八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第十六話 ある晴れた日にその八
「そこはしっかりしてます」
「止様は立派な方です」
畑中さんがここでこう言ってくれた。
「紳士です」
「そうですか?」
「ご家族に暴力は振るわれませんね」
「本当にそれはないですね」
借金もしない、幾ら遊んでも。
「家にお金を入れることも忘れていません」
「それなら」
「紳士ですか」
「礼儀を失われない方ですし」
「そういえば誰にも公平ですね」
親父は無作法でもない、それにだった。
「礼儀作法にしても」
「そうですね、ですから」
「親父は紳士ですか」
「そうした方ですから」
「だといいんですけれどね」
「少なくとも最低な方ではとてもないです」
このことは親父がイタリアに急に転勤になってからわかったことだ、桁外れの女好きで酒好きであってもだ。それで僕も畑中さんの言葉を聞いていた。
「紳士です」
「ちょっと変わった紳士ですか」
「そうかと」
「暴力振るわないってだけでもいいんじゃないの?」
詩織さんは僕にこのことを言って来た。
「私の友達でもそうしたお父さんいた娘いたわよ」
「家族に暴力振るう人が?」
「そう、奥さんや娘さんにね」
つまり友達にというのだ。
「それで離婚ってなったんだけれど」
「そうした人とは離婚しないとね」
美沙さんは詩織さんに目を怒らせて答えた。
「駄目よ」
「そう思うわよね、美沙ちゃんよ」
「奥さんや子供に暴力振るう人って」
それこそ、という口調での言葉だった。
「最低だから」
「あと借金もね」
「大抵その二つって揃うのよね」
「そうしたことをする人間ってね」
二人の話を聞いて僕もそうだと思った、何故か奥さんや子供に暴力を振るう奴は借金も作る。自分を抑えられないからこの二つが揃うのだろうか。
「普通にね」
「そうよね」
「とにかくね、奥さんや子供に暴力振るうって」
「最低よ」
それだけで、と話す二人だった。そして周りもその通りと頷いている。
モンセラさんもだ、強く言った。
「そんな男叩きのめしてやるから」
「そうそう、蹴飛ばしてやるわよ」
ラブポーンさんも言う、それも怒って。
「容赦なくね」
「そうした御仁はです」
畑中さんもこう言った。
「間違って結婚したとしても」
「それでもですね」
「離婚すべきです」
絶対に、という口調での言葉だった。
「共にいていいことはありません」
「何一つとしてですか」
「左様です、不幸はです」
それこそというので。
「避けるできです」
「離婚してもですね」
「離婚は。私は好きではないですが」
それでもと言う畑中さんだった。
「暴力は受けて何にもなりません」
「奥さんにとっても子供さんにとっても」
「身体も心も傷つきます、これは他のことでもです」
「学校でもですか?」
「部活でも顧問の先生や先輩の暴力の話がありますね」
「はい、聞きますね」
いじめなり何なりだ、暴力を振るう人間は何処にでもいる。嫌なことに。
「うちのバスケ部ではないですけれど」
「そうした輩からは離れるべきです」
「逃げるんじゃなくて」
「暴力を振るう輩に対抗出来ないのなら難を避けるしかありません」
「受けるだけじゃなんですね」
「受けても傷つくだけなので」
それで、というのだ。
ページ上へ戻る