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リリカルなのは~優しき狂王~

作者:レスト
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2ndA‘s編
  第十四話~覚悟と意思~

 
前書き
明けましておめでとうございます。

年末に投降する予定が、かなり遅くなってしまいました。
読者の皆様には今年も自分の作品を読んで感想を書いて頂ければと思います。

では本編どうぞ

※3月7日:冒頭追加しました 

 


海鳴市・海上


 視界が狭くなってくる錯覚を覚える。
 後から思えばかなり危ない状態になっていた事に気付くのだが、ライは文字通り身体を貫いた衝撃を受けてそんな事を考える余裕もなかった。
 口を塞ぐように顔を掴まれているため、自分の胴体が今どうなっているのかを正確に把握することはできなかったが、身体が何らかの致命傷を受けた事は腹部から感じる熱と痛み、そして異物感から察することはできた。
 痛みで擦り切れそうになる思考を働かせ、次に自分が取るべき行動をほぼ機械的に脳が身体にとらせはじめる。
 喉元からせり上がってくる嘔吐感。それが何であるかよりも、今口を塞がれている時にそれが来るのが問題である。

(使用制限解除、MVSの使用を最優先)

 対人戦では使用を禁じていた機能を思考処理で解凍しながら、ライはその腕に握ったものから伝わる振動を確かに感じる。
 まだ腕の感覚がハッキリしていることに感謝しつつ、ライはその手に握った物を振るうことに一切の躊躇いを見せなかった。
 耳障りな高周波の音が辺りに響く。それはMVS形態の蒼月で闇の書から生まれた“マネキン”の腕とライ自身を貫いた杭を断ち切った音であった。

「…!……!!ッ、ウェ、ゲハ!」

 支えを無くし、真っ逆さまに海に落下して行くライは絶たれてなお自分の顔を掴んでいる腕を引き剥がし、喉元までせり上がってきていた液体を窒息から免れる為に吐き出した。
 落下しながらでもはっきり見えたその液体の色は赤く、予想通りの色であった事にライはどこか虚しさを覚える。

「…………ああ、冷たそうだ」

 そんな事を最後に呟き、ライはそのまま冬の海にダイブした。



海鳴市・市街上空


 その一部始終を高町なのははモニターを通して見てしまっていた。
 彼女はコンディションがある程度整うと、アースラから事件の終息の為に行動を開始した。当初は闇の書の騎士であるヴォルケンリッターに事情を聞くため、再び彼女たちと会おうとしたのだが自分が気絶している間にそういう段階ではなくなっていたらしいと彼女は説明される。
 そして、闇の書の管制人格が出現し、このままでは海鳴市どころか地球そのものが消滅する可能性があることも教えられた。
 その為、現場に急行し何とかして管制人格の鎮圧か若しくは説得を行おうとしたのだが、それよりも早くライ・ランペルージの行動の方が早かった。
 彼が何を目的とし、そしてどうしてこの事件に関わるのか、なのは自身もよく知らない為最初は混乱するしかなかった。だが、それでも自分や親友であるフェイトを助けてくれた事のある彼を疑うことをしていなかった彼女は、大きな瓦礫が彼に直撃しそうになったのを見て思わず、彼を救おうとその瓦礫を打ち落とす。
 それが功を奏したのかどうかはなのはの知るところではないが、そうした過程を得てライが闇の書と思われる蛇でできた卵に取り付いたのを彼女は見届けた。
 しかし、そこからの展開は彼女にとっては本当に理解できるはずもない、埒外の事態であった。
 いきなり卵の中から人型が現れたと思ったら、ライを掴みそのままどこかに転移していったのだから。

「どこに?」

『なのはちゃん!反応があった!海の方に向かって!!』

 呟いた言葉に返ってきたのは、アースラのオペレーターであるエイミィ・リミエッタからの彼らの行方であった。

「はい!」

 返事を返すやいなや、彼女は海に向けて飛び始める。
 状況を把握してもらうためか、飛んでいる彼女に並走するように一枚のウィンドウ画面が開かれていた。それに映されているのは今の海上の状況、先ほどの状況と同じようにライが卵から生まれた人型に掴まれていて風景が海に変化しただけのものである。

(急いで助けないと!)

 内心で自分を急かしながら、飛行速度をあげようとしたが、それも流れていた映像を見たことでできなくなる。

「え?」

 張り詰めていた緊張と熱意がその一言で抜けるようになくなる。
 画面の中で、ライの身体が真紅の杭によって穿たれた。それを彼女は最初何が起こったのか理解出来なかった。

「え?だって、魔法は安全で……非殺傷設定が………え?」

 ぽろぽろと口から溢れる戸惑いの言葉。その内容も目に写りこんでくる映像もひどく現実味を帯びない何かに見え、彼女の思考が追いついてこない。

『なのはさん!?』

 通信で自分の名前を呼ばれるが、それに反応するような余裕は今の彼女にはない。

「赤い……血?」

 当然のことだが、彼女は血を見たのが生まれて初めてということはない。しかしそれにも程度はある。彼女がこれまで見てきたのは、あくまで日常生活で負う軽傷程度のものであり、決して命に関わるようなものではなかったのだ。
 映像の中のライが人型の腕と杭を切り裂きそのまま海に落下して行く。落ちながら彼の口と腹部から奇跡を残すように夥しい量の血が溢れていく。
 それを呆然と見ることしかできない彼女はいつの間にか、空中で静止していた。それは彼女が呆然と立ち尽くした訳ではない。目的地への到着を完了し、機械的に飛ぶことを止めたからである。これはマルチタスクの能力の高さを示しているのだが、今この場合にとってはそれが仇となった。
 目的地―――つまりは海上に到着したということは、彼女も敵との交戦をしなければならないということだ。しかし、今の彼女は既に戦意というものが存在しなかった。
 そして、今彼女が向かっていた場に存在するのは、管制人格ではない。
 ただ、自己防衛をするだけのプログラムである。

「…………あ?」

 画面を挟んだ向こう側に白い何かが見える。それがあると認識した瞬間、彼女はそちらに焦点を合わせた。
 そこにいたのは、右腕がなく、半ばで切られた杭を装填したデバイスを装着した人型であった。
 目視が出来るということは、お互いに射程圏内。そして、その人型は切られていない左腕の掌をなのはに向け、その隣には開かれた状態の夜天の書が浮かんでいた。

「――――」

 口から言葉すら零れてこない。
 なのはの心は恐怖という感情で満たされすぎていた。
 “今から放たれる魔法で私も血を流すかもしれない。”
 “もしかすれば、死んでしまうかもしれない。”
 “皆ともう会えなくなるかもしれない。”
 頭の中で広がっていくネガティブな『IF』に彼女は竦む。そういった、戦いや争いと言う闘争において最も単純かつ重い現実を彼女は生まれて初めて実感した。

「――――」

 少し離れた位置にいる人型の口が動いている。何と発声しているのかを聞き取ることはできなかったが、口が動いていくのと連動し、彼女の掌には確かに魔力の塊が形成されていく。
 もう発射されるのに幾ばくかもなく、とうとう目を瞑りそうになった時、それは起こった。



海鳴市・海中


 時間をほんの少しだけ遡る。
 ライは自由落下に身を任せたまま、海底へと沈んでいく。冬の海水はやはり冷たく、じわじわと、だが確実にライの体温を奪っていく。
 だが、ライの意識ははっきりとしていた。彼は空いている方の手で、腹部を貫く杭に手をかける。あの時、恐らく心臓を狙ったであろうその一撃を、ライは反射的に動かした手で着弾点を逸していた。もちろん、それが致命傷になったことに変わりはないが、即死しなかっただけでも御の字であった。
 杭を握った手に力を込める。そして歯を食いしばると、ライはそれを引き抜いた。

「――!!!―――――!!!!」

 海中の為、叫びは気泡となり海上に向かって行く。杭の先端の鏃の部分が傷を抉り、海水がその痛みを倍増させてくる。幸いなのはその海水が冷水であった為、痛みが長く続く前に感覚が麻痺したことであった。
 蒼月は即座にマスターの状態を把握し、バリアジャケットを展開。そのおかげで、腹部の傷からの出血量が減少していった。
 寒いからか、それとも血を流しすぎたのか、かなり緩慢な動きではあったが、次にライは自らのポケットに手をいれる。

(…………まだ)

 そのポケットに入れた手が、ライの思った通りの感触を伝えてくる。それはとても硬く、小さく、冷たかったが、今のライにとっては何よりも力強い存在としてそれを感じることができた。

(……まだ終わらない)

 海水が目に入るのを恐れて瞑っていた目を開ける。バリアジャケットの恩恵か、それとも痛覚自体が麻痺しているのかは判断できなかったが、眼球に痛みはない。

(終わらせないっ)

 内心で言葉を吐き出す。そして終わらせないために、ライは再び舞台に上がるための翼を広げる。

(パラディン)

 例えそれが報われない悲劇であろうと、彼はその舞台に立ち続けることを選んだ。

(モード・アルビオン)

 海中で銀の光が溢れた。



海鳴市・海上


 時間は戻り、闇の書の人型が魔力の砲弾を放とうとした時、突然それは起こった。
 人型直下の海面が大きく爆ぜたのだ。
 水をぶちまける大音量とそれに比例した巨大な水柱は、人型を飲み込み見るもの全てを圧倒する何かを感じさせた。
 そして上空に舞い上がった海水の塊は重力に引かれ、一瞬の豪雨を生み出す。もしこの瞬間、太陽の光が雲で遮られていなければ虹がかかっていただろう。

『なのはさん!逃げて!!』

「え?」

 その光景を呆然と見ていたなのはは、耳に飛び込んできたリンディの声に咄嗟に反応できなかった。彼女が退避を命じられたのは、水柱に飲まれた程度で人型が砲撃を中止していなかったからだ。
 しかし、それは視界が一瞬ではあるが水柱で遮られ、しかも内心で動揺していた彼女には感知できていなかった。
 なのはが気の抜けた言葉を吐くと同時に、とうとうその砲弾は放たれた。子供であるなのはどころか、大の大人ですら覆い隠せてしまうそれが彼女に迫った。
 呆然とそれを直視していたなのはに、その声は確かに彼女の耳朶を叩いた。

「ごめん、少し手荒くなる」

 瞬間、緑の軌跡が空間に残された。
 なのははいきなり振れる視界に混乱のピークとなる。そして次の瞬間には、彼女の視界には舗装された海沿いの道路と自分を抱えるライトグリーンの翼を背負うライの姿が写りこんでいた。
 その光景にまず、彼女はライが生きていた事に安堵し、次いで自分が生きていることを喜んだ。
 思わず――――というよりも、本能的に彼女は目を瞑り両腕で自分を抱きしめカタカタと震え始める。閉じられた瞳からはポロポロと涙が零れ始めていた。

「大丈夫――――大丈夫――――」

 そんな彼女をライは一言一言安心させるように呟きながら、彼女の背中を優しく撫ぜる。
 彼女を助けるため、咄嗟に彼女を抱えるようにして飛んだライは、そのまま自分の心音が聞こえるように彼女を抱きしめる。海水に浸かっていたため、決して高くはない体温と鼓動はしかし、なのはに生の実感を確かに与えた。
 その状態が幾分か続き、彼女の震えが収まる。すると彼女は今の自分の状況を把握できたのか、恥ずかしそうにしながらも道路に足をつけた。

「あ、あの、ありがとうございました!」

 勢いよく頭を下げながら、感謝の言葉を向けてくる彼女に苦笑しそうになりながら、ライは最後に彼女と別れた時のように二、三度、ポンポンと彼女の頭に手を乗せた。
 少しだけ和んだ空気が二人を包むが、そんな時間も長くは続かない。

「「!」」

 地が揺れ、コンクリートの舗装に罅が入る。そして振動により海水が海沿いの道路の基盤となっている岩の壁に叩きつけられ、その飛沫を盛大にコンクリートの地面にぶちまけた。
 その飛沫を少しだけ被った二人は急な事に一瞬焦り、キョロキョロと辺りを見回す。そして二人は振動の原因をそれぞれ見つけていた。

「……石が生えてくる」

 なのはは生まれ育った街から見える海に、見慣れない岩の針が海から突き出ていることに呆然とするしかなかった。

「火の柱……いや、マグマか?」

 一方でライの方は街の方に目を向け、そこから吹き出すように天に登る紅い柱を見上げていた。
 突然起こり始めた天変地異。それが今の状況で起こることにどんな意味があるのかを考え始めると、二人の元に通信ウィンドウが開かれる。そこに映っていたのは、未だ私服のまま指揮を続けるリンディであった。

『なのはさん!無事ですか?!』

「は、はい!」

 かなり焦った様子の彼女が発した第一声がそれであった。その彼女の声音にビクリと肩を揺らし、気圧され気味になのはは返事を返す。そのやり取りにどんな反応をするべきか分からなかったライはその二人のやり取りから視線を切った。

(…………腕は再生していない、か)

 視線を切ったライの目は自然と海上にいる人型に向かう。
 人型はレンジ内から消えたなのはを見つけようとすることもせず、ただ佇んでいる。その姿をよくよく観察すると、その人型は女性的な身体のラインと膨らみがあり、どこかギリシャ彫刻を連想させるほどバランスのとれた身体を持っていた。
 しかし、それも断ち切られた右腕と、いつの間にか再生している杭を再装填している左腕のデバイスによりただただ不気味なだけであったが。

『ライ・ランペルージさん』

「ん?」

 人型とそれに寄り添うように浮かぶ夜天の書に向けていた視線は、自分の名前を呼ばれることで再び戻すことになった。

『先ほどまでの戦闘はこちらでも確認しています。見たところ平然としていますが、腹部の傷は?』

「今は止血とバリアジャケットのおかげで特に戦闘に支障はない」

 ほぼ即答で答えたが、それは真っ赤な嘘だ。今現在、痛みは脈動するように脳に痛みを伝えてくる。気を抜けば簡単に膝が折れそうになるほど披露と痛みが、ライの身体を苛んでいた。せり上がってくる血を飲み込む作業も既に二桁を超えている。
 それでもしっかりと立っているのは、蒼月とパラディンの二機が揃ったことで使用できるチューニングシステムと、それによってCの世界から得られる潤沢な魔力による肉体の再構成――――つまりは修復を並行して行なっているからである。

「そんなことよりも今こちらで、地下からマグマらしきものが吹き出ているのを視認しているがあれは?」

『……恐らくは闇の書によるその世界の崩壊の兆しだと思われます』

「リミットまでの猶予は?」

 画面の向こうで苦虫を噛み潰したような彼女に構うことなく、ライは必要な情報を聞き返す。

『過去のデータもハッキリと残っているわけではないので、確かな事は言えませんが恐らくもうそれほどの時間は……』

「あまり時間は無いか……だが、やることは変わらない」

 最後にライが呟いた一言にリンディもなのはも絶句する。だが、本人も言ったとおり時間がほとんどない為、ライは二人に自分の案を口にしようとする。

「まず――――」

『ちょっと待ちなさい!』

 だが、説明に入ろうとしたライの言葉は画面の向こうにいるリンディに止められる。それを若干煩わしく感じながらも、ライは落ち着いた表情を貫いた。

「何か?」

『話を聞いていなかったの?!もう時間はないのよ!すぐに退避を――――』

「ふざけるな」

 今度はライが彼女の言葉を遮る。だが、その言葉に含まれた感情は彼女の“焦り”とは違い明確な“怒り”であった。

「退避?事情を把握している人間だけ?闇の書が繰り返す歴史から?」

『現実を見なさい!今貴方に、いえ私たちに何ができるというの!?打開策なんて――――』

 既にリンディの中ではライが正気を失っていると考えているのか、その言葉はどこか彼を諭すような言い回しであった。

「事情を知らない数億の命を救える。例え偽善だろうと、自己満足だろうと、押し付けであろうと、命を救うことには意義がある」

『理想論よ。そんな不確かなものに命をかけるなんて狂ってるわ』

「違うな。手に負えないと諦め、逃げ、それを正当化したところで後に残るのは後悔だけだ。そんなものを繰り返すことを最善と呼ぶほうが狂っている」

『っ!貴方にっ!!………』

 ライの言葉に反射的に怒鳴りつけそうになるリンディ。しかし、それもこれまでの自分たちの行動を全て否定されるような言葉であったのだから無理もない。更に言えば、彼女だけでなく、闇の書に苦渋を舐めさせられた人々全てを咎めるような物言いでもあったのだから、リンディが冷静さを失い叫びそうになるのも無理はない。
 だが、ここで感情的に叫びそうになった彼女も、それがただの八つ当たりである事を察し黙り込むこととなった。
 嫌な沈黙が数秒続く。ライは未だにその目に力強い意志を込めながら黙し、なのはは二人の大人が怒鳴り合っている事にオロオロし、そしてリンディは苦虫を噛み潰したように顔を顰めていた。

『……?』

 その沈黙の中、リンディは未だに行動を起こさないライを疑問に思い始める。
 時間がないことを考えれば、今すぐにでも行動を起こしそうであるのだがそれをしないということは、彼は行動を起こせない何かがあるということだ。
 そして、これまでの彼の言葉を思い出し、彼女は一つの答えにたどり着いた。

『貴方は私たちに何をして欲しいの?』

 彼女はライが自分ひとりでは結果を出せないと言っている事に気付いたのだ。
 そして、ライ自身は諦めることではなく、立ち向かうという選択を自らの意思で選んでもらう為に彼女たちとの会話を優先した。

「感謝する」

 短い感謝の言葉。簡素ではあるが、そこには確かな喜の感情が込められる。

(律儀な人ね、それにとんでもないお人好し…………上から目線ではあるけれど)

 内心でそんな事を考え、最後に毒づきながらも、彼女はライからの言葉を待つ。

「まず、前提として今闇の書の人型は腕の再生を行っていない」

 ライの言葉に合わせるように、ライとなのはの中間地点の空間に映像ウィンドウが開かれる。そこには、今現在の人型のライブ映像が映されていた。そこに映る人型はライの言葉通り右腕が切られた状態を放置し、今もその壁のような断面を見せていた。

「そしてあの人型は管制人格の代わりだ。だが、再生を行っていないということは、あくまであれは急場しのぎの使い捨てだと予想できる」

『少し待ちなさい。そもそもどうして管制人格は取り込まれたというのですか?』

「…………彼女は滅ぶことではなく、生きることを望んだ。それをエラーと――――機能不全と受け取った闇の書が彼女から自己防衛権限を奪った」

 それを聞かれたライは少し顔を顰めたが、正直に答える。それを聞いたリンディは今度こそ目を見開いて驚いていた。

「それについての追求は後にして欲しい。――――彼女からその権限を奪う際に、闇の書のシステム音声はこう告げた『自己防衛権ヲ防衛プログラム、ナハトヴァールニ移譲』と」

 ライの言いたいことを理解しきれないのか、その話を聞いている二人は、一様に首を傾げる。そしてそんな二人にライは結論として自分の考察をまとめとして告げる。

「人型が彼女の代理であるのであれば、人型を破壊、若しくは行動不能にし元の管制人格を引きずり出す」

『例えそれができたとしても世界の崩壊は――――』

「闇の書の暴走の原因は異様な改造を受けた防衛プログラムだ。少なくとも人型が防衛プログラムの一部である以上はあれにダメージを与えることで時間稼ぎにはなる」

 ある意味で追求すべき部分が多々ある説明ではあったが、一応の筋は通っている。そう感じることができる説明であったとリンディは感じた。そしてなんの策も持っていない自分と比べれば、賭けてみる価値はあるという結論に至る。

『…………勝算は?』

「死ぬ気はない」

 その迷いない返答により、今度こそ方針は決まった。
 
 

 
後書き
という感じの話でした。もっと話進むと思えば、意外と進めませんでした(^_^;)

最後の方は駆け足気味でしたが、時間がない状況のなか、リンディというある意味で知将を動かすにはこれぐらいの強引さがなければ無理かなーと思いながらこんな展開にしました。

次回は少し早めに投稿できると思います。

もうAsも残るとこあと僅かです。自分としてもとっととVibidに行きたいので頑張りたいと思います。
では、今年もよろしくお願いしますm(_ _)m

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