dead or alive
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第四話 『合流』
前書き
久々の投稿です。前回の投稿からかなりの時間がたってしまったこと、お詫びいたします。さて、前回に引き続き、四話を書かせていただきました。楽しんで読んでいただけたらとても幸いです。それでは、dead or alive第四話をお楽しみください。
俺が、初めて谷川と話したのはいつだっただろうか?確か、体育の授業でペアになった時に初めて言葉を交わしたんだった。入学して1ヶ月。谷川は一度も俺に笑顔を見せたことはなかった。なんで今なんだよ。俺はもっと違う形でお前の笑った顔を見たかったのに。
俺は、教室にあったブルーシートを谷川の遺体にそっとかけると、音楽室への階段を一歩一歩踏みしめ始めた。
四階にたどり着くと、そこには今まで以上に緊迫した空気が流れている気がした。
「よし。あと少しだ。……だけど、さっきから連中の姿が全く無いな。脱出した人間がいたとしても、感染者の数がこんなにも少ないわけがない。嫌な予感がするな」
いつもは当たらない俺の予感は、この最悪の状況に限って当たってしまうのだった。
音楽室へ向かう廊下を曲がった俺の前に広がっていたのは、目を覆いたくなるような光景だった。
「な、なんだ……こりゃ……」
それは、獲物に襲いかかる軍隊アリのように音楽室の扉に群がる感染者たちの波だった。その数、ざっと30はいる。
「クソ……これじゃなかにはいれない……」
すると、その波のなかなにいた数人が俺に気づきこっちに向かってきた。
「ちょっ……冗談だろ!?」
とっさに俺は音楽室の隣の化学室に逃げ込み、扉に鍵をかけた。なんとなくそれでは不十分かと思い、扉の隣の薬品棚を倒し、バリケードにした。
「はあ……はあ……なんなんだよあいつら……ゾンビみてーなくせに視覚はちゃんと生きてるのかよ……」
だけど、どうしたもんか。うちの学校はベランダと言うものが無いうえ、窓を開けて外に飛び出せば下にまっ逆さまだ。陵太たちまであと壁一枚だというのに……。そう言えば、音楽室には避難用梯子があるはずだ。にもかかわらず連中が群がっていると言うことは、まだ陵太たちはなかにいるということだ。でもなんでだ?いや、今はあいつらと合流することが先決だ。
「とは言え、どうしたもんかな?孤立無援ってかんじだな。クソ……」
打つ手なしと途方にくれていたとき、ふと俺の頭に、ひとつの可能性が浮かんだ。
「壁一枚……か。化学準備室からなら、壁の厚さは20㎝も無いはずだ。なら、その壁を破壊できれば到達できるか……。でもどうやって……」
いくら20㎝といっても、工具を使って突破は不可能。
爆弾でもない限りは無理だ。
「ん?まてよ……爆弾……。確かこの学校には、臨床試験のためにニトログリセリンが収用されてるって言ってなかったか?」
俺は、確証もないまま鍵のかかっていた薬品室の扉を蹴り開けて中を探した。
「あったこれだ!ニトログリセリン……間違いない。」
あとはこれで爆弾を作るだけ。作り方は、昔陵太が教えてくれた。まさに陵太様様だ。
それから、どれくらいの時間がたっただろうか。爆弾が完成した頃にはもう12時を回っていた。あとは陵太たちに壁から離れてもらわなければならない。メールも通話も出来ない状況での連絡方法。実はもう思い付いていた。昔陵太と一緒に遊んでいたときによく使っていた、とある方法が。
同時刻 陵太サイド
「あいつ、大丈夫かな。そう簡単にやられるやつじゃないと思うが……」
電話が切断されてから2時間以上の時間がたったが、膠着状態を打破する案は浮かばない。ここに来て避難用の梯子が壊れていたのは誤算だった。他の皆も大分疲れているようだし、早く安全なところに避難しないとまずい。
「皐月くん!これからどうするんだい!?このままだとあいつらに皆食われちまうよ!」
彼は俺のクラスメイトの千歳直也。騒ぎが始まったときに廊下を一人うろうろしていたところを拾ってきたのだが、さっきからずっとパニック状態なのだ。
「いま考えてるところだから。少しは落ち着けって」
とは言え彼の言うとうりだ。何とかしなければ。
「望月さん、佐伯くん何か役立ちそうなものはあったかい?」
ちょうど準備室から出てきた二人に声をかけた。彼らのの名前は望月優衣架と佐伯昂祐二人とも電気科らしいのだが佐伯は連中から逃げていた所を拾ったのだが、望月さんは教室で寝ていた所を引っ張ってきたのだ。天然なのか単純にバカなのかは不明だが、一応空手をやっていたそうなので、頼りにはなる存在だ。
「全然だったよ。武器になりそうなものも無かったわ」
「そっか……わかった。二人ともありがとう」
打つ手なしだ。このままだと、連中がバリケードを破って入ってくるのも時間の問題だ。いや、たとえ入って来なかったとしても、食料も水もなくてどちらにしろお陀仏。一体どうすれば………。このままだと、全員の生存は絶望的だ。諦めかけていたその時、音楽室全体に希望の音が鳴り響いた。
『ゴンゴン……ゴン…ゴンゴンゴンゴンゴン…………』
「な、なんだ!?なんの音だよ!」
落ち着きを取り戻しかけていた千歳が、突然の音に再びパニクり始めた。
「落ち着け!これはたぶんタンギング信号だ。俺が解読するから待ってろ」
最初が2 次が15 次は13 最後が2 これをアルファベット順に並べると、B O M B……爆弾か!?
「皆!音が聞こえた壁から離れろ!眼閉じて耳を塞ぐんだ!急げ!」
全員が反対の壁に集まり、衝撃に備えた。
「やれ!零斗!!」
なぜだろう。誰が居るのか分からないのに、俺の心は零斗だと確信していた。5年前と同じように俺たちを助けてくれると。叫び終え、自らの耳も塞ぎきった次の瞬間
ドゴオゥゥゥゥ!!!!
激しい爆音とともにコンクリート製の壁は跡形もなくその姿を石の欠片へと変貌させた。そして、舞い上がる爆煙の中から現れたのは、まさに陵太が待ち望んだ姿だった。
「ゲホッ!ゲホッ!うわっホコリっぽい。待たせちまったか?陵太、皆。助けに来たぞ」
全身血まみれのその男は、何事もなかったかのようにニッコリ笑い、俺たちに歩み寄った。そう。あの時のように。
後書き
人物紹介
佐伯 昂祐 (さえきこうすけ)
神河工業電気科に通う一年生。日頃はあまり自分を出さず、存在感はそこまで感じないのだが、パソコンを持たせると右に出るものはいない。聞いた話では、小学4年生のとき、防衛省のデータベースに不正アクセスし、警察から厳重注意を受けた経歴があるそうだ。
いかがだったでしょう。楽しんでいただけたでしょうか。もし楽しんでいただけたのなら嬉しいです。今回も感想、アドバイスをお待ちしております。それでは次回、第五話でお会いしましょう。
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