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アットゥン

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第二章

「だからな、まずはな」
「服を着てですか」
「後は暖房だ、それと風呂だな」
「とにかく身体を温めろってことですね」
「そうだよ、熱いものも食ってな」
「ラーメンに鍋に」
「ここもラーメン美味いからな」 
 このことは北海道だけはある、札幌や小樽だけでなく函館のラーメンも美味いのだ。ましてや冬であるからだ。
「温まるんだぞ」
「わかりました、じゃあ」
 智樹はまずはこの寒さを克服することからはじめた、地元にいた時よりずっと厚着をして暖房器具も充実させた。
 そして服にも気を使った、すると。
 かなり温かくなった、それで真一に昼食でスープカレーを食べている時に明るい笑顔でこう言ったのだった。
「暑い位にしたら」
「そっちの地元ではな」
「そうしたらでしたよ」
「普通になっただろ」
「はい、なりました」
 こう笑顔でだ、真一に言うのだった。
「このスープカレーも」
「いいだろ」
「あったまりますね」
「暑い位でいいんだよ」
「北海道ではですね」
「とにかく寒いからな」
 それに尽きる、とにかくだ。
「暑い位でいけよ」
「わかりました、このままそうしていきます」
「それでな、あとな」
「あと?」
「来た時に話しただろ、俺のお袋はな」
「釧路の生まれで、ですね」
「そうだよ、アイヌでな」
 その生まれでというのだ。
「アイヌの雑貨店やってるからな」
「今度ですね」
「ああ、顔見せてくれるか」
「それで金に余裕があれば」
「何か買ってくれ」
 かなりダイレクトにだ、真一は智樹に笑って言った。自分の向かい側の席に座って同じスープカレーを食べている彼に。
「そうしてくれるか」
「課長のお母さんのお店苦しんですか?」
「いやいや、結構儲かってるよ」
「つまりもっとですか」
「そうだよ、儲けたいからな」
 やはり率直に言う真一だった。
「頼むな」
「何か大阪人みたいなこと言いますね」
「これでも北海道も商売の場所だからな」
「資本主義ですか」
「資本主義全開なんだよ」
 北海道もだ、大阪と同じくそうだというのだ。
「というかここは漁業に観光にだろ」
「商業主義ですね」
「俺達自体そうした仕事だしな」
 漁業だ、言うまでもなく資本主義社会のその中にある。
「うちの店もなんだよ」
「どんどん儲けるんですか」
「それも良心的にな」
 真一はこのことを話に加えることも忘れていなかった。
「そうしてるんだよ」
「そうですか、じゃあ今度お邪魔してみます」
「種類は多いし品質もいいからな」
 店の商品の宣伝も忘れていない。
「買って後悔はさせない店だ」
「じゃあ期待させてもらってます」
「そうしろよ、あと御前野球は何処だ?」
「野球ですか」
「ああ、何処だ」
「はい、ヤクルトです」
「あそこか」
 真一はそこまで聞いて納得した顔で返した。
「ならいいけれどな」
「巨人は、ですか」
「ガッツ獲られたからな」
「じゃあ課長の贔屓は」
「最初は西武だったけれど変わったんだよ」
「日本ハムにですか」
「そうだよ、こっちに来てくれてからな」
 その時からというのだ。 
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