軍艦マーチ
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第一章
第一章
軍艦マーチ
彼等はだ。いきなり来た。
瞬く間にあのイギリス軍を破ってだ。この国に来たのだ。
「日本ってどんな国なんだ?」
「さてな。知らないな」
「そうだよな。強いみたいだけれどな」
「それでもな。急に来たな」
「どんな国かちょっとな」
「わからないな」
ビルマの人達はだ。首を傾げさせながらこう話すのだった。
「あれだろ?東の方から来たんだよな」
「俺達と同じ様な背だけれどな」
「まあそうだな。背はそれ位だよな」
「大きくはないな」
「肌の色は黄色いな」
彼等は暑い国にいるせいか日焼けしている。だから赤い肌をしている。
それに対してだ。日本軍の兵士達はだ。黄色い。軍服を着てそのうえでだ。厳しい顔をしてだ。ビルマにやって来たのである。その彼等はというと。
いきなりだった。ビルマの民衆にだ。
鉄拳制裁を浴びせた。次々にだ。
これにはだ。彼等も驚いた。
「な、何だ!?何かっていうと殴るぞ!」
「あの連中何なんだよ」
「すぐにがみがみと怒るしな」
「しかも融通が利かないしな」
「厳しいにも程があるだろ」
「えらい奴等が来たな」
「全くだ」
誰もがだ。この新しく来た者達にだ。困り果てた。しかしである。
確かに日本人達は厳しく融通が利かなくしかもすぐに鉄拳制裁を振るう。だがそれと共に公平であり真面目で熱心であった。彼等に対する対応もだ。イギリス人達と全く違っていた。
「あれっ、何か違うな」
「そうだよな。威張ってないしな」
「誰であろうと公平だしな」
「悪いことはしないしな」
「規律正しいしな」
そうなのだった。彼等はだ。鉄拳制裁だけで悪事は振るわない。全くであった。
それでだ。次第にであった。彼等の話を聞いて交流する様になった。
それはこの村でもだった。この村にも日本人が来ていた。村人達は最初日本人達を恐れていた。だが話せる者達とわかってだった。
次第に打ち解けていった。そしてそれは。
アウンもだった。彼は日本軍の軍人達と少しずつ話をするようになった。そしてだ。
一人の若い精悍な軍人とだ。仲良くなった。彼は。
「お兄さんは海軍にいるんだ」
「そうだ、海軍だ」
そこにいるとだ。その軍人は話すのだった。
「帝国海軍にいるんだ」
「ふうん、そうなんだ」
「海軍で爆撃機に乗っているんだぞ」
軍人はにこりと笑ってだ。何の乗っているのかも話す。
「一式陸攻にな」
「一式?」
「ああ、爆撃機の名前でな」
軍人はこのことも話した。
「そういう名前なんだよ」
「ふうん、一式なんだ」
「そうだ。それでな」
「それで?」
「お兄さんの名前だけれどな」
軍人はそのことも話してきた。
「言っていいか?」
「うん。何ていうの?」
アウンもだ。軍人の顔を見上げてだ。その名前を尋ねた。
「それで」
「鈴木というんだ」
まずはだ。名字からだった。
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