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鎮守府にガンダム(擬き)が配備されました。

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第1部
  第10話 激闘、横須賀沖迎撃戦〜其ノ四〜

 
前書き
第4弾です。
やっつけ気味に書いたので、後々修正するかもしれません。
次回、エピローグで第1部は終了です。 

 
8月23日
日本帝国 横須賀鎮守府


深海棲艦の空襲を受けた横須賀鎮守府は、混迷を極めていた。

「換装急げッ‼︎ 実戦用乙式だッ‼︎」
「…ああ、そうだッ‼︎ 最低限の艦娘以外は全艦、 全艦緊急出航だッ‼︎」
「馬鹿野郎ッ‼︎ 整備班の奴らを急がせろッ‼︎ 〝彼等〟は今まさに死に物狂いで戦ってるんだッ‼︎」

此処、第1埠頭に集まった艦娘の艦体に張り付く整備班の怒鳴り声が響く中、一際大きな巨体を海上に晒す艦があった。

極東方面海上司令艦、メガリスである。

全長約600mを優に超える巨躯の上に聳え立つ砲を背に、甲板から出航準備をする艦体を、現政威大将軍…煌武院悠陽は、隣に立つメガリスの艦長、〝ピエール・ラポワント〟少将と共に眺めていた。

「これ程大規模な出撃を目の当たりにするのは初めてです」
「いやはや、私もであります殿下。
これ程の大規模艦隊を見るのは国連軍所属となった今では殆どありません。
フランス海軍として〝アヴァロン作戦〟に参加して以来です」

白髪の頭髪を撫でながら、ラポワント艦長は想いを馳せる。
英国海軍の一大作戦の指揮を執ったあの日、多くの犠牲と戦友を喪ったラポワントの胸に蘇った感情は、深海棲艦に対する憎しみでも、無謀な命令を下した上層部への怒りでもなく、一種の後悔であった。

この巨人艦に配属となってから、ラポワントは海の男として、多くの兵士や艦娘を見送ってきた。
深海棲艦に対し貧弱極まりない旧型艦で日本を守る為に出撃して行った日本兵、同盟国の為に戦場へ去っていった米兵。
それに年端も行かない艦娘達……。

深海大戦初期、勝ち目が無いにもかかわらず、悠然と、希望と言う光に満ちた瞳を持つ彼等。
そんな彼等も、皆等しく横須賀の地を再び踏む者は居なかった。

幾度と無く苦悩し、懺悔を繰り返してきた。
メガリスはその性質故に出撃する事は叶わず、見送る事しか出来なかった。

先刻、勇猛果敢に出撃して行った白い大型巡洋艦、リンドヴルムを見送る際にも、ラポワントは1人、甲板からその姿を目に焼き付ける事しか出来なかった。

だが、悠陽は遂にメガリス出撃に踏み切った。
国連議会の強情なメガリス保守派を一喝の元に黙らせ、ラポワントに頭を下げた。
〝人類の為に命を賭して戦う彼等を救って欲しい〟と。

本来ならラポワント自ら国連総会に提案しなければならない事だと彼は思った。
自分は臆病風に吹かれていたのではないか。
命が惜しかったのではないか。

馬鹿馬鹿しい。
自分が情けない。

〝彼等〟は今正に自分達の為に戦っているというのに……。

「ラポワント艦長、頼みがあります」

悠陽は畏まってラポワントに向き合った。

「〝彼等〟を救って下さい。
〝彼等〟を死地に追いやった私が言える立場ではない事は承知しております。
ですが、〝彼等〟には多大な借りがあるのです」
「承知しておりますとも。
……それに私は感謝しているのですよ、殿下。
この横須賀の地で醜く朽ち果てる身であった私に、もう一度誇りを取り戻すチャンスを下さった殿下と〝彼等〟には、感謝しても仕切れません」
「……ラポワント艦長」
「御心配は無用です、実は……先だって古くからの〝友人達〟に連絡を入れてありましてな……」


◉◉◉


数時間前
横須賀沖 B7R

明け方の海……その宵闇の中、リンドヴルム率いる臨時聯合艦隊と、空母棲姫率いる日本侵攻艦隊の海戦は、熾烈を極めていた。

「ラトロワッ‼︎ 空母隊を死守しろッ‼︎
航空隊の支援が無くなったらジリ貧だッ‼︎」
《わかってるッ‼︎
航海長ッ‼︎ 面舵15、両舷原速ッ‼︎
砲雷長ッ‼︎ 弾幕絶やすなッ‼︎》

圧倒的戦力を投入して来た空母棲姫率いる侵攻艦隊との戦いは、戦艦棲姫達の介入により、ほぼ互角の勝負になっていた。
とは言え数で勝る深海棲艦の艦隊に真っ向から太刀打ち出来ているわけではない。
ミノフスキー弾頭は枯渇寸前、MS隊や各艦に乗組員にも疲労の色が出始めている。

深海棲艦の砲撃で片腕を失くしたヘイズルを操り、群がる艦載機を叩き落とす。
その足で、艦隊の盾となって戦列に身を晒す戦艦棲姫に取り付いた。

「随分早い再開だな、お姫様?」
《……》

無言で主砲を撃ち続ける戦艦棲姫を尻目に時間を確認する。

「……もうすぐ夜が明ける、誤射が無いように通達してあるが、充分気を付けてくれ」

一度補給の為、リンドヴルムに戻る必要がある。
戦艦棲姫の甲板を燃やさないようにブースター点火配置を書き換え、ゆっくり飛翔する。

《貴方ヲ信じマす》
「え?」
《貴方の言葉ヲ信ジます、……誤射ハ無いト、信じマス》
「……すまん」

俺は戦艦棲姫の信頼に応える為、出力全開でリンドヴルムへ向かった。


◉◉◉


《提督、テ〜トク〜〜ッ‼︎ 遊ボ〜〜ヨ〜〜ッ‼︎》
《だああッ‼︎ うるせぇッ‼︎ 後でたらふくクッキー喰わせてやるから我慢しろッ‼︎》
《ヤダヤダヤダヤダ〜〜ッ‼︎ 提督ト遊ブノ〜〜ッ‼︎》
《ぜかましいッ‼︎ だったらさっさとあの馬鹿共を爆弾と魚雷で消し飛ばしてこいッ‼︎》
《ブ〜〜〜〜ッ‼︎》

通信から洩れるヲ級と彼のやり取りに頰が綻ぶのを感じながら、空母棲姫の艦載機を撃ち落とす。
だがその直後、通信がブツリと途切れ、あの声が聞こえて来た。

《……コレデハ〝坊ノ岬〟ノ焼キ回シネ。
ソウ思ワナイ? 〝大和〟》
「……」
《彼……一葉ッテ言ッタカシラ?
イイ男ヨネェ……貴女ガ〝惚レ込ム〟ノモ頷ケルワ》
「……」
《アラ、モシカシテ貴女本気デ彼ニ……》
「黙リなさイッ‼︎」

飛来する艦載機が爆弾を投下し、甲板に着弾。
装甲を捲り上げる爆風に耐えながら、海の彼方を睨みつける。
幾つもの雷跡が迫り来る。
だが、其れは戦艦棲姫を狙った物では無かった。

「……ッ⁉︎」

雷跡が向かう先は、ミサイル重巡洋艦いざなぎ。
必死に回避行動を取る空母隊を守るために立ち塞がるいざなぎに、1本が吸い込まれるように向かって行った。

立ち昇る水柱が、いざなぎを包んだ。

いざなぎがどんどん傾斜していく。
被害は決して軽い物ではないのは明白だ。
新手の雷撃機が、いざなぎを含む艦隊を標的に定めている。

戦艦棲姫は空母棲姫の狙いに気付きながらも、主機をフル回転させた。
身動き出来ないいざなぎに向かって雷跡が走る。
その雷跡といざなぎの間に割り込むように、戦艦棲姫は船体を滑り込ませた。

数発の魚雷が船体に突き刺さり、爆発。
大きな水柱を巻き上げながら戦艦棲姫を襲った。

艤装を通じて激しい痛みが戦艦棲姫の身体を刺す。
だがその痛みに耐える暇なく、第2波の雷跡が迫って来た。

爆風と衝撃が船体を軋ませる。
護りに徹する戦艦棲姫には成す術がない。
徐々に傾斜していく船体。

《馬鹿野郎ッ‼︎ 諦めるなッ‼︎》

響く声に何事かと周囲を見回す。
徐々にではあるが、傾斜していた船体が復元していた。

《第2、第3小隊は戦姫級を護衛ッ‼︎
ハイゴッグは戦姫級を押し上げろッ‼︎》
《響、船外排水ポンプ用意ッ‼︎》
《ypaaa‼︎》

自身を守る様に空を飛び回るMSと、接舷する響に惚けていた意識を持ち直す。

《タケルッ‼︎ 駆逐艦を護れッ‼︎》
《ユウヤ上だッ‼︎》
《龍浪さん援護頼みますッ‼︎》

だがMSも次第に艦載機に押され始める。
数の暴力が艦隊を襲う様は、まるで獲物に群がるアリその物だ。
迫り来る艦爆が爆弾を抱えながら飛来する。
神風だ。

《させるかッ‼︎》

戦艦棲姫と艦爆の間に入ったMSがマシンガンを乱射しながら立ち塞がり、艦爆を撃ち落とした。
だが落とされる寸前に切り離した爆弾がMSにぶつかり、MS諸共吹き飛んだ。

《ジャックッ‼︎》
《sit‼︎ ジャックのジムキャノンが喰われたッ‼︎》

落とされたMSの僚機が叫ぶ。
そのMSも、数機の艦爆の特攻の標的になり、2機が揃って爆煙に消えた。

《第3小隊がッ⁉︎》
《畜生ッ‼︎》

電探に新たな反応が現れた。
第4次攻撃隊だ。

戦艦棲姫は静かに目を閉じ、決意新たに新手を睨みつけた。


◉◉◉


同時刻
リンドヴルム

「さっさとカタパルト開けろッ‼︎ 時間がないんだッ‼︎」
『無茶ですよ提督ッ‼︎ まだ整備が残って……』
「んなこたぁわかってるッ‼︎ 良いから出せッ‼︎」

カタパルトを滑るようにヘイズルが飛び立ち、爆炎と銃弾が入り混じる空に上がる。
嘗てこれ程の海上戦があっただろうか?
幾多もの鉄と命が失われて行く。
海は重油によってドス黒く濁り、船員の叫びや悲鳴が響く。

「……この海は…地獄だ……ッ…」

阿鼻叫喚地獄絵図、ほかに表現のしようがない。
立ち昇る幾多の黒煙が視界を遮り、血飛沫が甲板を濡らし、掛け値無しの絶望が渦巻く。
まさに、地獄。

『提督、緊急電ですッ‼︎』

リンドヴルムのオペレーターの声が、レーザー通信から響いて来る。

『本海域に接近中の超大型艦艇有り、方位7時、距離24000ッ‼︎』
「なにッ⁉︎ 敵かッ‼︎」
『不明です、レーダーにいきなり……えッ⁉︎』

オペレーターが息を呑んだのが分かった。
もし敵なら撤退も考慮しなければならない。
ただでさえ制空権を握られているというのに、新手の相手なんてしていられない。

『し、所属不明艦より入電ッ‼︎
……これより、〝ニンバス〟による上空制圧を図る。
迎撃艦隊所属機は直ちに高度500ft(フィート)以下に撤退せよ、ですッ‼︎』

7時の方位を最大望遠で映し出す。
朝日が顔を出し、映ったのは巨大な水上艇……いや、これを水上艇と呼んでいいのだろうか?
リンドヴルムよりも明らかに巨大で、複翼を入れれば100mは超えるだろう。
その巨人艦を護るように、ふた回りほど小さな……いや、戦艦並みの大きさの艦艇が幾つも寄り添うように飛んでいる。

《……ッ、……。
…遅れて済まない、此方はユージア連邦・エストバキア海軍所属、独立飛行艦隊旗艦、アイガイオン級重巡航管制飛行空母1番艦、アイガイオン。
艦長の〝ニコラス・A・アンダーセン〟艦長だ。
エインヘリアル、リンドヴルム、今直ぐ艦載機を待避させよ》
『此方リンドヴルム、直ちに退避させる』

戦域内の友軍機が徐々に高度を下げる。

《了解、アイガイオンより〝シュトリゴンリーダー〟、ニンバス発射準備が整った》
《〝シュトリゴンリーダー〟よりアイガイオン、斉射開始と同時に戦域へ突入する。
各チームリーダー、聞いたな?》
《ウォーウルフリーダー了解》
《ガルーダリーダー了解》
《ラーズグリーズリーダー了解》
《ハートブレイクワン了解》
《メビウスリーダー了解》
《各チーム了解確認、ニンバス着弾後は、各自の判断で会敵しろ》
《全機に告ぐ、これよりニンバスを射出する、カウントを開始しろ。
……ブースター点火、発射まで、5秒前》

《4、3、2、1、ロンチッ‼︎》

巨人機の上部が閃光に包まれ、幾つもの弾頭が飛び出した。
弾頭は上空で回頭し、B7Rへ向かって来る。

『巡航ミサイル接近ッ‼︎ 着弾まで3秒前、2、1、ブレイクッ‼︎』

瞬間、視界が真っ白に染まった。

『なんだありゃ……巡航ミサイルかッ⁉︎』
『なんて威力だ……ッ‼︎』

対ECMレーダーに映っていた敵のマーカーが一瞬で消えた。
それだけでなく、味方への影響は皆無だ。

《シュトリゴンリーダーより各機、突入だ》

目の前をジェット戦闘機が通り過ぎる。
その搭乗者と、ほんの一瞬だけ視線が交わる。

《ガルーダ1よりガルーダ2……シャムロック、雷撃隊を叩くぞッ‼︎》
《了解、海の女神様達とダンスだッ‼︎》
《ハートブレイクワンよりラーズグリーズ隊、遅れるなよッ‼︎》
《ブレイズ了解、交戦》
《エッジ交戦ッ‼︎》
《了解ッ‼︎ チョッパー交戦ッ‼︎》
《アーチャー交戦ッ‼︎》

嵐のように現れた戦闘機群が戦線に食いつく。
艦隊にへばりついていた深海棲艦の艦載機を片っ端から平らげていく。

《此方ウォーウルフリーダー、カズハ・ジングウジ准将閣下でありますか?》
「あ、ああ。 俺が神宮司一葉だ」
《アメリカ合衆国空軍のウィリアム・ビショップ中佐です。
ウォーウルフ隊と共に貴艦隊の直掩に回ります》
「…了解、戦姫級と麾下のル級、ヲ級は友軍だ。
誤射しないよう注意してくれ」
《了解、行くぞ〝ガッツ〟ッ‼︎》
《了解しました、中佐ッ‼︎ 准将ッ‼︎ 後で一杯やりましょうッ‼︎》

頼もしい限りだ。
若干戸惑いながらも了承し、その場から離れる。

戦姫級の近くまで行くと、通信は使い物にならなくなった。

《いいぞ、追い込めッ‼︎》
《後ろに付かれたッ‼︎ 誰か、援護してくれッ‼︎》
『MS隊は何してやがるッ‼︎』
《2時方向から新手だッ‼︎》
『くそッ‼︎ 混線してるぞッ‼︎』

混線が酷く、乱戦になりつつある。
既にミノフスキー粒子による電波妨害は無いが、此れではミノフスキー粒子散布下と何ら変わりは無い。

だが、ユージア軍の戦闘機群は統制の取れた軽快な挙動と連携で、的確かつ確実に敵艦載機を落としていく。
これがこの世界の〝エースの戦い方〟だと、認識した。

『……なんだ?』

レーダーに変化が訪れる。
敵のマーカーが一斉に後退していく。
見れば、迎撃艦隊の後方から、幾つものマーカーが近づいてくる。

『横須賀の艦隊だッ‼︎』
『メガリスまでいるぞッ‼︎』

総勢50隻以上の大艦隊が、包囲しようとしていた深海棲艦の艦船を蹴散らしながら近づいてくる。
戦況が逆転した。

『敵が引いて行くぞッ‼︎』
『……ってことは……』
『……勝った、勝ったんだッ‼︎』
《勝ったぞッ‼︎ 俺逹の勝利だッ‼︎》

歓声が海上を包む。
負傷者も、パイロットも、オペレーターも、皆が声を張り上げて歓喜した。

日の出から35分25秒後。
午前5時56分、横須賀沖海戦は、深海棲艦の撤退と共に、唐突に幕を下ろした。

 
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