『もしも門が1941年の大日本帝国に開いたら……』
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第四十四話
前書き
お久しぶりです。長い間更新しなくてすみません。
更新しなかった理由
「お、新刊……ん? 伊丹が竜騎士? それはないわ~(ヾノ・∀・`)」
新刊は買ったけど、伊丹が竜騎士とか帯を見て読む気力がなく読まずに封印状態。そうじゃないんだよ……
「でもとりあえず書こう」
何とか奮起して書き上げて今此処。
今後の更新は未定、場合によっては削除か全面リメイク。
翡翠宮で戦闘が続いていた一方、皇太子府では皇女ピニャが半数以下に減った元老院議員達からの糾弾の嵐に晒されていた。
その理由というのも翡翠宮で戦死した帝権擁護委員の多くが主戦論派である彼等の子弟、若しくは縁者だったからだ。
「皇女殿下は元老員院の権威をなんと心得ておられるのか!?」
「さよう。我等がどれほどの思いでオプリーチニナ特別法を可決したのか御理解下さってない!!」
「その通りだ!!」
議員達はピニャに向けてこれでもかとばかりにヤジを飛ばしていた。対するピニャは黙したままである。どんな罵声でも言い返すをしない。
ピニャの精神は皇帝の不豫に始まった事態の悪化の兄ディアボから見捨てられた事で不安定な状態だった。ゾルザルに対抗してもらおうとディアボに助けを借りようとしたが、従者のメトナスを失っていたディアボはピニャの言葉に耳を傾けず、そのまま帝都を脱出して何処かへと去って行ったのだ。
ある目撃情報ではイタリカに向かったとか言われているが定かではない。そのためピニャはボケェっとしていたが、味方がいないわけではない。
漸く公務に復帰したハミルトンが独りではあるが側にいて懸命に立ち向かってくれた。それでも時折、ハミルトンは人目が付かないところで泣いていた。樹に怨みを呟いて……。
「議員方、殿下の理解力が不足しているかのように言わないでいただきたい。殿下は理解なされている。ただ許容ならないだけなのです」
ハミルトンは何とかピニャを守ろうと論戦に打って出ていたが、既に満身創痍の状態である。
「それを理解力の不足だと申し上げている。我等も何も好き好んでこのような法律を可決したわけでないのですぞ。断腸の思いを堪えたのです」
「フン、理解出来さえすればそれを許容するというのは妄想でしかありません。理解してもなお許容出来ないという事は幾らでもあるのです。自らの主張が許容されないからといってその理由を理解力不足に貶めようとするのはただの我が儘です」
「何と無礼な!! 貴女は妄想だと仰るのか!!」
「我が儘なのは殿下の方であるぞ!!」
ハミルトンの反論に議員達は罵倒して口を閉じさせた。そして主戦論派の急先鋒たるウッディ伯爵がつけこんできた。
「兎に角殿下には翡翠宮に逃げ込んだ者共を帝権擁護委員部に捕らえさせることへの同意を願いたい」
「それは無理だと申し上げた。翡翠宮は皇帝陛下の勅によって外交特権が付与された使節の逗留の場であり帝国の法が及ばぬところです。そして我等はそれを守る楯。元老院議員の方々にこそ問いたい。使節の方々の安全を脅かそうとする帝権擁護委員部の行為を認めているのですか? 彼等の為していることこそ皇帝陛下の権威と帝国の名誉を貶める帝権干犯そのものではないですか!?」
ハミルトンはそう反論するが元老院議員達も負けずと反論し、場は乱戦になっていた。
「そもそもだ。それならニホン側に犯人の引き渡しを求めてはどうかね?」
軍部出身のクレイトン男爵の言葉にハミルトンは胸中で舌打ちをした。
「ニホン側は彼等を庇護すると回答して参りました」
「ほら見ろ!! 奴らはニホンと繋がっていたんだ!!」
「モルト皇帝が翡翠宮に外交特権を付与されたのは使節達との講話交渉を円滑に進めるためであって敗北主義者達を匿わせるためではないぞ!!」
「外交特権を停止するのだ!!」
ヤジが怒号のレベルにまで高まり収拾がつかなくなってきた。
「我等はこれ以上の被害は出したくはない。無益な戦いで血が流されるのはこりごりのはず。殿下のご指示とあらば騎士団も守りを解くはず。いかがでしょう殿下? ここはお譲りいただきませんか?」
ウッディ伯爵がそのように申してきた。ハミルトンは反論したが、ウッディ伯爵は吐き捨てた。
「我々は貴女に聞いていない。ピニャ殿下に尋ねているのです」
「そうだそうだ!!」
「大体秘書官風情が何故答弁しているのだ? 僭越だぞ!!」
口ごもるハミルトンだったが後ろからピニャが口を開いた。
「もういいハミルトン。妾は帰る」
ピニャはそう言って席を立ち、帰ろうとする。その行動に議員達はヤジを飛ばすがピニャは気にする気はない。しまいには騎士団を解散しろと脅してくるが、ピニャはフンと笑った。
「騎士団とニホン軍に負けているのは何処のどいつだ? 此処で議論せず翡翠宮に突撃したらいい。まぁ死ぬがな」
ピニャの言葉に議員達は激怒したが、そこに今まで沈黙していたゾルザルが口を開いた。
「ニホンと講話交渉を打ち切るつもりはない。政情が安定しない上安全も確保出来ぬ故に一度ご退去いただくのだ。生き帰りの安全は俺の名で保障する。政情が安定した後に再び翡翠宮にお越し頂くのだ」
ゾルザルの提案に議員達は賛同しているが、ピニャはゾルザルに一言言った。
「もう兄上の好きにすればいいのです」
ピニャはハミルトンすらも見捨てるように皇太子府を後にした。ハミルトンはピニャを追いかけようとしたが、ゾルザルに呼び止められた。
「そなたは婚約者を失いニホンを恨んでいるはず。今なら僅かではあるが一軍を預けて最後の攻撃を敢行してくれぬか? 何せ講話交渉は一つでも有利な状況が欲しいからな」
ゾルザルの言葉にハミルトンは心臓が鷲掴みされた感覚を覚えた。先程まで私情は切り捨てていたが、ゾルザルに促され議員達も攻撃に参加しろと言われ奥にし舞い込んでいたドス黒い感情が湧き出してきたのである。
そしてハミルトンはゆっくりと口を開いた。
後書き
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