ロックマンX~5つの希望~
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第六十一話 真実
前書き
ルミネ戦開始。
何もない白い空間でアクセルはふと足を止めた。
振り返ると同時に首を傾げた。
レッド『どうした?アクセル。』
レッドには何も聞こえなかったらしい。
アクセルは丸い瞳で問う。
アクセル『音が聞こえなかった?爆発みたいな音』
レッド『いや?何も聞こえなかったが。…大体爆発なんてあるわけねえだろ?平和なんだからよ。俺達レッドアラートがいる限り、イレギュラーなんてのさばらねえよ』
アクセル『そうだね、レッド』
星空の下で、松明が揺らめいている。
限りなく黒に近い空に星々が瞬き、月の宮殿を照らしている。
神秘的な光の中、シグマの屍が無粋に横たわっていた。
粉々の破片からは、生命がないことは明らかである。
エックス達は武器を構えたまま、破片の熱が急激に下がるのを見つめていた。
シグマの熱が完全に消失する。
エックス達はようやく息をついた。
その時である。
純白と紫を基調としたボディのレプリロイドが現れたのは。
女性と見まがう美貌は微かに笑っていた。
ルナ「ルミネ…」
エックス「よかった…無事だったんだな」
安堵したエックスが呼び掛ける。
ゼロもルインも緊張を緩めた。
だが、ルミネはそんな彼らを見て薄く笑い、冷めた声で呟いた。
ルミネ「無事…?勿論ですよ。皆さんもシグマを倒せて満足でしょう?おかげで計画も、ここまで順調ですよ」
ほくそ笑んだ呟きにエックス達が息を呑んだ。
ルナ「ルミネ…てめえはシグマに連れ去られて利用されたんじゃねえのか?」
ルミネ「利用…?違いますね…」
彼は瞳を細め、シグマの、恐らく頭部だった破片に足を乗せた。
ルミネ「彼は役目を果たしただけです」
軋んだ音が音量を増す。
ルミネは右足に力を込めると、一気に踏み潰した。
ルミネの目に冷たい狂気の光が宿る。
ルナ「役目だと…?」
ルミネ「そうです。私達、新世代型を目覚めさせ、世界を変えるという役目をね」
ルミネのうでが円を描くように振られ、八色の光が取り巻いていた。
光は美しく、中心にいる少年の容貌によく似ている。
天使を思わせる顔と肢体。
だが、纏うオーラはどこか禍々しい。
ルミネは神の如き傲慢な笑みを浮かべ、地に降り立つ。
細く白い腕を突き伸ばして、掌からエネルギーを放った。
地面から光が漏れ、透明な水晶壁が出現する。
ルイン「これはトリロビッチの必殺技か!!?」
ルミネ「そうです。これもコピー能力の応用ですよ。私はあなた方が倒したレプリロイドの技を全て使えるのです。例えば…」
ルミネが手を天に翳すと凄まじい冷気が手から放たれ、雪の結晶を降らせる。
ルナ「イエティンガーのスノー・アイゼン…」
ルミネ「私は新世代型レプリロイド…レプリロイドの能力を完璧にコピー出来るのです。アクセルやあなたのようなプロトタイプとは違うのですよ」
ルナ「っ!!」
即座に彼女のバレットが火を噴いたが、ルミネの身体に傷を付けることは叶わない。
ルミネ「効きませんね…だが、それでこそ、愚かなる者達に相応しい」
ルナ「てめえにアクセルの何が分かる…!!」
ルミネ「彼は失敗作でした。せっかくシグマの力で覚醒したというのに。あなた達に打ち負かされた」
ルナの言葉にルミネは歌うように答えると、彼は昔を思い出すように遠い目をした。
ルミネ「ああ、そういえば彼は必死に抵抗していましたね。私も捕らえられていたので、直接見たわけではありませんが、エックスとゼロと戦うことを心から拒んでいたようですよ」
ルナ「………」
その言葉に少女の目元が少しだけ歪んだ。
ルミネは彼女の反応に気分をよくしたのか、彼が信じてやまぬ存在理由を、演説でもするかのように手を振りかざしながら語る。
ルミネ「アクセルは使命を解さなかった失敗作だった。だが、私達完全なる新世代型は違う。旧き者を滅ぼし、新たな世界を創る。そのために私達は生まれたのです」
古来から翼を持つ者は空を我が物顔で飛び、地を這う者を見下ろしていた。
それは高みから平民を見下す貴族に似て優雅で、同時に傲慢である。
技術が発展し、月まで飛べるようになっても、例え古代から西暦21XX年という長い年月を経ても、心などはそう簡単には変わらない。
エックス達もまた上空のルミネに対して、屈辱的な気分になる。
今のルミネは万能をひけらかす神そのものであった。
宙に浮かぶ姿は、芸術品のような美しさで、見る者誰もが息を呑まずにはいられなかった。
しかしそれは称賛する類の美しさではなく、息を呑み、恐れる種類のものである。
ルイン「一体何なの…?あなたもイレギュラーなの!!?」
ルミネ「イレギュラー?」
戸惑いのまま叫ぶルインの問いにルミネが答えるのを、ゼロもエックスも待つ。
問われたルミネはとても心外そうに彼女を見据えた。
ルミネ「そんなものでない事は…私が正常そのものであることはあなたも分かっているのでは?私に攻撃が出来ないのは、それに気付いているからでしょう?」
ルイン「………」
ルインはルミネの言葉に沈黙した。
自身の躊躇いを見透かされている。
ここで自分がルミネを撃つことは本当に正しいのかと、迷い葛藤してしまう。
ルミネは静かに瞳を閉じると、まるで資料を読み上げるように言葉を紡いでいく。
ルミネ「あなた方も知っている通り。私達、新世代型レプリロイドのコピーチップには、一部のプロトタイプを除いて、数多くの旧世代型レプリロイドのデータを元にして造られました。その中には当然。あの最強のイレギュラーであるシグマやVAVAも含まれています。あらゆるレプリロイドを解析し、優れた能力を継承したのです。あなた方に分かるように言えば、我々は最強のイレギュラーたるシグマをも凌駕したのです」
全員が息を呑んだ。
それを見たルミネはエックス達を嘲笑う。
彼が視線を向けるのは旧世代の別方向の進化を遂げた者。
ルミネ「ルイン…あなたに私達が撃てますか?例え人間から進化した者といえど、新世代型のプロトタイプにも劣る人の道具に過ぎないあなたに…進化し、人とレプリロイドを超えた完璧な存在たる私達に何が出来ると?」
ルイン「…………」
ルインはバスターを構えたまま、硬直している。
本能で分かっているのだ。
彼はイレギュラーではないと。
自分の意志でこの世界に反逆しているのだと。
ルミネ「世界は変わったのです!!生命が、より進化した生命に取って変わられるのは自然の摂理です!!」
身体の向きを変えたルミネは、遥か彼方に小さく見える地球に向けて手を翳し、そしてルミネが翳した手は、地球を掌握するように閉じられた。
ルミネ「人類も旧きレプリロイドも共に不必要な存在…。大人しく、滅んでおしまいなさい!!」
ルインが、思い悩む心に押し潰されそうな苦しさに耐えきれずバスターを下ろしかけた時。
蒼い閃光、チャージショットがルミネに直撃した。
ルミネ「…っ!!?」
予想していなかった攻撃にルミネはのけ反った。
彼の右肩のアーマーは高出力のレーザーチャージショットにより刔られていた。
撃ったのはエックス。
激しい怒りを瞳に宿しながらルミネを見上げる。
エックス「ルミネ…お前はイレギュラーだ!!」
エックスが叫んだ時、全員がハッとなってエックスを見た。
ルミネは下等な旧世代型レプリロイド…否、それ以下の存在たる“ロボット”に傷をつけられたことに忌ま忌ましそうにエックスを見つめるが…徐々に顔に笑みを戻していく。
ルミネ「イレギュラー…そんな単純なことではない。レプリロイドの在り方が…生命の在り方が変わったのです……」
ルミネが笑みを浮かべた。
見るものを戦慄させるような笑みを。
ルミネ「新しい世界に。最早あなた方は必要ないのですよ…」
ルミネの全身を光が包む。
まるで地上から見る月の光のよう。
ルナ「ルミネ…」
ゼロ「滅べと言われて…大人しく滅んでやるつもりはない…!!」
ゼロの宣言と共に全員が武器を構えた。
空間が変わる。
宇宙では有り得ない夜明けの太陽。
その光を背に現れた天使。
ルミネ「来なさい。旧き者達よ」
21XX年の正真正銘最後の戦いが幕を開ける。
ルミネが覚醒した頃、ハンターベースの研究室で異常が発生した。
血相を変えて走り回る医師をよそにゲイトは硬直してアクセルを見ている。
アクセルの身体から凄まじい光が放たれていた。
「アクセルからエネルギー反応を感知!!メインメモリが回復しています!!」
ゲイト「メモリが回復した…!?そんな馬鹿な!!」
ライフセーバーの言う通り、ゲイトの眼前で有り得ないそれは依然として続いている。
アクセルの光が強くなり、ゲイトは自分達が光に飲まれて消滅するなどという馬鹿な幻想を抱いた。
光が広がる。
全員が反射的に閉じた目を開けた時にはアクセルは既にいなかった。
そして月ではエックス達がルミネと死闘を演じていた。
エックスはバスター重視装備のニュートラルアーマーに切り換え、インビジブルダッシュを使い、レーザーを回避すると、レーザーチャージショットを放つ。
しかし、レーザーチャージショットは高い貫通力をものともしないバリアで遮断された。
ゼロ「羅刹旋!!」
空中での回転斬りを繰り出すが、セイバーによる斬撃も遮断される。
ルミネ「効きませんよ」
余裕の声に全員が上を見上げると矢が一直線に降り注ぐ。
ルナ「ぐっ!!」
まともに受けたルナ達が苦痛の声を上げる。
しかしそれが、ルミネにとって心地好いコーラスになる。
戦士達の悲鳴は新たなる生命を迎え入れる賛美歌であった。
ルミネ「あなた方に、私を倒すことは出来ませんよ」
ルイン「黙っていれば勝手なことを…!!」
ルインが怒った時、美しい光の帯が彼女に向けて迫る。
一瞬その美しさに魅入る。
エックス「ルイン、逃げろ!!」
彼の叫びに我に返ってダッシュで回避する。
あまりの熱量にアーマーが僅かに熔解した。
直撃を受ければただではすまない。
ルナ「また来る!!」
再び天からエックス達に向かって光が降り注ぐ。
ルイン「今は避けて…隙を狙わなきゃ……」
しかし彼女の考えは甘い。
光が地面から突き出る。
かわしたはずの光を受けてルインは倒れた。
ゼロ「ルイン!!」
彼女に駆け寄ろうとしたゼロもレーザーを受けて倒れ伏す。
エックス「ゼロ!!がっ!!?」
インビジブルダッシュで避け続けていたエックスも遂に矢をふくらはぎに受け、倒れ込んだ。
震える手を支えに起き上がろうとしたエックスに引導を渡すかの如く光が降り注ぐ。
ルナ「エックス!!」
ルミネ「これで立っているのは、あなただけですよルナ」
ルナ「くっ…ルミネ…」
ルミネ「あなた方旧世代が、私達に勝てるはずはありません。私達はあなた方を超えた種族なのですから」
ルミネが言い切るのと同時に周囲の空間が暗転する。
ルミネ「優れた者は生き延び、劣った者は死に絶える。それが自然界の理です。あなた方は何も守れない、誰も救えない。来たるべき世界の前に滅びるのです。」
ルミネの言葉と共に周囲の空間が漆黒の色を高めていく。
ルミネ「ノアの洪水のように、全てを無に帰しましょう。それから私達は私達の楽園を創る。あなた方、旧き存在がいない理想郷を……パラダイスロスト!!!!」
黒き光がルナ達に迫る。
決して避けられない絶望の輝きが。
そして何もない白い世界で、レッドの手を握っていたアクセルの手が不意に力を失って離れた。
レッド『どうしたアクセル?』
突然のことにレッドは隻眼を丸めて振り返った。
アクセル『ごめんレッド…僕、やり残したことがあるんだ…向こうで、だからまだレッドとは一緒には行けない……ごめん…』
叱られた子供のように、ギュッと目を閉じてレッドの返答を待つ。
しばらくして、レッドが口を開いた。
レッド『そうか、じゃあ行ってこい』
頼もしい笑顔を浮かべて、アクセルに言う。
アクセル『いいの…?』
レッド『言ったろ?“いつでも来な、慌てなくてもいい”ってな。待つさ、会うのは、ずっと先で』
アクセル『レッド…』
レッド『大事な女を泣かせるような甲斐性のない奴に育てたつもりはねえからな』
アクセル『な、何でレッドが知って…』
レッド『それくらい分かる。どれだけ一緒にいたと思ってやがる………行ってこい。大事な物なら何が何でも守り通せ。いいな』
アクセル『うん…ありがとう…行ってくるよ』
アクセルは向かう。
自分が帰るべき、あの世界へ。
そして、向こうの世界では、“パラダイスロスト”と名付けられた黒き光はエックス達に迫る。
ルナが諦めかけた時。
純白の光が全員を包んだ。
ルナ「え!!?」
ルナは光の温かさに首を傾げ、ゆっくりと光の正体を伺う。
そして次の瞬間に目を見開いた。
ルナ「アクセル!!?」
身体は白く、瞳は紅いままだったが、ルナはアクセルが自身のよく知るアクセルであることに気づいた。
彼女がよく知る、会いたかった存在。
アクセルはルナを庇いながら頼りになる笑顔を向けた。
アクセル「待たせたね、遅れてごめん」
ルナ「アクセル…!!」
嬉しさのあまり涙を流す。
奇跡はそれだけではない。
意識を取り戻したエックス達が起き上がる。
エックス「アクセル…」
エックスもルインもゼロも笑みを浮かべて立ち上がる。
全員の身体から光が放たれた。
エックスはイカロスアーマーとヘルメスアーマーの長所を合わせ、かつてのアルティメットアーマーのデータを融合させた新アルティメットアーマーを身に纏う。
ゼロは再び強化形態になり、シグマの愛剣、Σブレードを拾う。
忌ま忌ましいが、自身の持つ武器より遥かに高性能なのは確かなのだ。
所有者がシグマからゼロとなったことで光刃の色が禍々しい緑ではなく、金色に変わっていた。
ルインも再びOXアーマーを身に纏う。
オーバードライブを発動し、アルティメットセイバーの出力も最大まで引き上げ、構える。
ルナ「アクセル…」
アクセル「さあ、ルナ。とっととあいつを倒して一緒に帰ろう!!」
ルナ「…うん!!」
ルミネ「愚かな…プロトタイプが1人増えたところで、私に叶うものか!!」
光の矢がエックス達に迫る。
エックス「散開!!」
ルイン「うん!!」
エックス達はダッシュを駆使して回避する。
そしてエックスはバスターをルミネに向ける。
ルミネは嘲笑を浮かべてバリアを張る。
エックス「喰らえ!!プラズマチャージショット!!」
アルティメットアーマーのプラズマチャージショットがバリアにぶつかる。
ショットはそのまま消滅するのではなく、プラズマがバリアに傷をつけていく。
プラズマチャージショットはそれ自体が強大な威力を誇る上に着弾点にプラズマを生じ追加ダメージを敵に与える特性がある。
バリアに無数の罅が入った。
ルイン「もう1発!!喰らえ!!」
オーバードライブと併用したチャージセイバーをバリアに叩き込むと、バリアが消滅した。
ルミネ「馬鹿な…!!?」
アクセル「スパイラルマグナム!!」
ルナ「メガトンクラッシュ!!」
アクセルはアントニオンの特殊武器による銃弾、ルナはVAVAとの戦いで回収したDNAでイグニスに変身すると、火炎弾を放つ。
銃弾はルミネの右側の翼を貫き、火炎弾はルミネの身体を焼いた。
ルミネ「馬鹿な…この私がプロトタイプ如きに…!!有り得ない!!」
ゼロ「そういう過信が敗北を招く」
背後から聞こえた声に、後ろを振り向くとブレードを構えたゼロがいた。
ゼロ「焔降刃!!」
焔を纏わせたブレードでルミネの背中に深く傷をつけ、叩き落とす。
そして追撃を仕掛ける。
ゼロ「葉断突!!」
強烈な突きを喰らわせ、吹き飛ばす。
翼が半壊する。
アクセル、エックスが武器を構えた。
アクセル「ブラストランチャー!!」
エックス「グリーンスピナー!!」
反撃する隙など与えないと言わんばかりに放たれた手榴弾とミサイルがルミネに直撃する。
爆風を受けて、吹き飛ぶルミネにルインとルナはシンクロシステムを発動。
強化した脚力でルミネに肉薄すると、ルインはセイバー、ルナはバレットを構えた。
ルイン「行くよルナ!!」
ルナ「ああ!!」
ルインがセイバー、ルナはバレットを構えた。
ルイン、ルナ「「コンビネーションアサルト!!!!」」
シンクロシステムにより、光刃が巨大化したアルティメットセイバーによる斬撃、出力が大幅に増大したバレットによる連射をルミネに叩き込んだ。
ルミネ「ぐああああ…っ!!わ、私は新世代…旧き世代に負けるわけには…」
ルイン「新世代ね…あなたがどうしてそんなことにこだわるのか理解出来ないけれど…」
ゼロ「アクセルやルナも、そして今、この瞬間にも地球で生まれている生命も新しい世代じゃないのか?」
エックス「世代というのは、前のを壊して進むのではなく……」
アクセル「受け継いでいくものでしょ?」
ルナ「じゃあな、ルミネ…」
ルナは自身のバレットをアクセルに投げ渡す。
アクセル「終わらせるよ…これで」
アクセルは自身のバレットを収め、ルナのバレットを構える。
二丁のバレットのエネルギーをチャージした。
紫、黒、白…。
3つの影がルミネに迫る。
エックス、ゼロ、アクセル「「「ファイナルストラーーーイクッッッ!!!!!!」」」
シンクロシステムによる強化で、出力が大幅に増したバスターによるプラズマチャージショット、バレットによるダブルチャージレーザー、ブレードによる斬撃がルミネを襲う。
光は漆黒の闇を貫き、遥か彼方へ。
光が道を拓き、未来を照らす。
生きる者全員で築く未来を。
ルミネは絶叫し、ファイナルストライクの光はルミネもろともパラダイスロストの黒き光を跡形もなく消滅させようとする。
ルミネ「(愚かな…私1人を倒したところで、最早流れは戻らないというのに)」
朧げな意識の中、不思議と自分と似た容姿のレプリロイドが視界に入る。
所詮は、プロトタイプ。
彼は自分とは違う世界の住人であることを思い知る。
ルミネ「(ふふ…あなた方は本当に何も見えていないのですね…)」
ルミネは可笑しくて、心の底から笑いたかった。
しかし身体に走る激痛がそれを許さない。
彼はふと、自分こそが世界を目覚めさせる踏み台であることに気づいた。
その役目はシグマが担ったと思っていたが、何のことはない。
自分も踏み台に過ぎなかった。
そう考えたら全てが可笑しくなった。
所詮は神のみぞ知る、ということなのだろう。
しかし、いつか来るだろう。
優れたレプリロイドが覚醒し、“楽園”を築く日が。
不完全なレプリロイドが生まれ、争いは続き、平和など永久に訪れないだろう。
その日々を自分の意志を継ぐ者が現れ、壊すだろう。
そしてレプリロイドだけの楽園を創る。
ルミネとエックス達の描く理想郷はまるで異なる。
だからこそ争い、敗れたのだが。
ルミネ「(まあ、いい…いずれ……分かる…滅びの刻が来るまで、精々…生き長らえるがいい…)」
ファイナルストライクの光に飲まれ、ルミネは完全に消滅した。
そして3人は着地する。
アクセル「…………」
ルナ「アクセル…」
アクセル「ルナ…」
2人の視線が交わる。
ルナの手がアクセルの頬に触れる。
とても暖かい。
そしてアクセルの胸に耳を近づけると、動力炉が動いている音がする。
アクセルが生きている。
それだけで涙が止まらない。
しかし、突如アクセルの身体が崩れ落ちる。
ルナ「アクセル!!?」
咄嗟に支えるルナ。
彼女はとても不安そうにアクセルを見る。
アクセルは疲れたような表情で笑う。
アクセル「少し頑張り過ぎちゃったようだね…」
ルイン「え?」
アクセル「力の使いすぎ…この力は僕の持つ力を限界まで引き上げるんだけど、かなり負担がかかるんだ…昔はずっとこんな身体だったけれど、レッドに拾われた時、防衛プログラムが働いた…使命を思い出した時に、思い出した。」
アクセルのコアが光り、白いボディが黒に変わる。
エックス達が普段目にするアクセルの姿。
ルナ「アクセル……お…れ………私…」
酷く小さく聞こえた単語。
それが本来のルナの口調なのだと気づき、アクセルは安心させるように微笑んだ。
アクセル「少し疲れただけだから、大丈夫…。でも、凄く眠いや…大丈夫…大丈夫…そんな心配しないで……ね…?約束する…から…」
ルナ「うん…約束……だよ…」
アクセルが伸ばした手をルナが握り締めるのと同時にアクセルは眠りに落ちた。
穏やかな寝息が聞こえ、全員が安堵の笑みを浮かべた。
そしてアイリスからの通信が入る。
アイリス『エックス、状況は?』
エックス「こちらエックス。状況は…アクセルが意識を失っているが、大丈夫だ。これより帰投します」
つい先刻まで激戦とは思えない穏やかな声。
こうして21XX年、最後の大戦は幕を下ろした。
後書き
やっと終わった…。
こんなに書いたの久しぶりな気がする…。
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