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dead or alive

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第三話 『出会いと別れ』

 
前書き
皆さんこんにちは。前回に引き続き三話を書かせていただきました。今回は、話の切りどころが難しく、文字数が統一出来ませんでした。ご了承ください。それでは、話の続きをお楽しみください。 

 
『続いてのニュースです。先月30日、アラビア半島のサウジアラビア南部でWHOが関知していない特殊な病原菌が発見されました。発見は、サウジアラビア、ナジュラーン在住の30代の男性がサウジアラビア警察によって拘束されたことにより発覚しました。サウジアラビアではすでに20000人にも及ぶ感染者が出ているとのことです。国際連合による報道管制の影響でその病原菌がどのような症状を人間に起こすのかはわかっていませんが、狂犬病の一種ではないかと言うことですWHOはこれをうけて……』

「はあ……はあ……はあ……」

俺は、朝に見ていたニュースの内容を思い出しながら、学校までの道のりを全力で走り抜いた。陵太の言う通り、襲ってきたあの男はまるで映画に出てくるゾンビのようだったが、一体どこからその病原菌が日本に入ってきたのか。最初の感染者が発見かれてからまだ10日程しかたっていないのに、もう感染者が日本に現れているのだ。
いつもは郡をなして走っている車も全く見当たらない。交通機関の麻痺状態を考えるに、おそらくこの町はもう感染者だらけなんだろう。などと、さっきの男のせいですっかり目覚めさせられた頭で考えながら走っていると、学校の敷地のすぐ外まで来ていた。

「お、おい……これ…本当に俺のいた、あの神河工業なのかよ……」

俺がこんなにも驚愕する理由。それは、この学校が作られたのが三年前だということだ。にもかかわらず、今のこの学校はまるで廃墟のようになっているのだ。

「何をどうやったらこうなるんだよ……」

だが、今はそんなことを気にしている余裕はない。この学校の音楽室には俺の親友と他科の生徒たちが今も閉じ込められている。

「クッソー……。まるでどこぞのホラー映画じゃねーかよ」

俺は深く深呼吸を数回繰り返し、自分の拳を強く握りしめた。

「よし。いくか!」

校舎のなかはいつもの学校からは考えられないほどひっそりとしていた。その様子が逆に俺の恐怖をあおり、額に冷たい汗が伝う。神河工業高校は、教務科棟、実習棟、教室棟の三つに別れていて、全階で四階ある。そのうち、音楽室は教室棟の最上階だ。俺は、音楽室に通じる階段を一段一段静かに登っていった。そして、二階の階段に足のせかけた、その時だった。

「うあぁぁぁぁぁ!!」

「ッ……!」

今のは間違いない。悲鳴だ!
そう考えた時にはすでに体が動いていた。長く続く廊下を無我夢中で走っていくと……いた!あれは……うちの科の人間だ!

「谷川!!」

「雲母!?雲母か……うぐっ!頼む助けてくれ!ぐあっ!」

「待ってろ!」

谷川は、陵太が言うところのゾンビに、覆い被さられるような体勢で噛みつかれていた。かなりの出血だ。

「谷川をはなしやがれこのクソヤロウ!」

俺はそういい放ちながら、走り幅跳びの要領で踏み切ると、ゾンビの顔面に強烈な蹴りをお見舞いする。

ガスン!!

「うぐあぁぁぁ!」

俺の全体重を乗せた跳び蹴りを喰らったゾンビは二メートルほどふっ飛んだ。唸り声をあげながら体をびくびくと痙攣させていたが、やがて動きは止まり、ゆっくりと沈黙した。その様子を確認すると、倒れている谷川のもとへと向かった。

「大丈夫か谷川?立てるか?」

「ああ……。なんとかな……」

そう言う谷川だが、よく見れば数ヵ所の噛み跡があり、出血量もかなりだ。それに……

「谷川。この学校の様子を見るに、感染者がどんどん増えてるように見える。どうして感染者が増えてるのか分かるか?」

薄々感ずいてはいたのだが、悟られないように聞いてみた。

「おい雲母。お前ならもう気づいてるんだろ?奴等は、噛みつくことによって、体内のウィルスを獲物に感染させるんだ」

「谷川……お前……」

「分かってるよ。俺ももう感染してる」

俺がこの学校に入ってから、谷川とこんなに話したのははじめてだ。なのに、何故だろう。心の奥に感じたことのない痛みが走り、目の奥が熱くなってゆく。

「そんな顔するなよ雲母。なあ。最後に俺のお願い聞いてくれないか?」

「……なんだ?」

頼む。言うな!あの言葉だけは言わないでくれ!俺は心にそう願った。だが、日頃の行いが悪かったせいだろうか。彼から注がれた言葉は、一番聞きたくない言葉だった。

「俺は、最後まで人間でいたいんだ。奴等見たいにはなりたくない。だから頼む。俺を、殺してくれ」

そこから先はどんな会話をしたのか覚えていない。ただ、廊下に転がっていた鉄パイプを谷川へ降り下ろそうとした瞬間、彼から聞こえてきた言葉だけは鮮明に覚えている。

「ありがとう」

初めて俺に見せた最高の笑顔と共に。
 
 

 
後書き
人物紹介

皐月陵太(さつきりょうた)

神河工業設備科に通う一年生。冷静沈着で判断力がとても高い。根っからのミリタリーオタクで兵器や武器に精通していることは大概知っている。運動神経はそれなりによい。雲母零斗(きらら れいと)とは小学生の頃からの親友。

読んでくださった皆さん、いかがだったでしょうか。楽しんでいただけたのならとても嬉しいです。引き続き感想、アドレス等を頂けると幸いです。ご愛読ありがとうございました。 
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