オズのムシノスケ
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第十二幕その三
「一切わからないよ」
「本当に難しいものなんですね」
神宝は教授の説明にしみじみとして言いました、そしてでした。
ナターシャもです、こう言うのでした。
「神様だけが知っていることですね」
「偶然はね」
「人間ではですね」
「わかる筈がないものだよ」
「普通の市民でもですか?」
ここでナターシャがお話に出した人はといいますと。
「ユー=クー=フーでも」
「そう、あの人でもね」
「オズマ姫でもですね」
「偶然はどうしようもないよ」
「偶然はそれだけ凄いものなんですね」
「魔法で雨を降らせたりすることは出来るよ」
それは出来ます。
「天気のこともね。けれどね」
「偶然は」
「それは何も出来ないんだよ」
ユー=クー=フーもオズマもというのです。
「魔法でもね」
「何も出来なくて」
「偶然は受けるだけなんだよ」
「人は」
「だからドロシー嬢もここに来たしね」
このオズの国にというのです。
「私もオズマ姫に出会えて今に至るのだよ」
「そういえばあれでしたね」
カルロスは教授の今の言葉にぽん、と手を叩いて言いました。
「教授も本当に偶然に」
「そう、オズマ姫に出会えたのだよ」
「まだ男の子だった頃のオズマ姫にですね」
「あの時はまさか本当は女の子だと思わなかったよ」
「けれどですね」
「その時のオズマとの出会いが今の私を導いてくれたのだよ」
「偶然が」
「私もまた偶然に支配されているのだよ」
つまり彼も偶然についてはどうしようもないというのです、このことについては。
「ボタン=ブライトもだよ」
「僕もなの」
「君はいつも私達とたまたま会うからね」
「そのたまたまが」
「そう、偶然なのだよ」
そうなるというのです。
「最初からそうだね」
「私と会った時がまさにそうだったわね)
ドロシーはボタン=ブライトとのはじめての出会いの時をここで思い出しました、その時もそうだったのです。
「偶然だったわ」
「僕そこにね」
「どうしていたのかも知らなかったわよね」
「うん」
その通りだったというのです。
「何も」
「他の世界もオズの国も偶然に満ちているのよ」
「偶然は魔法よりも強いんでしょうか」
カルロスはドロシーに尋ねました。
「そうなんでしょうか」
「そうよ、オズマは魔法を使えるけれど」
「偶然は使えないんですね」
「若し偶然を自由に使えればね」
「物凄い力になりますね」
「魔法よりもね」
「何か偶然を人が動かせる様になったら」
その時はどうなるか、カルロスは少し考えました。
そしてです、こう言うのでした。
「ノーム王みたいな人がそうなったら大変ですね」
「そうよね、前のノーム王みたいな人だったらね」
かつてのあの人が偶然を使えたらでした、それこそ。
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