ばされたのかのような痛みだった。
その痛みに……その優しさに木場は涙が止まらなかった。

今まで頼ってはいけないと、一人で立ち向かわなければならないとずっと思っていた……。
それを彼はふざけるなと殴り飛ばしてくれた。自分達を頼らないことに怒ってくれた。
そのことが堪らなく嬉しくて木場は泣いた。


「言え、“祐斗”! 俺に、俺達にして欲しいことは何だ! お前の本当の気持ちを言え!」


「………僕を…助けてくれないかい…?」


今までずっと隠してきた本音を祐斗は言った。本当は彼だって辛かったのだ。
ずっと復讐の為に生きて来た彼も本当は誰かに助けて欲しかった。
一人でいることなんて耐えられるはずがなかった。

そして、それを聞いたイッセーはニイッと笑い、倒れた彼に手を差し伸べた。
その笑みはやっと仲間が自分に本音を言ってくれた嬉しさからと、自分が一つだけ強くなれたような気がしたという嬉しさからだった。


「当たり前だろ!」


その手を祐斗は力強く握り返した。


「はあ……仕方ないわね……朱乃、あなたは今何か見たかしら?」

「いいえ、何も見ていませんよ。そう言う部長は?」

「私も何も見ていないし、聞いてもいないわ」


リアスはその様子を見て、溜息をつくと、直ぐに誰が見ても芝居だと分かる演技を始める。
その意思をくみ取って彼女の『女王』である朱乃も白々しい演技を始める。
本来なら『王』であるリアスは彼等がこれから行おうとしていることを止めなければならない。

下手すれば簡単に命が消えるとんでもないことに彼等は首を突っ込もうとしているからだ。
しかし、彼女は敢えて見て見ぬふりをすることに決めた。
それは、自分がどれだけ頑張っても引き出せなかった『騎士』の本音を引き出した、『兵士』に対する褒美であった。本音は危険なことはさせたくないがそれを我慢して彼女は柔らかな笑みを浮かべ彼等に聞こえないようにそっと呟く。


「全部終わったら、お仕置きね」






どうも、久しぶりにテンションが高いルドガー・ウィル・クルスニクです。
さっきから、口ずさむ証の歌が止まらない。何というか、色々と悩んでいたせいか知らないけど今現在の俺は吹っ切れている。

今ならリドウを見つけた瞬間にフルボッコに出来そうだ。そして気絶したリドウに無理やり血判を押させて二千万ガルドの借金を負わしてやろうというかなり素敵なアイデアが浮かんでいる。
冗談? いいえ、本気です。

まあ、そんな大金、急に借りようとしても借りられないから出来ないけど、結構マジで考えているのは本当だ。さて……どうやって、俺の積年の恨みを晴らしてやるか。
そんなことを考えながらお手製の買い物袋片手に道を歩いていく。
すると、何やら怪しいというか不憫というか……そんな感じの光景に鉢合わせた。


「えぇー……迷える子羊に恵みの手をー」

「どうか、天に代わって哀れな私達に救いの手をおおお!」


白いローブを身に纏い、何やら必死に募金活動をしている二人の女の子がいた。
一人は茶色の髪をツインテールにした活発そうな女の子。
そしてもう一人の方を見た時にあることに気づく。こいつ……メッシュ仲間だ!

青色の髪に緑のメッシュを入れた目つきの鋭い女の子を感動して見つめる。
すると、あちらもこちらにシンパシーを感じたのかこちらを向き俺のこだわりのメッシュを見つめてくる。そのまま、まるでにらみ合いでもしているかのように見つめあう俺達。
そして、どちらともなく声を掛けようと口を開いた時だった。


―――グウゥゥゥッ!


「うぅ……お腹減った」


ツインテールの子のお腹が凄まじい音で鳴った。
それを見てメッシュ仲間はため息をつく。
俺はその様子を見てプッと笑いが出そうになるのを堪える。

女性のお腹がなったのを笑うなんて失礼だからな。
……いや、むしろ笑ってもらった方が気持ちとしては楽か?
まあ、それはともかくだ。コホンと咳払いを一つして二人の注意をこちらに向ける。


「お腹が空いているなら、家に来ないか? 食事でもご馳走するよ」


あ、これは断じてナンパじゃないぞ。俺は黒歌一筋だ。
まあ……まだ、告白もしていないけどな。あっちも脈ありだとは思うけど……。





「んぐ、んぐ………うまい、なんてうまさだ!」

「うぅ……見ず知らずの人の優しさで涙が……やっぱり神は私達を見捨てなかったのよ!
 ああ、やっぱり人は愛で生きているのね!」


余程お腹が減っていたのか、凄い勢いで俺の作った料理を平らげていく二人。
何の料理かだって? トマト料理に決まっているだろ、何を今更。
因みに名前は移動中に聞いたが、ツインテールの子が紫藤イリナ。
メッシュ仲間がゼノヴィアと言うらしい。

どういうわけで募金をしてまでお金を集めなくてはならなくなったかは聞いていないけど、とにかくお金の大切さについては口を酸っぱくして言っておいた。
人生何が起こるかなんて分からないんだからな。

例えば、初出勤→痴漢冤罪→列車テロ→目が覚めたら高額負債者 なんて嵌めコンボも現実として起こるんだからな。……やっぱり、リドウはフルボッコにしないと気が済まないな。
俺の苦しみの一部でも味あわせてやる!

と、そんなことを考えていたらイリナが料理を喉に詰まらせたので水を渡してやる。
イリナはモゴモゴと恐らくはありがとうと言っていると思われる謎の音を出しながら水を飲む。そんな様子を見ていると何となしにエルもさらに髪が伸びたらこんな感じの髪形になるのかなと考える。………うん、どんなエルを想像してもやっぱりエルは天使だな。
ビバ☆ エルコン!


「ぷはぁ……ごちそうさま!」

「ごちそうさま、本当にうまかった」

「お粗末様でした」


お腹が膨れて安心したのかリラックスした雰囲気を出す二人。
イリナに至っては一眠りしそうなレベルだ。もう少し警戒した方が良いんじゃないのか。
酷いことなんてする気はないけど、俺も一応、男なんだぞ?
まあ、そんなこと言った方が逆に警戒されそうだから言わないけど。

そう思っていた所に携帯の着信音が響く。
俺は二人に一言、言ってから電話に出る。


『もしもし、ルドガー。今、大丈夫か?』

「ああ、イッセーか、どうしたんだ」


俺がイッセーと口にした瞬間にイリナが今にも眠りそうだった状態から覚醒して驚いた様子で俺の方を見て来る。……もしかして知り合いなのか。
そうだとしたら、イッセーの要件はイリナ達にあるな。


『なあ、今お前の家に誰かいないか?』

「紫藤イリナとゼノヴィアって子ならいるぞ」

『っ!? やっぱそうか、悪いけど今から俺達もお前の家に行っていいか?』

「ああ。それまで二人には待っていてもらうよ」

『すまねえ』


そう言って電話を切る。そこまでして二人からピリピリとした空気を感じて溜息を吐く。
多分、警戒しているんだろうな。二人はイッセーが悪魔であるという事を知っている人間だ。
しかも、悪魔にとっての敵である教会側の人間で間違いないだろうな。

……いやさ、どこをどう見ても教会に属している人間の服装なんだよな。しっかりと十字架を首からかけているし。それと、気づいていて敢えて何も言わなかったけど、二人が醸し出す空気は一般人のそれじゃない。イリナの方はまだ柔らかいけど、ゼノヴィアの出す空気は明らかに戦いを知っている人間のそれだ。


「……一つ質問していいか、ルドガー・ウィル・クルスニク。君は何者だ?」

「質問の割には随分と物騒だな」

「なっ!?」


俺のことを怪しんで恐らくは武器それも大剣と思われる包に手を置きながら聞いてくるゼノヴィア。それを俺は瞬間的に回り込みその手を軽く抑える。
そのことに驚いて驚愕の表情を浮かべるゼノヴィア。
イリナもそんな俺の動きを見て警戒心を高めて俺から距離を取る。
そんな二人に俺は優しく微笑みかけ、ゼノヴィアの手を離す。


「イッセーが来たら話すよ。どうせあいつも二人に用があるんだろうし。それと二人の身の安全は俺の誇りにかけて保障するよ」

「私達に信用しろと?」


まだ、俺の事を警戒した様子で口を開くゼノヴィア。
イリナもゼノヴィア程ではないが俺に対して警戒した様子だ。
……仕方ない、出来れば使いたくない方法だったけど、使うしかないか。

人の弱みに付け込むようなことは趣味じゃないけど別に悪い事をしようってわけじゃないから許してくれ。俺は息を大きく吸い込んで警戒した様子の二人に向けて口を開く。



「出て行ってもいいけど、その場合は食事代を払ってもらうぞ」



「「うっ!?」」


俺が食事代を請求すると、鬼、外道といった感じの視線を俺に送りながら席に座りなおす二人。別に払わせる気なんてないけどこういう事に使うのはいいよな?
俺もかつて通った道だ。だから、そんな目で見ないでくれ。
それにしても…やっぱり、お金は大切だな、うん。

 
 

 
後書き
テンションが戻ったルドガーさん。
次回からは久しぶりにギャグが書けそうです。 
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