八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第十五話 テキーラの国からその十一
「そうするけれど」
「じゃあ丁渡いいわ」
「都合がいいわ」
女の子達は笑って僕の言葉を聞いてからこうも言った。
「この娘食堂に案内して欲しかったのよ」
「大家君にね」
「僕にってことは」
「そう、わかったでしょ」
「これだけ言えば」
「そういえば君達って」
ここで僕は女の子達のクラス章を見た、それを見ると。
「H組の娘だね、皆」
「ええ、そうよ」
「二年H組よ」
「つまりね、今度の転校生はね」
「私達のクラスに来たのよ」
「そうだね、それでその娘は」
そのメキシコから来た娘のことをだ、僕は問うた。その娘に違いないことは朝の畑中さんとの話でわかっていた。
「何処から」
「ここよ」
「ここにいるわよ」
「こんにちは」
小柄な女の子が出て来た、美沙さん位の背丈の。
黒のショートヘアで肌の色は薄い褐色だ、はっきりとした大きな黒い目で胸がやけに目立つ。赤と白、それに黒いネクタイの制服とハイソックスだ。
その娘が僕の前に出て来た、幼いけれどアイドルみたいな顔だ。紅の唇が健康的だ。その娘が僕に明るい声で言って来た。
「大家さんだよね」
「そうだよ、八条荘のね」
「さっきアパートに入ってね」
「学校に来たんだよね」
「メキシコのアカプルコからね」
出身地の場所もだ、僕に言って来た。両手は腰にあって胸を張っている。
「来たよ、名前は」
「何ていうのかな」
「モンセラ=カヤノ」
これが名前だというのだ。
「宜しくね」
「カヤノさんでいいかな」
「カヤノ様でいいよ」
笑ってこう僕に返して来た。
「それかモンセラでね」
「じゃあモンセラさんでいいから」
「そう言うと思ってたわ」
「じゃあ何でカヤノ様って呼べって言ったの?」
「冗談よ」
それで、というのだ。
「だからさっきのは気にしないでね」
「そうなんだ」
「それでだけれど」
「うん、食堂にだね」
「私達が案内してもいいけれどね」
「けれど大家さんだからね」
H組、モンセラさんと同じクラスの女の子達がにこにことしてとても楽しそうに僕に対して言って来た。本当に楽しそうに。
「是非にって思って」
「それでなのよ」
「そうなんだ、とにかくね」
僕はあらためて言った。
「モンセラさんと」
「連れて行ってね」
「わかったよ」
本人に明るく返した。
「これからね」
「行こうね」
「来るとは思っていたけれど」
それでもだった、僕は思いこう言った。
「いや、展開が早いね」
「あんたの周りってそうよね」
「傍から見ていてもね」
H組の女の子達が僕に笑って言って来た。
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