八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第十七話 不思議な先輩その九
「そうなります」
「そうですか」
「それではです」
「じゃあ今から」
「その文武にお励みに行って下さい」
こう行って僕達の背中を言葉で押してくれた、そのうえで僕達を学校に送り出してくれた。何はともあれ僕達はまた一人新たな入居者を迎え入れた。
そしてそのことについてだ、僕は昼休みにその情報を仕入れたクラスメイト達にお昼御飯を食べ終えてクラスに戻って来た時に言われた。
「ねえ、また入居してきたんだって?」
「今度はオーストラリアの人らしいな」
「三年の先輩の人で」
「また奇麗な人らしいな」
「皆もう知ってるんだ」
僕は皆の情報を仕入れる速さに内心少し驚きながら返した。
「何も言わなかったのに」
「八条荘のことは有名だからね、今」
「学園中の話題になってるぜ」
「今度は何処から誰が入ったって」
「三年の人が二人ってな」
裕子先輩のことも伝わっていた。
「長崎から凄い歌が上手な人が来て」
「オーストラリアからの人も」
「何でもアボリジニーと白人のハーフって?」
「占い出来るらしいな」
「よく知ってるね」
僕が今朝聞いたばかりのことをだ、皆もう知っていた。
「そこまでわかってるんだ」
「そう、結構ね」
「皆もう知ってるぜ」
「そうなんだ、まあ三年の人が二人入ってくれたのはね」
そのことはだった、まさに。
「本当のことだよ」
「ああ、やっぱり」
「そうなんだな」
「そうだよ、嘘は言わないから」
こうしたことではだ、いやもっと言えばだ。
「僕嘘は好きじゃないから」
「まあそれはな」
「あんた確かに嘘吐きではないわね」
「親父さんもだったみたいだけれど」
「正直者の部類に入るわね」
「何でまたそこで親父が出るのかな」
僕は朝の皆との会話も思い出して少し嫌な顔になった、このことがクラスの皆と話している時もわかった。
「うちの親父って有名人だね」
「酒好きの女好きでな」
「しかも浪費家ってね」
「銀座のホステスを確実にゲットするとか」
「そういうので有名よ」
「全部悪名じゃない」
女好きにしても酒好きにしても浪費家にしてもだ。
「それで何で正直者の話が出たところでその親父が出て来るのかな」
「いや、実際にな」
「大家君のお父さん嘘言わないじゃない」
「女の子は口説いてもな」
「嘘は言わないでしょ」
「そういえばそうかな」
皆から言われてみればだった、確かに親父は嘘は言わない。女の人に声をかける際もちゃんと結婚していることも言っていた、今は離婚しているけれど。
「親父嘘は言わないかな」
「そうだろ、だからな」
「あんたそこはお父さん似なのよ」
「あそこまで女好きで大酒飲みでないにしても」
「正直者なのは似てるじゃない」
「そういえば親父に言われてたよ」
ここでこうも言った僕だった。
「女の子は口説いても嘘はよくないって」
「ほら、そうだろ」
「お父さんそういう人なのよ」
「その親父さんに教えてもらってな」
「正直者になってるの」
「そうなのかな、そう考えるとうちの親父って」
ここでまたこう思うことになった、どうも親父と離れるとかえって親父のことを意識させられる日々になっている。
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