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とある3人のデート・ア・ライブ

作者:火雪
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第五章 楽園
  第16話 言えなかった想い

 
前書き
どうも、ラーフィです!

クリスマスなので(何と無く)投稿しました!今年も残り少しですね!

新年が明けたら投稿したいと思います!

では、どうぞ

 

 

新天宮市タワーから抜け出した士道と上条は高台公園へと来ていた。

士道「大丈夫か、上条?さっきお前血まみれだったはず……」

上条「それなら大丈夫だ (神裂に緊急用の回復魔術教えてもらってて良かった……でもまさかこの俺が魔術を使えるなんてな……)」

竜王の顎になったことで魔力が形成され、魔術を使えるようになった上条だったが、もちろん魔術なんて使えないので神裂に教えてもらったのがそれである。






結局、あのまま凜袮は消えていなくなった。ハッピーエンドな展開なんて訪れなかった。

結局分からずじまいだった。

どうして結界を張ったのか。

どうして士道を殺そうとしたのか。

士道「上条……ちょっと聞いてもいいか?」

上条「……何だ?」

士道「凜袮は……結局何が目的だったんだ……?」

上条「……」

彼は、答えなかった。






と、突然。

?「大丈夫かい?シン、上条くん」

この高台公園に現れた人物がいた。

上条「令音さん……俺は大丈夫です」

士道「……さすがにまだ、堪えてます」

令音「ふむ……上条くんがいるってことは、もう既にこの現象について話し終わったのか」

士道「へ?それはどういう……」

令音「ん?……まだ話してなかったのか。このことについては君が一番詳しいだろう?ならば君の口から話すべきだ。私の知らないことも知っているはずだからね」

上条「……そうですね」

彼は、少しうつむいた。

そして、覚悟を決めたように、大きく息を吸った。

上条「士道。今から話すことは全て真実だ。いいな?」

士道「あ、あぁ……」

上条「……これから話すことはお前にとって全て有益な情報とは限らない……それでも聞くか?」

士道「……当たり前だ。俺は真実を知りたい」

上条「……なら話す。………全ての始まりは、6月27日だったよ」



6月27日。

つまり、



士道と凜袮が折紙の家で一緒に勉強した日。



上条「あの日、俺は公園で士道と凜袮が話してるのを見てたんだ。それでお前らがどっか行った後、俺は凜袮を追いかけた……」

士道「何で……?」

上条「……士道。お前、もう記憶が全部戻ったんだよな?」

士道「あ、あぁ……」

上条「なら覚えてるだろ?凜袮の家に行った時のこと」

士道「もちろん。部屋の中が俺の家とそっくりで………って、何で上条がそれを……ってまさか!?」

上条「あぁ。そのまさかだ。俺はあの日の記憶がある。消されずに、ずっと残ってたんだ」


だからこそ、凜袮を追いかけた。


上条「俺は真相を確かめたかった」


ーーーー
ーーー
ーー




6月27日。


上条『凜袮!』

凜袮は驚いた顔をしながら振り向いた。

凜袮『どうしたの当麻。家の方向違うよね?』

上条『……ちょっと聞きたいことがあってな』

凜袮『ん?何?』

上条『昨日、俺は凜袮の家に行った』

その刹那、

凜袮『……………え?』

凜袮から笑顔が消えた。

上条『″一回目″行った時は家の中にも入ったよ。そうしたら士道の家のリビングと全く同じ。そして急な頭痛。俺は意識を失った』

凜袮『…………何で、どうして……』

上条『起きたら次の日に経ってはなかった。″二回目の6月26日″を体験した。その時は凜袮の家の前まで行って帰ったけど……その時には頭痛がなかった』

凜袮『………ちゃんと、機能してる……はずなのに……』

上条『……』

凜袮『何で……?どうして……?』

上条『……それは多分、俺の右手のせいだと思う』

凜袮『……?』

上条『俺の右手は幻想殺しって言って、どんな異能の力でも打ち消すんだ。多分、その記憶の消去が出来なかったのもそのせいじゃないのか?』

凜袮『ッ!!?』

上条『……やっぱりか。何か隠してるとは思ってたけど……』

凜袮『……なら、世界をやり直して……!!』

上条『世界を改変しても、俺の記憶は残るぜ?』

凜袮『………』

上条の言葉を聞いて、凜袮は諦めたかのようにフッと微笑んだ。

凜袮『…………そうだよね。うん、全て私がやったの。私の家の時も、士道達に″私と士道が幼馴染み″っていう記憶を植え付けたのも……』

上条『……凜袮。聞かせてくれ。お前は何者なんだ?何でこんなことをしてるんだ?』

凜袮『……じゃあ、私の正体から明かそうかな。………私は精霊。ちょっと特殊のね』

上条『特殊?』

凜袮『そう。正確に言えば精霊じゃないの。……なんて言えばいいかなぁ……そうだね。巨大な霊力の残骸が意志を持った、とか言えば分かるかな?』

上条『えっと……』

凜袮『本体が無いの。普通の精霊は霊力を封印しても本体は残る。でも私は違うの。その本体がないから霊力を封印したら消えちゃう』

上条『ッ!?』

凜袮『そういうこと。驚いた?』

上条『……凜袮、お前……』

凜袮『ついでに私の力、〈凶禍楽園(エデン)〉のことについても教えてあげる。当麻も気づいてると思うけど……』

上条『まさか……』

凜袮『そうーー』












凜袮『世界をやり直す力……』











上条『ーー!?』

凜袮『結界の中に存在する世界を望む結果が出るまでやり直すことができるの』

上条『じゃあ、俺と士道が凜袮の部屋に入ったのは……』

凜袮『私が望まない結果だよ。秘密がバレたら困るもん』

上条『……何のためにこんなことを……』

凜袮『そういえば当麻の二つ目の質問に答えてなかったね。私が何でこんなことをしたかっていうとーー』











凜袮『士道のためなの……』











上条『……は?』

凜袮『当麻。今、士道が琴里ちゃんの回復能力を持ってないこと……そして精霊の力が不安定なことは知ってるよね?』

上条『知ってるけど……』

凜袮『あれの全ての原因は士道のストレスが原因……』

上条『ストレス……?』

凜袮『そう。士道は精霊とのデートを成功させるためにプレッシャーや責任感とずっと戦ってきた。失敗は許されない状況で疲れやストレスが溜まっていって……この前の体調不良もその一つ』

上条『そういや、あの風邪、特に異常はないって言われて……』

凜袮『うん。でもね?十香ちゃんが屋上で暴走したの、覚えてる?』

上条『………まさか、あの日に……』

凜袮『そう。あの日に結界を張ったの。だから十香ちゃんの力が暴走した』

上条『(俺の幻想殺しが急に覚醒し出したのも、そのせいか……)』

凜袮『でもね?十香ちゃんの力が暴走したのは……いや、正確には暴走したのは十香ちゃんじゃない。士道自身が暴走したの。度重なるストレスや体調不良によって……』

上条『だからこの結界を作ったのか。全ては士道のために……』

凜袮『士道が少しでもリラックス出来れば……って思ってね』

上条『……』



凜袮の言葉を全て聞いて、

上条は思った。





一体自分は何のためにいるんだ?と。






自分は何のためにここにきた?

ーーそれは精霊の調査をするため。

そのために、自分はどうしろと言われた?

ーーそれは士道のサポートと言われた。


何がサポートだ。何一つこなせてないじゃないか。

士道を安心させることも。アドバイスすることも。守ることさえも……

付け加えれば、自分が入院して心配かけさせたのも事実だ。


そう。







自分は何一つとして士道をサポートなどできていない。







一方通行は圧倒的な力とその信頼感で士道や琴里の役に立っている。

佐天にはいつもの明るさと笑顔でみんなを温かくさせる。

じゃあ俺は?

俺は士道達に貢献したことなんてあったか?

不幸に恵まれ、頭も悪い俺は一体何をしていた?

十香が現れた時は?

ーーその場にいただけだ。

四糸乃が現れた時は?

ーー吹雪に吹き飛ばされて壁に激突して気絶して、迷惑をかけた。

狂三が現れた時は?

ーー幻想殺しを覚醒までしたのに敗北した。

琴里が精霊になった時は?

ーー自分は入院していた。

思い返しても思い返しても思い返しても思い返しても、結果は変わらない。

凜袮がやろうとしていることを、自分は出来ていない。




だからーー




上条『凜袮。協力させてくれないか?』

凜袮『………え?』

上条『俺は今まで士道に対して何も出来なかった。サポートという役目があるのに何一つこなせなかった。俺はそんな自分が悔しい。だから俺に挽回する機会が欲しいんだ。無理を言ってるのは分かってる。でも……でも……!』

凜袮『………その気持ちだけでも充分嬉しいよ。でも当麻、それをするとみんなを敵に回すことになるんだよ?それでもいいの?』

上条『別にいいさ。………それが、俺が望む結果になれば……』

凜袮『そう………ふふ、ありがとう。これから一緒に頑張ろっ!士道のために……世界のために……!』

上条『あぁ!』

こうして、俺と凜袮の想いは一つになった。


ーーーー
ーーー
ーー




士道「そんな……」

上条「これが……あの時の全てだ。あの日を境に俺と凜袮は手を組んだ。全ては、士道のためにな……」

令音「……やはりそうだったか。シンが死ぬ度に世界をやり直してきたのもそのためなんだね?」

上条「はい……」

士道「りん、ねは……俺を殺そうとしたん……じゃ、なくて……」

上条「士道のことが好きだからこそ、この道を選んだんだ。士道が幸せになれば……自分はどうなろうと関係ないってな……」

士道「あ……あ……」

声が、震えてきた。

上条「……凜袮は精霊の力を暴走させてなんかいなかった。利己的な欲求で閉じ込めたわけでもなかった」

士道「そ、んな……」

上条「全ては士道、お前のためだ。己の身を削りながら……再生の炎を失った士道が死んでしまわないように、助けてくれてたんだ」

士道「凜袮……」

上条「……ルーラーはお前を守るため……それだけのためにこの世界を作ったんだ」

士道「俺は、何も……知らない、で……凜袮を……凜袮を……!!」

上条は士道を見据えて、そして告げた。

上条「……誰が凜袮を恨もうが知ったこっちゃねぇけど……士道、お前だけは……お前だけは凜袮の決意を恨まないでくれ!これは……俺からのお願いでもあるんだ!」

士道「……ッ!!?」

上条「するなら、後悔や謝罪じゃなく感謝をしてくれ……多分、凜袮もそれを望んでると思うぜ……」

士道「……」

令音「そうだ。新天宮市タワーが崩壊するとき、こんなものが落ちてきたんだ。心当たりはないかね?」

と、渡されたのはーー

士道「ーーーー!」

上条「……これは」

確か凜袮が……





凜袮『ありがとう!大事にするね!』




………

士道「……すいません。一人にさせてくれませんか?できれば上条も席を外してほしい……」

上条「…………あぁ」

令音「分かった。理由は聞かないよ。でも間もなく〈凶禍楽園(エデン)〉は崩壊する。それまでに言うことがあれば……急ぎたまえ」

こうして、上条と令音はフラクシナスへと帰って行った。
















最後に凜袮とデートしたのもここだ。

もう凜袮はいない。

手渡された小袋に入っていたのは、やっぱり『鍵』だった。

そう。これは士道と凜袮が『幼馴染み』だった証だ。

失くした時だって、あんなに慌ててたのにさ……


士道「大事に、するって言ったろ……?責任持って、ちゃんと保管しろよ……でないと、分かっちゃうじゃねぇか……朝、起こしてくれないことも……美味しいご飯を、作ってくれな、い……のも……」

士道「ずっと、一緒にいて、くれるん……じゃ、なかったのかよ……」



































士道「凜袮えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」






























彼がその時みた夜空は、とても輝いていて、







まるで、微笑んでいるようで、








こんなことを言っているようだった。

































″ありがとう″………と。


























 
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