天然格闘少女
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
7部分:第七章
第七章
しかしその追い打ちを受けても彼は。まだ立っていたし応えてもいたのだった。
「まそれだったら」
「いいわよね」
ここで涼花のにこやかな笑顔だった。
「喜んでくれたから」
「喜んでくれたら、か」
「デートってね。聞いたんだけれど」
そして涼花はさらに彼に言ってきた。
「お父さんとお母さんにね」
「渡部さんの?」
「うん、うちのお父さんとお母さんにね」
彼女の両親からだというのだった。
「聞いたけれど。楽しんで喜ぶものなのよね」
「まあそれはね」
この言葉には頷くことができた。はっきりと言ってしまえばその通りである。彼もこの言葉そのものには何の異論もないのだった。
「その通りだよ」
「じゃあ今日のデートは成功ね」
涼花の能天気な言葉は続く。
「だったら」
「そうだね」
少し頭の中で考えたが言われてみればその通りである。だから頷くことにしたのだった。
「それはね」
「じゃあ今度の日曜もデートする?」
何と涼花の方からの提案であった。
「また孝と一緒に」
「三人一緒になんだ」
「駄目かしら」
ここで暢雄の顔を無意識のうちに覗き込んできた。
「それじゃあ」
「ええと、それはね」
正直なところ今日はもうかなり疲れてしまった。それが誰のせいかはもう言うまでも、考えるまでもなかった。結論から言ってもう勘弁して欲しい話であった。しかし。
今の涼花の覗き込んできた顔を見るとそれをどうしても。断れない自分がいることにも気付いてしまいどうしても断ることができなかった。
そして断れないと出す言葉は。これしかなかった。
「わかったよ」
「いいのね」
「うん、いいよ」
その顔を見てはこう言うしかないのだった。
「それじゃあ今度の日曜もね」
「三人でね」
「デート、しよう」
このことを約束する。暢雄にとっては不本意だったがそれでも悪い気はしなかった。それがどうしてかは自分でもはっきりとはわからなかったが。
このことはすぐに学校の中で話題になった。この弟連れのデートのことは。
「赤ちゃん連れってねえ」
「あいつも気の毒だったな」
「いい薬じゃない?」
「そうよ、あいつにはね」
あいつが誰かはもう言うまでもなかった。
「いつもいつもお調子者なんだから」
「たまにはいい薬よ」
「そうそう」
女の子達からの意見である。やはり女の子は怖い。
ページ上へ戻る