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D.C.Ⅲ〜ダカーポⅢ〜 己の守る物の為に

作者:双葉雷華
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第一章 桜の秘密
  プロローグ 始まりは記憶の中にて

 
前書き
この話の流れは基本的にはD.C.Ⅲのストーリーの感じで進みますが、一部違いがあります。 

 
ゆっくり景色が動いている。俺が歩いているわけではない。では何故景色が動いているのだろうか?
その答えはすぐに判明した。足元を見ると床がエスカレーターになっており、ゆっくりとうごいていた。
これは勿論電動ではない。聞いた人間が精神科を勧めるかもしれないが、これは魔法で動いている。
そして目の前には海と見間違うほどの大きさもある湖ー地底湖が広がっており、そしてポツポツと島のようなものが見える。
これが俺達がこれから過ごし、学ぶ場所。いつかは魔法使い社会で最も影響力を持つことになる学び舎の園だ。
俺はここに友人とそして俺の恋する相手と共に俺らを呼んだ人物に会いに行った。
ー高秀、ねえ高秀ってば。
急に頭の中に想い人の声が聞こえてきた。
「ジル、あんまり揺らすなよ。酔うだろが」
ーそんなこと言ってる場合じゃないってば、立夏が怒ってるから起きてよ。夢見てる場合じゃないよ。
夢?そうかこれは前世の記憶の夢か。
そんなことを考えていると頭を衝撃が襲い、俺は意識は覚醒した。
目を開けるとそこには俺を見るジル(恋人)の顔があった。
「……ジル?もしかして俺、寝てた?」
俺の質問に時流は頷く。
今俺を心配そうな目で見ていたのは俺のクラスメイトであり恋人でもある愛川ジルだ。
俺とジルは前世でも恋人でもあり、夫婦でもあった。そのためコイツのベタ惚れさは半端無い。
共通の親友が『見てるだけで砂糖をドバドバ吐きそう』と答える程だ。
ジルと逢ったのは小学生の時だ。そして偶然なのか2人して前世の記憶を持っていて、今に至るわけだ。
「えっと……ここは…………新聞部部室?」
そこに俺のように寝ていた男子の声が聞こえてきた。
「ご名答〜。お目覚めの気分はどうかしら。芳乃清隆君、藤堂高秀君?」
「「うっ」」
そこへ部室の黒板側から冷静だが棘を含んだ言葉を投げかけられ、状況を飲み込む。
今は放課後で場所は『公式新聞部』の部室。卒業パーティー号の編集会議の真っ最中で、俺は不覚にも清隆と一緒に見事に居眠りしてしまったようだ。
「私の話の途中で居眠りするなんて随分といい度胸じゃない。言い訳ぐらいなら聞くけど?」
その声の方を向くと、顔は笑っているが目が笑っていない人物ー俺達の所属する『公式新聞部』の部長であり、俺やジルの所属している生徒会の一員である、森園立夏が立っていた。
金糸のような金髪、大きめのサファイアブルーの目、スッと通った鼻筋にそれなりのボリュームのありそうな胸。さらにスラッとした脚。抜群のプロポーションに明るく行動的で人懐っこい性格、誰とでも分け隔てなく接する態度も相まって人気があり、学園のアイドルと言われている。
「「いえ、ありません。すいません立夏(さん)」」
彼女の問いに俺達は反論する要素もないので素直に謝る。
「もうっ、ちゃんと聞いてよね。昨日寝ないで考えてきたんだから」
こっちの謝罪に怒るというよりも拗ねたような口調で見ながら唇を尖らせる。
「まあまあ立夏、タカくんも悪気があった訳じゃないんだし。それに反省してるみたいだし、許してあげて、ねっ?」
「そうだよ立夏?高秀は昨日の仕事の手伝いで疲れてるんだから」
そんな立夏を諫めようとしてるのは清隆の従姉ででハーフの芳乃シャルルとジルだ。
シャルルもまた学校では人気を集める女子の一人だ。風紀委員長である江戸川四季の弟である江戸川耕助によると、
立夏はみんなの憧れ学園のアイドルで、奴ら一般生徒にしてみれば話すことさえ祝着至極らしい。
シャルルの方は妖精のような笑顔と余りにけしからん過ぎるナイスバディの持ち主だそうだ。
ジルの評価は誰とでも優しくまるでナースのような笑顔の持ち主だそうだ。
その評価は分からなくはないが、大々的に宣言するものでもないと思う。
「そういうシャルルもこっくり、こっくりしてたよね。ジルに至っては姫乃に惚気てたでしょーが」
2人の発言に立夏が呆れた様に言い返す。
「「あははは、バレてた?」」
2人が苦笑いを浮かべながら目をそらす。
「高秀さんは仕方ないとして、2人して夜中の遅くまでゲームなんてやっているからですよ」
そんな清隆にものをいうのは俺の後輩で清隆の幼馴染の葛木姫乃。家はなんとお隣さんで、よく家族ぐるみで旅行なんかに行ったので兄弟みたいなものらしく、それが姫乃の清隆への兄さんと呼ぶ所以だそうだ。
「しかたないだろ、なかなか桜水流の逆鱗が出なくてーって何で知ってるんだよ?」
姫乃の非難の言葉に清隆が言い訳しようとするが待ったをかけて知っている理由を尋ねた。
「団地の壁が薄いの兄さんだって知ってるでしょ?シャルルさんと夜中まで燥ぎ過ぎ」
そういや、あそこの団地結構壁が薄くて騒いだらご近所に迷惑掛かりやすかったけ。
「でもこっちには姫乃の声なんて聞こえてこないぞ?」
清隆が顎に手を当てて考え込むように言う。
「当たり前ですっ!私は兄さん達と違って大きな声とか出さないし」
清隆の言葉に姫乃が声を強めていう。
「あっでも、偶に妙に色っぽい声が聞こえてくるような。暑ぽくってくぐもった声でー」
清隆の言葉に姫乃の頬が赤くなる。
「し、してないですっ!そんなことしてないですっ!セクハラですっ!」
姫乃が拳を振り上げる。
まあ、どうせ寝言で清隆のことでも呟いてるのが漏れ聞こえただけだろ・・・・
「してないって何を?セクハラって何が?」
「あっ⁉︎」
清隆の言葉に姫乃はしまったとでも言いたげな表情をした後、椅子に座り直し咳払いを一つした。
「と、とにかくっ!夜中は静かにすること!。後、聴き耳立てるの禁止!」
子供を諭す母親のような口調で話す。
「分かったよ」
「で、さら」
「は、はい?」
立夏に呼ばれ反応するのは瑠川さらだ。
さらのことはよく知っている。さらの父親とは顔見知りでとても気さくで優しい人だ。そして何より夫婦仲がとてもいい、俺の親父が羨むほどにだ。また紅茶を淹れるのが得意で偶に俺も教えてもらっている程だ。仕事熱心で素晴らしい人だ。
さらはそんな父親のおかげか、とても真面目で優等生で博識だ。まあ学年2位しか取ったことのない俺が言ってもなんだが………
無論、前世でもさらは優等生だが、
「そこのネボスケも起こして」
立夏が見る視線の先にはテーブルに腕枕をして爆睡している生徒がいた。
「分かりました」
さらはそう言って席を立ち隣で爆睡している部員を起こしにかかる。
その生徒ー陽ノ下葵は、一言で言ってアルバイト大好きっ子だ。えっ?それじゃあ二語だって?んなもんは気にするな。
とにかく言った通りアルバイトが大好きなんだが、身体がそんなに丈夫じゃない。前世そうでもなかったが、死が関係してるのか?
そんな葵をさらがゆさゆさと揺すって名前を呼ぶ。
「葵ちゃん、起きてください」
「む、無理です〜」
「無理って、森園先輩が睨んでますよ?早く起きないと……」
葵が無理と言うとさらが今の状況を説明しながら、懸命に起こそうとする。それを眺めながら、俺はさっき見た夢について考えていた。
空から地表へと続くエスカレーター、海と見間違うほどの地底湖………
間違いない、俺の前世の記憶だ。そんな俺が心配なのか俺の顔を覗き込んでくるジル。
「もしかして、前世の記憶でも見えたの?」
他のみんなに聞こえないように小声で話しかけてくる。
ここにいるみんなには内緒だが、俺とジルには生まれる前の記憶がある、いわゆる前世の記憶ってやつだ。
俺は血の繋がりがあるからか前世同様に魔法使いだ。
「ちょっと、そこのバカップル。聞いてるの?」
立夏の声に俺らは苦笑しながらも話を聞くために立夏の方を向いた。 
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