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無欠の刃

作者:赤面
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下忍編
  自来也

 中忍試験の予選結果。
 「うずまきカトナ」対「赤胴ヨロイ」。勝者、うずまきカトナ。
 「うちはサスケ」対「山中いの」。勝者、うちはサスケ。
 「キン・ツチ」対「奈良シカマル」。勝者、奈良シカマル。
 「ザク・アブミ」対「油女シノ」。勝者、油女シノ。
 「日向ヒナタ」対「日向ネジ」。勝者、日向ネジ。
 「テンテン」対「テマリ」。勝者、テマリ。
 「ロック・リー」対「我愛羅」。勝者、我愛羅。
 「剣ミスミ」対「カンクロウ」。勝者、カンクロウ。
 「犬塚キバ」対「うずまきナルト」。勝者、うずまきナルト。
 「秋道チョウジ」対「ドス・キヌタ」。勝者、ドス・キヌタ。
 「湖面」対「春野サクラ」。勝者、湖面。

 辞退…薬師カブト。不戦勝…サイ。

 一戦目。「うずまきナルト」対「日向ネジ」
 二戦目。「うずまきカトナ」対「カンクロウ」
 三戦目。「奈良シカマル」対「テマリ」
 四戦目。「うちはサスケ」対「我愛羅」
 五戦目。「ドス・キヌタ」対「サイ」
 六戦目。「湖面」対「油女シノ」

 最初の一戦目で退場してしまったカトナのために、サクラが用意してくれたらしいメモを見つつ、カトナは自分の相手であるカンクロウという少年の姿を思い出す。
 確か、背負っていたなにか大きいものを利用して闘っていたようだが…、あれは確か、砂のお家芸でもある傀儡の術に使われる傀儡人形だったのだろう。
 傀儡相手だと、考えるべきはチャクラの糸を切ることだろう。
 チャクラの糸はチャクラ刀で斬ることができる。カトナの持っている大太刀でならば、切れるだろう。問題はチャクラ総量が、カトナと彼を比べた結果、彼の方が多いだろうということである。
 チャクラ糸はそれなりのチャクラコントロールが求められる。消費量はほかの忍びと比べて、少ないとみていい。
 嫌な相手と当たったものだと思いつつも、カトナは橋を渡ろうとし、垣根に張り付いて、げへへと笑っている男を見つける。
 一瞬、何をしているのかと思い、目を瞬かせたカトナは、そういえば、その垣根の向こうは女風呂であったことを思い出し、呆れたように息をついた。
 つまりは、覗きである。
 カトナはじっと垣根とその男を見比べて、自分の背中に背負っていた大太刀を持ち替え、鞘から抜く。
 別に、女子の風呂を覗こうとする行為には生理的嫌悪を抱くが、わざわざ首を突っ込まなくてもいいことであるとも思う。…のだが、しかし、内面は女子であるカトナにとっては、のぞきというのは見過ごしがたい行為である。
 男が更に身を乗り出そうとした瞬間を狙い、その背中に向かって蹴りを放つ。
 直前で、気配を察知したらしい男が垣根を押した反動で避けるが、カトナは蹴りの勢いを殺しつつ、チャクラで垣根にくっつく。と、無防備に見せている男の腹部に掌底を放つ。
 男は咄嗟にカトナの掌底と自分の間合いを見切り、足を下げる。
 しかし、カトナの掌底が避けられた瞬間、チャクラがその掌底から放たれ、男の腹部を穿った。

 「っ!!」

 一瞬、息をつめた男の体が曲げられた瞬間を狙い、カトナは大太刀を男の足に向けて薙ぎ払うが、男は寸での所で上に飛び、避ける。
 しかし、後手の後手に回った男を逃がすわけがなく、カトナはその長い長髪を掴み、無理やりその場に引き倒す。
 倒れ込んだ男の腹部を踏みつけつつ、カトナは大太刀を両手で握り、言う。

 「…変態は、駆除する」

 そういって、カトナは持っていた大太刀を振り上げようとし。

「ちょちょっ、ちょっと待てぃ!! わしは、どうしてもそうしなけりゃいけん理由があったんじゃ!!」
「理由?」

 一応、その言葉に大太刀を寸での所で止める。
 男の顔すれすれで止められた大太刀は、髪の毛一本を切り落とすだけで止まる。
 男はひぃひぃ言いながら、カトナの足の下から抜け出して立ち上がると、胸を張る。
 そんなことをしても、最早、威厳らしい威厳を感じれないのだが、カトナはきちんと真面目に居住まいを正してその言葉を聞く。
 そんなカトナに、よしよしと頷きながら、意気込んで、自来也は話しだす。

「わしは、ある人物を探しておっての」
「ある人物?」
「そうじゃ、うずまきカトナというやつなんだが…」

 きょとんと、カトナは目を見開きつつも、自信を指で指し示す。

「私のこと」
「ん、私・・? って、おぬしがうずまきカトナか!!」

 どうやら自分を探していたことは本当らしい。
 自分を探すことが、覗きを行う事とはどうしても結びつかないのだが、それを無視し、カトナは目の前の男を上から下まで眺める。
 カトナを探していたということは、九尾が目的か。はたまた人柱力であることが目的なのだろう。
 里の中だから襲われることはないだろうが、しかし、念には念をである。
 いつも通り、自然に足に力を込めつつ、首をかしげたカトナに男は…自来也は話しだす。

 「おぬし、自分の中に二種類のチャクラがあると思ったことは、ないか?」

 すぐさま、カトナは気づく。
 それは、九尾とカトナ自身のチャクラのことを指しているのだと。
 一体何のために聞いてきたのだと考え、思い直し、そして気づく。
 こいつは私のなかにいると思っている九尾を、使いこなさせる気だ。
 それは、カトナの中にあった友好的な部分を全て潰す。
 逃げなければ、と頭で声がこだまする。
 私ならばまだいい。私が人間兵器として扱われることも、里の為に働くことを強要されることも、私自身が望んで選んだ人生だ。
 けれど、ナルトは望んでその人生を選んだわけではない。辛さも苦しさも悲しさも強要されて、無理やり背負わされてきたのだ。
 ナルトがそのチャクラを使うという選択肢を選ぶならば、カトナは止める気が無い。しかし、強要されるならば話は別だ。
 ナルトに以前、聞いたことがある。
 「九尾のチャクラを使う気はあるか」と。
 ナルトは答えた。
 「使う気はない」と。
 もしもどうしようもなくなったときに、使うかもしれない。利用するかもしれない。
 けど、九尾のチャクラをコントロールできない今、皆を傷つけてしまうかもしれないくらいなら絶対に使う気はないし、何よりも、九尾を都合のいい存在として利用したくない。
 そういっていた。
 だから、カトナはナルトの意思を尊重して使わせない。
 使わせるような状況には、陥らせない。
 それがカトナの生きている意味なのだから。
 だからこそ、はっきりと認識する。

 この男は、私の敵だ。

 はやく、逃げなければ。
 私が九尾の人柱力でないと気づかれる前に、はやく、はやく!!

 カトナは差し伸べられかけた手を避けて足を後ろに引く。
 自来也はその様子に驚いたように、目を見開くが、カトナはその様子を見ないまま、一目散に後ろに振り返って逃げようとし。
 まて、よ?
 直前で、足を止める。
 目の前の男が、自分を探し出すことは不可能ではない、だろう。自分の居場所は暗部につつぬけだ。この男が暗部とつながりをもっていたら、居場所がばれるのも時間の問題だ。
 自分がいない間に、ナルトと接触されるならば、まだいい。
 けれど、ナルトがこの男がカトナを九尾の人柱力と勘違いし、鍛えようとしている事実を知ったならば。
 ナルトが、カトナが九尾の人柱力であると偽ってまで、ナルトの意思を優先しようとする姿を目の当たりにしたならば、きっとナルトは、カトナが勝手にしていることとはいえ、悲しむだろう。
 それは、駄目だ。自分がしたいからしているという事にしなければ。
 それにこの男は、九尾のチャクラのコントロールのことを言えるということは、それなりの手練れだ。
 サクラと一緒に修行しているとはいえ、術を教える教師や師匠が必要なはずだ。
 カカシはサスケにもっていかれたようだし、イルカはアカデミーの教師で忙しい。エビスという男がどうだとカカシに言われたが、ナルトの知り合いだとしても、カトナはその人物を知らないので危険性がよく分からないので却下。それ以外の人物だと、ナルトに危害が及ぶ可能性が高い。
 そんなナルトの師匠に、目の前の男は都合がいい。
 思考が急速にまとまりだし、そして一つの結果を出す。

 「…九尾は、使うの、怖い」

 絞り出した声に、自来也は瞬きした。
 カトナが九尾の存在を知っているとは思っていなかった以上に、カトナが九尾を使うのが怖いと言ったことの方が、自来也には意外だった。

 「何故だ?」

 何と答えようか、一瞬の迷いが、カトナの中に溢れた。
 本当の理由は、カトナのなかに九尾はいないので、使いたくても使えないということなのだが。だが、それを言うということは、即ちカトナの中に九尾がいないことがバレるということなので、どうしようかと内心で悩みつつ、カトナは思いついた言葉を口に出した。

 「…化け物、って、言われたく、ないか、ら」

 嘘は言っていない。が、本当のことも言っていない。
 カトナは別に自分が化け物と呼ばれることは構わない。
 ただ、ナルトが、化物の弟と呼ばれてほしくないのだ。
 自来也は虚を着かれたように目を見開いて、そしてなんともいえない顔で目を細めた。

 「…そうか、そうか」

 その言葉に込められている感情の念は、カトナには分からない深みがあって、悲しいくらいの優しさがあって。慣れない大人の態度に、カトナは何度か瞬きを繰り返した後、どうしたものかと手を振る。

 「九尾の、チャクラ、使わない、なら、教えてほしい、です」

 その言葉に、自来也は少しだけ驚いたように目を見開いて、瞬きしたが、すぐにいつものような飄々とした、感情を見せない笑みを浮かべて、カトナの頭を撫でまわす。

 「よしっ、この自来也に任せておけ!!」

 胸をどんっと叩いた自来也に、カトナは恐る恐るといった調子で手を上げる。

「あと、もう一人、追加、いいですか?」
「ん? まぁ、このわしにかかれば、どんな奴でも素晴らしい忍者にしてみせるが、誰を頼みたいんじゃ?」

 その言葉に、カトナはにこにこと笑みを浮かべつつ、言った。

 「私の弟、です」
 
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