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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第十五話 テキーラの国からその八

「それで」
「そういうものなんだね」
「そう、あとね」
「あと?」
「やっぱり材料のお米によって」
 それでとだ、詩織さんはこうも言うのだった。
「お酒の味も変わるわよね」
「広島のお酒と神戸のお酒の味は違います」
 小夜子さんが答えてくれた、お酒のことについて。
「同じジャポニカ米、それも同じ日本で作っても」
「それぞれの場所でなのね」
「違います」
 そうだというのだ。
「同じ日本酒でも」
「甘口になったり辛口になったりとか」
「そうです、ですから」
「お米が違えば」
「お酒の味も違います」
「成程ね」
「これは麦や葡萄でも同じです」
 こちらもというのだ。
「ビールもワインも」
「どちらもなんだね」
「他の穀物、果物もですが」
「そういえば親父がよく言ってたよ」
 ここでも親父のことを思い出した、それも自然に。
「実際ね」
「はい、お酒はですね」
「その場所で違うって」
「そうですね」
「うちの親父日本酒も好きだから」
 あとワインもだ、どちらに関してもかなりの通だ。
「何処のどのお酒がどんな味とかね」
「よくお話されていたのですね、お父上は」
「うん、特にね」
 さらに言う僕だった。
「京都のお酒が好きなんだ」
「京都ですか」
「新選組や幕末の志士も飲んでいたとか言って」
 確かにそんなことを言っていた、それもよく。
「飲んでたよ、それも僕にもね」
「義和さんにもといいますと」
「お酒はいいものを飲めってよく言ってたよ」
 今も会えば言うと思う、親父は。
「さもないと酔いが悪いってね」
「それはその通りです」
 畑中さんも言って来た。
「悪いお酒を飲まれますと」
「悪酔いするんですね」
「この八条荘のお酒はどれもいいものです」
 所謂悪い酒は置いていないというのだ。
「ソムリエが用意してくれています」
「ソムリエの人がですか」
「ご本家の」
 そこに仕えているソムリエの人がというのだ。
「その方ががです」
「選んでくれたお酒をですか」
「置いています」
「そういえば美味しいワインやお酒ばかりですね」
 ビールもだ、どれもいい。
「うちにあるお酒は」
「左様です、そしてテキーラも用意しました」
「テキーラですか」
「メキシコのお酒です」
「そうでしたね、確か」
 僕はまだ飲んだことはない、だからよく知らない。それで畑中さんに対してこうした今一つはっきりしない返事になった。
「あのお酒は」
「左様です、用意しました」
「テキーラ好きな人がいるんですか」
「来られます」
 こう答えてくれた。 
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