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ロックマンX~5つの希望~

作者:setuna
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第六十話 Sigma

 
前書き
VAVAを撃破したエックス達。
一方、先にシグマの元に向かったルインは…。
 

 
エックスがVAVAを撃破した時、ルインはシグマの元へ向かっていた。

ルイン「たあああっ!!」

跳躍し、チャージセイバーでガードロイドを両断する。
シグマを模していたイレギュラーは、真っ二つになり、爆散した。
DNAを取り込んだとしても所詮は偽物のシグマだ。
本物のシグマにはまるで及ばない。
暗がりに炎の色が滲む。
ルインはイレギュラーを破壊しながら突き進む。
しばらくすると、シグマパレスの最深部に辿り着いた。
高台になった足場に飛び移り、これまでと打って変わって誰もいない通路を抜けた、その場所はまるで絨毯のように真っ直ぐ伸びた赤いライン。
目で数えられる階段の上にぼんやりと見える人物に目を見開いた。
よく知る男の、見たことのない姿があったからだ。

シグマ「また会えたな。ルイン…1つの世界の終焉に、他ならぬ貴様と立ち会えるとはな」

ルイン「…シグマ……」

灰色の金属が剥き出しのまま所々途切れ、その切断を緑色の光が繋いでいた。
今までのシグマにあった、メカニロイドと思わせた程のレッドアラートの戦いのシグマにもあった人工皮膚が存在せず、内部構造を露出させ、より地獄の住人に相応しい姿に成り果てた姿だった。

シグマ「エックスとゼロをウィルスで戦闘不能にし、あのプロトタイプも連れ去り、戦力が少ない絶望的な状況を覆し、貴様はここまで来た。流石は我が宿敵と言うべきか。」

人の表皮など始めから存在しないボディは、ロボットすらまともに造れなかった西暦二千年代の、前時代的なそれに感じられた。
胸部の紅いコアは生物の心臓のように明滅している。
動物じみたそれにルインは悍ましさを抱く。

シグマ「私はな、ルイン…。我々の出会いは、この時のため…新しい時代の幕を開けるための、必然であったと思うのだ。」

シグマから放たれるプレッシャーを感じながらルインは無言で耳を傾けている。

シグマ「そして、貴様らが振りかざす薄っぺらな正義とやらが、私にこの世界の過ちを気付かせてくれた…。それが全ての始まりだった。そうは思わないかね?」

ルイン「ふざけたことを言わないで」

忌ま忌ましそうにシグマを見据えるルインに対して、シグマは愉しげに瞳を輝かせた。

シグマ「クク…そういきり立つな。最早時間の針を戻すことは出来ん。全ては過ぎたことだ。今は未来しか興味を覚えぬ。世界が宇宙にその生きる道を見出だした時…、宇宙開発に携わった、高性能な新世代型レプリロイドは、我が意志を継ぐ子供達だったのだからな!!」

ルインはその言葉を理解出来なかった。
いや、したくなかったのかもしれない。

ルイン「宇宙開発に携わった新世代型レプリロイド達が、あなたの意志を継ぐ子供…!!?どういうこと!!?」

ルインの叫びにシグマは満足そうに頷き、口角を歪めた。

シグマ「頭のいい貴様ならもう分かっているのではないか?ヤコブ計画は新世代型レプリロイドの設計段階から既に我が手の内にあったということだ。あの2人のプロトタイプを除いた新世代型レプリロイドの全てのコピーチップには、我がデータが刻まれている!!お前達が築こうとしていた世界は、我々の世界なのだよ!!さあ、イレギュラーハンター・ルイン。我々と別方向の進化を遂げし者よ。旧き世界と共に滅ぶがいい!!」

シグマはルインの前に立ちはだかる。
数瞬を置いて、緑に光り輝くブレードがその力を惜しみなく解放した。

ルイン「……あれはまさか、Σブレード!!?」

イレギュラーハンター時代から最初のシグマの反乱まで使われていた高出力ビームサーベルであるΣブレード。
しかしそれはルインのアルティメットセイバーすら凌駕する大剣となり、それを握り締め、全身から凄まじい殺気がシグマから吹き荒れる。
今までの戦いでは余裕を見せていたシグマは最初から本気である。
永き因縁に決着をつけるために全力で宿敵であるルインを叩き潰しに向かう。

シグマ「全力で来い!!」

リング状のレーザーを放つ。
3つのリングが連なって迫って来る。
ダブルジャンプとエアダッシュを駆使してレーザーを回避する。
セイバーを構えて一瞬でシグマとの間合いを詰めた。

ルイン「喰らえ!!雷光閃!!」

シグマ「クク…そうでなければ面白くないわ!!」

ルインの雷光閃がかわされた。
シグマが空間転移で回避したのだ。
辺りを見回すがいない。
しかし、突如凄まじいエネルギー反応にそちらを向くと、額の銃口にエネルギーが収束していた。

シグマ「喰らうがいい!!ドゥームバスター!!」

ルイン「負けるか!!アースクラッシュ!!」

ドゥームバスターの巨大なエネルギー弾をアースクラッシュで相殺すると、煙に紛れて接近し、シグマにバスターの通常弾を数発喰らわせる。

シグマ「フッ、魅せてくれるではないかルイン!!」

直撃は受けたが、大したダメージにはなっていないようで、ニヤリと嘲笑いながらΣブレードを構える。

ルイン「ダブルチャージショット!!」

エックスのチャージショットに匹敵する威力のチャージショットが2発、シグマに迫るが、シグマはブレードを振るうことで、ダブルチャージショットを掻き消した。

ルイン「まだまだ!!」

ルインがセイバーを一閃。
セイバーショットがシグマに迫る。
シグマはそれを回避し、Σブレードを収めるとルインに殴り掛かる。
ルインもΩナックルで応戦する。

ルイン「たあっ!!やああああっ!!」

シグマ「そうだ。存分に足掻け!!長年に渡る貴様らとの決着…そう簡単に決したのでは面白くないのでな!!」

互いに拳を繰り出し一歩も引かずに殴り合う両者。

ルイン「シグマ…………シグマ…隊長……」

そんな最中、かつてのイレギュラーハンター時代のシグマの姿が脳裏を過ぎり、ぽつりとルインが呟く。

シグマ「愚か者め!!寝惚けるな!!」

シグマの拳がルインを鳩尾に炸裂しそのままルインを背後へと吹き飛ばす。

ルイン「う…っ」

シグマ「私はもはや人間共の犬に過ぎぬイレギュラーハンターの部隊長などではない。イレギュラーの王として世界に君臨する覇者なのだ!!」

シグマが振るうブレードをルインはセイバーで必死に受け止める。

ルイン「(ああ…やっぱり強いなぁ。この人は…)」

第17番精鋭部隊に配属されたハンター達にとってシグマは憧れであり続けてきた。
イレギュラーハンターという組織にあって誰よりも英雄と呼ぶに相応しかった人物。
統率力、戦闘力、作戦立案能力といった能力面で衆に抜きん出いるのは当然として、厳格ながらかつては優れた人格者でもあったシグマは、自分達にとっての理想形…。
エックスやゼロ、ルインにとってはかつてのシグマはまさに人生の手本とすべき存在であった。
それが今やイレギュラーの代名詞にまで名を貶め、幾度もエックスやルイン達の前に立ちはだかり続けてきた。

ルイン「…決着をつけましょう。シグマ…」

シグマ「そうだルイン!!これが我々の最後の戦い!!」

空間転移。
またドゥームバスターかと思ったが、シグマはルインの真上にいた。

シグマ「レイヴデヴァイド!!」

風を切って飛び降り、着地と同時に切り上げ、残像を持って振り下ろす。
鋸に似た線を描く攻撃がルインに迫る。
ルインは一撃、二撃、三撃目は何とか回避したが、最後の一撃を回避することは出来ず、胸から肩にかけて刔るような傷が走る。
反撃しようとした瞬間、シグマの姿はなく、目の前の空間が歪んだかとおもうと、身体が引き寄せられ、巨大な手に頭を鷲掴みにされる。

ルイン「シグマ…!!」

紛れも無くシグマである。
彼は苦痛に歪む少女の顔を見て、勝利を確信した。

シグマ「絶望せよ!!貴様らが守ろうとした世界が縋った計画も全て我が手の内だった!!貴様らに残されているのは絶望しかないわ!!滅べ、滅ぶがいい!!」

シグマの笑い声と呪詛のような言葉を聞きながらもルインは必死に脱出を試みる。
まだ彼女は諦めてはいない。
希望を捨ててはいない。

ルイン「っ…馬鹿なこと言わないで!!私達が諦めたら、あなたが喜ぶだけでしょ!!ヤコブ計画が最初からあなたの仕組んだ事だったとしても……私は、私達は最後まで諦めたりはしないっ!!私達がいる限り、あなたに都合のいいエンディングなんてない!!」

その時である。
蒼い閃光がシグマの顔面に直撃し、ルインはシグマの束縛から逃れた。

エックス「ルイン、無事か!!?」

ゼロ「ふん、間に合った、か…」

ルナ「危なかったな?」

ルイン「エックス!!ゼロとルナも…無事だったんだね…」

エックス「ああ、間に合ってよかった…さあ、行くぞシグマ!!」

シグマ「フン、エックス、ゼロ…どうやらお仲間が到着したか。無駄なことよ。次世代の王たる我が力の前には何もかも無力よ!!」

額の銃口に再びエネルギーが収束する。
再びドゥームバスターを繰り出すつもりなのだろう。

ルナ「おっと!!やらせるかよ!!」

リフレクトレーザーによるクラッキングがドゥームバスター発射のギリギリで止めた。

エックス「お前の好きにはさせない!!」

イカロスアーマー装備のエックスのレーザーチャージショットがシグマに炸裂する。
シグマのコアにピシリと僅かに罅が入った。

ルイン「コアが傷ついている…もう少し!!」

エックス達が連携し、シグマにダメージを与えていく。
シグマのボディは、あちこちで亀裂が生じていた。
シグマのオーラが一目瞭然なほどに弱っていた。

ゼロ「貴様の負けだシグマ」

雷光閃が走る。
白き稲妻がシグマの胸を突いた。
コアの罅割れがもうひとつ生じる。
罅がコア全体に広がり、シグマの身体は崩壊寸前の状態となる。

シグマ「舐めるな!!ドゥームバスター!!」

ゼロ「っ!!?気付かれないよう、チャージしていたのか!!?」

エックス「下がるんだ!!エクスドライブ!!レイジングエクスチャージ!!スプレッドチャージショット!!」

エクスドライブとレイジングエクスチャージを併用し、スプレッドチャージショットを繰り出して相殺する。

シグマ「燃え尽きるがいい!!」

紅い光線が放たれる。
その威力は凄まじく、凄まじい熱量だ。
ドゥームバスターとは違い、チャージが必要ないらしく、手数を活かした攻撃をしてくる。

ルイン「くっ、シグマの奴、一撃必殺じゃなくて、手数で攻めてきたよ!!」

エックス「今度はこちらに攻撃させる隙を与えないつもりか…!!」

ルナ「うおおおおおお!!」

トリロビッチに変身したルナはアーマーの防御力を活かして、シグマに突撃する。

エックス「ルナ!!?」

ゼロ「無謀だ!!よせ!!」

確かにルナは変身能力により、遠近問わぬ戦いが可能だが、彼女が得意とするのはエックスとアクセル同様射撃であり、接近戦を得意とするシグマと戦うには力不足が否めない。

シグマ「プロトタイプの小娘め…お望み通り葬ってくれるわ!!」

シグマがブレードを構え、振り下ろされるが、一瞬でトリロビッチからテネブラエに変身し、高速移動で背後を取り、四天王最強の剛力を誇るイグニスに変身してシグマを取り押さえた。

ルナ「捕まえたぜ!!」

シグマ「生意気なプロトタイプの小娘め…!!」

振り払おうとするシグマの身体を必死に押さえ付ける。

シグマ「離せ!!」

ルナ「ぐっ!!」

巨大なブレードで自分を斬ることを恐れているのだろう。
ルナを殴り、蹴り続ける。
ダメージにより、イグニスの変身が解除されてもルナはシグマを離さない。

ルイン「ルナ!!無茶だよ」

ルナ「痛く…ない…」

ゼロ「ルナ…?」

ポツリと零れた小声を辛うじて聞き取ったゼロは目を見開く。

ルナ「こんなの…痛くも痒くもない…」

エックス「え…?」

ルナ「アクセルが、ホタルニクスじいさんが、お前からされたことに比べればこんなの痛くも何ともない!!」

ルナにとって大切な人であるアクセルとホタルニクスが死ぬ原因を作った人物が目の前にいることが、ルナに限界を超えた力を与えた。
シグマは少しの間を置いてニヤリと嘲笑った。

シグマ「レーザー工学の権威、ホタルニクス…随分と懐かしい名が出てきたものよ。自身の作品が利用されるのを恐れて、自身の研究所に籠もっていた臆病者であったな」

ルナ「黙れ…!!てめえだけは絶対に許さねえ!!」

華奢な身体に似合わぬ力でシグマを取り押さえる。

シグマ「ぬっ!?」

ルナ「本当なら!!てめえを、何度粉微塵にしても気が済まねえんだっ!!」

アクセルを、ホタルニクスが死ぬ原因を作った張本人を、憎む心は何があっても変わらない。
これ程までに憎まれることをしたというのに、ホタルニクスのことをどうでも良さそうに扱い、アクセルのことを操り、利用するだけ利用して簡単に切り捨てたシグマに対する憎しみは募るばかりだ。

ルナ「何度でも粉々にぶっ壊したって足りないんだよ!!」

シグマ「黙れ小娘が!!」

シグマがルナの頬を殴るが、それでもシグマを離さない。

ルナ「こんなの痛くない…アクセルやじいさんの苦しみや悲しみに比べたら…っ…こんなの……返せ…返せよ…アクセルとじいさんを…俺の…私の友達を返せえええええっ!!!!!!」

涙を流しながら絶叫するルナにシグマはブレードを握り締めた。

シグマ「……プロトタイプ風情が!!」

シグマがブレードを振り上げる。
斬るのではなく突き立てて彼女を貫くつもりだ。

ルイン「やらせない!!!!」

ルナの激情に立ち尽くしてしまっていたエックスとゼロよりも先にルインがシグマとルナの間に入って、Σブレードにチャージセイバーを叩き込んでΣブレードを吹き飛ばす。
そのままルインもシグマを押さえ付ける。
戦闘型2体掛かりの力に今度は流石のシグマも動けない。

ルイン「エックス!!ゼロ!!早くシグマにとどめを!!」

ルナ「手加減なんかすんなよ!!2度と蘇らないようにしてくれ!!」

エックス「………」

ゼロ「エックス、Dr.ライトから教わった“アレ”はまだ使えるか?」

エックス「“アレ”か?ああ、大丈夫だ」

ゼロ「それを最大まで高めてシグマに放て。完全に奴を消滅させるにはそれしかない」

エックス「ああ…」

ゼロはセイバーを天に掲げた。
次の瞬間、掲げられたセイバーが、天井に届くほど伸びている。
膨大なエネルギーを注ぎ込むことで、セイバーの出力を限界まで引き出しているのだ。

エックス「はあああああ……!!」

エックスも両手を懐に構え、本来なら機械であるレプリロイドが持たないはずの氣が掌に収束されていく。
かつてライト博士から教わった凄まじい破壊力故に封印した必殺技が繰り出される。

ゼロ「これで終わりだシグマ!!」

エックス「お前との因縁も、何もかも!!」

エックスとゼロ。
100年前の2人の天才科学者によって造り出された最高傑作の2人から最大最強の一撃が繰り出された。

ゼロ「幻夢零!!」

エックス「波動拳!!」

ゼロの幻夢零とエックスの波動拳…厳密には波動拳の強化版の真空波動拳と呼ばれる2人の最強の技がシグマに炸裂した。
真空波動拳と幻夢零がシグマに命中する直前、左右のルインとルナがバッと身を離した。
2人は技の余波で吹き飛ばされたが、ダメージはないようだ。
シグマは愕然としながら胸中で口にしていた。
最期の言葉を。

シグマ「(まさか…私が倒れるなど…滅びるのは…奴ら…旧世代の…)」

胸中で言葉を発した後、イレギュラーの王は、断末魔の叫びを上げて爆発した。 
 

 
後書き
シグマ撃破。 
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