ソードアート・オンライン ~Hero of the sorrow~
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フェアリィ・ダンス編 哀しみを背負った男達
葛藤と道中とスイルベーン
前書き
また、一人。仲間が増えて、大所帯。
「おいっ・・・起きろよ・・・起きてくれよ!!」
破壊と殺戮が充満したこの研究所で、俺は覚醒した。目の前に転がる死体。自分の家族。
上がる炎。爆炎が周りを包む中、コツコツという足音。振り向く。人が立っている。
暗闇で顔が見えない。かろうじて全身が血まみれなのが分かる。爆炎がそいつを照らした。
「お前か!!こいつらを殺したのは!!」
そいつは無言だった。俺の識別センサーが、そいつの名を表示させる。
アシムレイトロイドNo0・sorrow。意味は悲哀、哀しみ。
爆炎が照らしたことで、顔が見えた。覚えなくともいい。今ここで・・・
「殺す!!」
駆けだした瞬間だった。
パァン!!
凄まじい発砲音と、半身が吹き飛ぶ俺。そいつの顔は哀しい顔だった。赤い涙が流れていた。
許さない。許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さ・・・
そいつは最後に何か言った。
「―――――――――――××××」
意識が飛んだ。
「あ~~っ・・・またか・・・」
ベットから俺は起き上がり、キッチンへと向かう。ココは、須郷のいる所ではなかった。
「おはようさん、愛」
俺はココの管理者である愛に、挨拶をして席に着く。テーブルに並べられた朝食を咀嚼しはじめる。
「お?ライクの奴はどうした?」
「相変わらず、こたつで寝てるわ」
「引きこもってるの間違いだろ」
愛は笑ってそうね、と言った。
「ところで・・・sorrowの方はどうなの?」
「なーんにも。覚えてなかった」
「・・・そう」
「にーちゃん達・・・なんの話してるの」
いつの間にか、ライクがの隣にいた。相変わらず、こいつの能力は厄介だ。と、俺は思ったが黙った。
彼女達はアシムレイトロイド。あの裏切り事件の生き残り。ライクは偶然、まだ目覚めていなかったために生き残り、愛は調整中で、別支部であったために生き残った。
「それより・・・お前、能力の時間は大丈夫なのか?」
俺は愛に聞いた。
愛、アシムレイトロイドNo5・Loveの能力は、《次元隔離》。世界に存在する次元の一部分だけ自分の好きなように改造できる。しかし、あまり長い時間使えない。
もとはライダーをここに収容し、俺やNo1が待ち伏せして殺すというモノだったが、本人はそういう扱いをするのを嫌っており、現状の状態になってからは自由に使っている。
「ああ、大丈夫よ。ライクの能力があるしね」
ライク、アシムレイトロイドNo2・Likeの能力は、クライが知る限り一つだけ。
「透明化で何ができるんだよ?」
「この前、能力が覚醒したんだよ」
「どんな能力だ?」
「ん」
・・・?何した?周りを見ても変わった様子はない。しかし、時計を見て気づいた。
「時間が進まない?まさか・・・時を止める!?」
「いや?違うよ。時間を《隔離》したんだよ。《時間隔離》、それが私の新しい能力」
とんでもない能力を、この幼女は手にしたもんだ。
「このまま行けば・・・・」
アイツを、殺せる。
「しかし――――首領たちは何がしたいのかしら?」
唐突に、愛が口を開いた。
「あの事件があってから十年・・・。そんなタイミングで、今更ライダー狩りよ?おかしいじゃない」
「別にいいじゃんか。アイツを殺せるんだから・・・」
「じゃあ・・・じゃあ、あなたが十年探しても見つからなかったsorrowが、何で今更現れるの?おかしいじゃない!!」
突然声を荒げたせいか、ライクがひいっと声を出して服の袖を掴んでくる。
「おかしいのよ・・・何もかも。だって・・・開発者は私たちを・・・失敗作だって言ったじゃない!
何で今更・・・もう戦わなくても良くなったのに・・・」
「ライダーを世界から呼び寄せる能力しかくれなかったじゃない。怪人達をよこせば早いのに・・・。
私達は所詮、あいつらにとってはちっぽけな存在なのよ・・・きっと」
愛が泣いて崩れ落ちた。俺は背後から手を回す。
「大丈夫だ」
何が・・・と、愛が、か細い声を漏らした。
「ちっぽけな存在?そんなのは、あいつらにとっての話だ。俺にとってはお前は全然ちっぽけなんかじゃない。ちっぽけな存在なら・・・俺が守ってやる」
「だからさ、生きろよ」
俺はゆっくりと愛を立たせ、椅子に腰かけさせる。
「なぁ・・・ひとつ聞いていいか?」
「・・・何よ」
「何でお前・・・顔赤くなってんだ?」
へっ、と変な声で愛が顔を隠す。それを横目に、ライクが言った。
「にーちゃん・・・大胆だよねぇ」
「何が?」
俺はそういうと自分の部屋に戻り、支度を始める。服を着替え、武器のチェック。特にアシムレイトロイド専用武器、象徴武器念入りに確認して、玄関の前に立つ。
「じゃあ・・・行って来るわぁ」
「いってらっしゃい、にーちゃん」
玄関を開けようとすると、愛が言った。
「生きてね・・・」
「生きるさ・・・・絶対に」
そう言って俺は玄関を出た。
待ってろ。お前が名前を変えようとも。俺はお前を探し出す。そして・・・殺してやる。
アシムレイトロイドNo3・Cry。彼もまた、自身の正義を持って戦っている。
スイルベーン 道中
「で、どうしましょうか?」
ユキが持ち出したのは、飛べない人たちがいる、ということだ。
真は羽が出る。オーズはタジャドル。カリスはフライトのカード。ウィザードはドラゴンスタイル。
アンクは鳥。ユキは恐竜メダルのおかげでプテラの羽が出る。
では残りのものは?光太郎はアンクに、涼はオーズに、響鬼はユキに運ばれることとなった。
「アンク君・・・」
飛行するなか、光太郎がアンクに言った。
「肩が・・・痛い」
少し遠くにいた映司が叫んだ。
「あ、アンク!もうちょっと優しく持ってあげなよ!!」
「・・・飛ばせてやってるんだから、我慢しろ!!」
「ていうか、お前だってコンドルレッグ展開させて、挟んでるじゃねぇかああああああぁぁぁ!!」
「・・・・」
「そっぽ向くなああああああぁあああぁぁっ!!おい、えーーーーーーーーじいぃぃぃぃぃっ!!!」
涼は真の方を向いた。その顔はもう、悲惨なものだった。
「・・・・葦原、こっち来い」
真は涼をオーズから引ったくり、アンクが笑う。直後に映司が軽く蹴とばした。
「ハッ・・・・ブフォアァ!?おい、てめ、映司!って、あ」
アンクは重みがなくなったことに気付いた。
「・・・・・アンク君・・・・・」
許さん・・・という声が下の地面から聞こえ、直後にライドロンが走る音が聞こえた。
それを横目に、ユキと晴人はドラゴンについて会話していた。
「で?ドラゴンはどうなったんだ?」
「僕が・・・吸収してしまいました・・・・。そこで剣崎さんと、乾さんに会ったんです」
「そうか・・・サバトはそんなことの為に・・・」
深く考え込んでいた晴人に、リーファがそろそろだよと言いながら近寄ってくる。
ユキの隣を飛ぶリーファは、お礼を言った。
「あの・・・あの時はありがとうございました」
「え?君、僕と会ったことあったっけ・・・あ、そうだ。思い出した」
「竹刀もって不良に絡まれてた子だよね。お礼なんていいさ」
「?何でですか?」
「僕は・・・大切なものをいつも守れないから・・・。クズだから・・・」
たとえ偽物の記憶でも、僕の記憶なのは確かだ。
「自分でクズなんて・・・言わない方がいいですよ」
「暗いことばっか考えてると、人って簡単に壊れちゃうから」
「そうだぞ、少年」
ユキの腕をつかむ響鬼が、口を開いた。
「ところで寂しいから、俺も話に入れてくんないかなぁ・・・。孤独すぎて死にそう」
「すいません、響鬼さん。・・・リーファちゃん、ちょっと響鬼さんあずかっといてくれる?」
響鬼をリーファに預けたユキは、キリトの方へと向かう。
「キリトさん・・・お久しぶりです」
「ああ、久しぶりだな・・・」
「アスナさんも・・・帰って来てないんですか?」
「ああ・・・・俺は、取り戻すためにここまで来た」
「そうだ、うれしい知らせがあるぞ」
「うれしい知らせ・・・ですか?」
キリトのポケットから光を放ち、うれしい知らせは目の前に現れた。
「あ・・・」
「お久しぶりです、ユキさん!!」
「ユイちゃん・・・!」
ユイ。ダグバに浸食され、挙句の果てにカーディナルに消去された少女。
「生きてた・・・生きてた・・・。良かった。良かったよう」
ユキの顔が涙でぐしゃぐしゃになる。
五代さん・・・僕、守ることができてました。身近な人の笑顔・・・。
「ひとつ聞いていいか?」
「なんでしょう?」
「リズベットはどうなった?」
「リズベット?・・・・・・あの女の子ですか?カナリアが頑張って、リアルの方に戻しましたよ」
「そうか・・・」
僕らはそのまま、スイルベーンへと話しながら向かった。
後書き
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