Gフォース~正義の行方~
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第二話:悪
ロシアでの戦いから数時間後、太平洋沖
そこにはアメリカ国籍の船があった。
その船は今や絶滅危惧種となった富を持った人々の数少ない娯楽ともよべる大型客船だった。
船の名前は「ヘラクレス」
ギリシャ神話の英雄からちなんだものであった。
その船の中にいた人々は怪獣のことを忘れつかのまの平和を楽しんでいた。
だが、そんな矢先だった。
ピエロマスクをつけた複数名の男たちが船員に化けて乗っていた。
そして、彼らは船長や客たちを虐殺した、女子供を優先的に殺し時には家族同士で殺し合わせ生き残ったものを仲間にすると嘯きながら戯れに殺した。
「お前ら、金目の物は盗んだか?」
極端に赤い髪をオールバックにしたピエロメイクの男は、客室の中で叫んだ。
彼らは部下とは違いマスクをしてはいなかった。
白いメイクと赤い唇、そしてまるでサーカスの司会者のように赤いタキシードを着た男は部下たちに尋ねた。
「クラウン様、もう充分とりました。」
傍らにいたピエロマスクをした巨漢は首を縦に振るとそういった。
家族の周囲はクラウンの部下4名の男が取り囲んでいた。
クラウンと名乗るピエロメイクの男はとある母子に銃を向けた。
子供は泣き震え、母親も同様に震えていた。
「お嬢ちゃん、助かりたいか?」
クラウンは少女にそう尋ねた。
少女は首を縦に振った。
クラウンは嬉しそうに微笑むと、バタフライナイフを取り出した。
「おう、それじゃあな・・・お前自分の母ちゃん殺してみてくんないかな?僕ちゃんの組織はね、弱い子は必要ないんですヨン。」
少女は震えながら顔を横に振った。
眼には涙を浮かべていた。
クラウンはすると銃を部下のほうに向けた。
「クラウン様、御冗談でしょ?」
クラウンは何も言わずに引き金を引いた。
すると男のピエロマスクと男の脳味噌が飛び散る音がした。
部下たちも家族も震え上がった。
「あ~あ、てめぇのせいで部下殺っちまったじゃねぇか。責任もってお前も殺せや!なあオイ!」
クラウンは少女に銃を突きつけた。
少女はそれでも首を縦に振らなかった。
クラウンは残酷に微笑むと大きく高笑いをした。
「ハッハッハッハァ!じゃあてめえも死ね!」
クラウンは引き金をひこうとしていた、そんな矢先だった。
銃弾が響く音がした。
クラウンは顔色を変えると、部下に指示を出した。
「お前らは外みてこいや!」
マスクをした男たちは銃を持ちながらどこかへと去って行った。
クラウンへの恐怖に震えながら。
クラウンは母子と3人だけ残された。
「お願いです、命だけは。」
母親はそう言おうとした、だがクラウンは冷酷に母親の頭を撃ちぬくと子供の襟首をつかみ客室から去っていた。
少女は母親の死を目の前にして恐怖で頭が真っ白になった。
「くだらねえ、こんな客船襲ってなんの儲けになるってんだ。」
クラウンはぼやきながら少女を引きずりながら船の中を駆けずり回った。
少女は放心状態になっていた。
そんな少女を見てクラウンは微笑みながら告げた。
「お前さん、北朝鮮あたりに売り飛ばしたら独裁者様にかわいがられるだろうよ・・・まあその前に味見してやるか!?」
クラウンはそう微笑むと少女を床に押し倒した。
そして、自分のズボンのチャックを開けようとした。
そんな時だった。
「サーカスは終わりだ!」
クラウンは背後から話しかけられた衝撃から、振り返った。
「野郎、何がいいてぇんだ!」
クラウンは後ろを振り向くと、そこにはハンサムな顔をした若い男が立っていた。
迷彩色の服を着て、鋭い目をしていた。
そして、クラウンもある程度は顔を知っていた。
フォード・ブロディ少尉だった。
「小僧、てめえ・・・どこからきやがった!?」
フォードはクラウンの言葉を無視して、少女の顔をのぞいた。
そして、少女に目線を合わせると微笑みながらウインクした。
だが、少女はフォードの存在に気づいてなどいなかった。
クラウンは自分が無視されたとわかると、表情を怒りに歪ませると銃を少女につきつけた。
「てめえ、近寄るんじゃねえ!このガキぶち殺すぞ!」
フォードは少し後退すると、わきに構えた銃を取り出そうとした。
すると別の客室からピエロマスクの男が飛び出してきた。
男はナイフを持ってフォードに襲い掛かった。
クラウンは高笑いをすると、そのまま走り去り始めた。
ナイフをよけ、フォードは男の腕をつかむとそのまま捻り、自分の脇に挟む形でアームロックを食らわした。
そして、一気に腕の骨をへし折った。
「ぎにゃ!」
男は悲鳴をあげながら倒れると、フォードはその顔を踏みつけ気絶させた。
そして、前を一直線にみつめた。
クラウンは逃げていた。
フォードは銃を取り出すと、冷静に銃を撃った。
銃弾は空を切り裂き、クラウンの足を貫いた。
「いったぃ!」
クラウンは足を抱えるとそのまま地面に倒れた。
そして、足から流れる血をみつめて大きな笑い声をあげた。
その笑い声は低く、やや割れてるようであった。
「ディヤァハハハハ!!やっぱこうでなくちゃいけねえな!」
フォードはそのまま突き進むとクラウンの腹を踏みながら頭に銃を突きつけた。
銃は冷たくクラウンの頭を狙っていた。
フォードの任務はあくまで逮捕、しかしフォードの頭には殺意があった。
少しの殺意であるが。
クラウンの殺した人々の死体をみたフォードはクラウンに殺意が抱いた。
だが、フォードは抑えながら、クラウンに告げた。
戦場でのフォード・ブロディが蘇りつつあった。
「諦めろ。」
クラウンは両手をあげると、にこやかに手をあげた。
フォードはクラウンの両腕に手錠をかけた。
「小僧、この借りは返すぞ。」
クラウンはそう吐き捨てた。
フォードはクラウンの顔を蹴り飛ばすと気絶させた。
少女はそんなフォードのほうを少し見つめた。
少女の視線に気がついたフォードは少女に笑顔をみせた。
「もう大丈夫だよ・・・。」
フォードは少女をやさしく抱きかかえると、そのまま客船の中を突き進んでいった。
だが、決して油断はできなかった。
フォードはポケットの中にいるヒオに告げた。
「このあたりに敵がいないか、気配を探ってくれ。」
ヒオは首を縦に振った。
フォードに抱きかかえられていた少女はヒオの存在にきづくと、ふと一瞬微笑んだ。
妖精がいた。
ママが話をしていたなと。
だが、母親の死を思い出すと一人すすり泣いた。
フォードはそんな少女の背中をやさしく摩ることしかできなかった。
するとヒオがフォードの脳内にテレパシーを飛ばしてきた。
「フォード、敵がいるわ上の階に4名。」
フォードは目つきを変えると、客室の一室を開けた。
そして、そこのトイレのドアを開けるとヒオと少女をそばにおいた。
「ヒオ、近くに敵がきたらマインドコントロールで時間を稼いでくれ。何があってもこの娘を守るんだ。」
ヒオは首を縦に振ると、少女の肩にちょこんと座った。
少女は何も言えずボーっとしていた。
フォードは銃を構え腰を低くしながらゆっくりと階段を上った。
上の階はレストランだった。
フォードはドア越しから様子をのぞいた。
何十人といる客がレストランの席に倒れていた。
様子を見ると、そのまま銃殺されたようだった。
そして、銃を持ったコックが立っていた。
コックの白い制服には赤い血がついていた。
「あいつらコックのふりして、侵入したんだな・・・。」
フォードは銃を構えるとゆっくりと中へと進んでいった。
罪のない人々を虐殺した邪悪な人間への殺意に襲われそうになったが抑えた。
コックの男はタバコをくわえ、火をつけようとした。
フォードはその隙を逃さなかった。
すぐさま駆け寄ると、勢いよく飛び膝蹴りを食らわした。
コックの顔に蹴りが当たり、コックは口から血を吹きだしながら倒れた。
「お前らみたいなのは許せない、死刑になるだろう。」
そういうと、フォードは急に調理室の窓が割れる音が聞こえたのを感じた。
敵か?
フォードは素早く地面に伏せ、前に進むと割れた窓から様子をみた。
するとそこには同僚のユリ・タチバナ中尉がいた。
ギリシャと日本のハーフのタチバナ中尉は美人な顔立ちと、しなやかで筋肉質な体をもった女性軍人だった。
彼女はコックの顔にハイキックを食らわしていた。
すると、背後から別のコックが迫ってきていたが彼女は素早く掌底突きを食らわすと、男の股間を蹴り飛ばしていた。
フォードは安心すると声をかけた。
「あんたがいたとはね。」
「はあ、なんであたしたちこんな仕事しなくちゃいけないのかしら。」
ユリは悪態をつきながらフォードのほうへと進んでいった。
「仕方ないだろ、今じゃGフォースは怪獣対策以外の仕事も引き受けてる便利屋にしかなれないんだからさ。」
Gフォースはゴジラ討伐以降も怪獣退治を続けていた。
だが、怪獣はゴジラ撃退以降数が減っていた。
まるで人間に恐れをなしたかのように・・・。
そして、その後Gフォースは軍や警察に代わり犯罪者やテロリストの取り締まりをしていた。
ユリは調理場にあった鏡をみると、顔を覗いていた。
「この後、ダニエルとデートなのに化粧歪んじゃったわ。」
「ダニエルは化粧が歪んでいても君を愛するよ。」
「そういえば、このピエロ一味の首領は捕まえたのよね?」
「ああ、下にいるよ。」
ユリは少し怒った顔をして外の様子をみつめた。
彼女は犠牲者や倒れているコックををみていた。
すると、フォードに言った。
「こいつら、金よりも虐殺が目当てだったみたいね・・・クソみたいな連中だわ。」
ユリは地面に倒れたコックのことを軽く蹴った。
フォードは彼女のほうをみると、下を指さした。
「下に生存者がいる、君が保護してくれ。」
「了解。」
ユリは調理室を外にすると、そのまま階段を駆け下りていった。
フォードは彼女を目で見送るとさらに突き進んでいった。
そして、マストに飛び出した。
すると、タバコを傍らから取り出すと火につけた。
だが、背後から銃を持ったピエロマスクの男がやってきた。
生き残りだったようだ。
「てめえ、よくもやってくれたな。」
フォードはたばこを吸いながら、ふと片手をあげた。
その表情は冷静そのものだった。
「やめたほうがいいよ。」
マスクの男は背後から銃をフォードにつきつけながら強く睨んだ。
「なめんな。」
男はそう言おうとした。
すると海の中から巨大な銀色の物体が浮かび上がった。
銀色の姿をした鋼鉄の巨人だった。
メカニコングだ。
すると、メカニコング上から女の声が響いた。
ビビアン・グレアム博士だった。
「諦めて膝をつきなさい!」
男は銃を捨てると地面に倒れた。
フォードは男に手錠をかけると、そのままメカニコングに後を任せた。
そして、再び船の中に入った。
すると、船の一室で大柄な男同士が取っ組み合ってるのが見えた。
「なめんなよ、俺は元グリーンベレーだ!!」
「やるか!?私はコマンドー部隊の隊長だったんだ!」
片方は黒人で2mほどある巨漢だった、そしてもう一方は知り合いのゴードン大佐だった。
ゴードン大佐は白髪の角刈りをした軍人で、身長190以上ある大男だった。
もう45だが、ゴードンの肉体は屈強でGフォースに所属するものであれば彼の右にでる戦闘スキルをもったものはいなかった。
ゴードン大佐は男を一本背負いで投げ飛ばした、男は投げられたが、それでも立ち上がるとゴードンに激しいパンチを食らわそうとした。
だが、ゴードンは素早くよけ勢いのよいアッパーカットを男の顎にたたきつけた。
巨漢は白目をむきながら地面に倒れた。
「大佐、これで全部ですか?」
フォードはゴードンの方に顔を向けた。
ゴードンは黙って首を縦に振った。
フォードはゴードンの横に立つとタバコを持ち出した。
ゴードンは首を横に振った。
「私は吸わない主義だ。」
「とんだサイコ連中ですね、殺すために客船を襲撃したらしいです。」
ゴードンはなれた顔つきでフォードに答えた。
「クラウンは昔追い詰めたことがある、その結果新米を殺された。今度はそうはいかなくてよかった。」
「あいつらと顔なじみですか?」
「みたいなもんだ。クラウンはどうせ、また心神喪失で出てくるさ。」
ゴードンは冷たくそういった。
フォードは肩を落とした。
これだけがんばっても、まったく意味がない。
そして、Gフォースにも軍にも警察にもクラウンを殺すことはできないのだ。
「またこれと同じことをする気でしょうか。」
「するだろう、それを私たちは止めることはできない。」
ゴードンは悲しくそういうと地面に腰かけた。
そして、手で顔を覆い隠した。
泣いているのだろうか、フォードにはわからなかった。
ゴードンはふと、思い出したかのように告げた。
「明日、ワシントンにいってもらいたい。」
ワシントン、何をするんだろう。
そう思うと、フォードはゴードンに聞いた。
「何をするんです?」
ゴードンは顔を手で覆ったままつづけた。
「提督からお呼び出しだ、何でも新しい計画の立案に立ち会ってほしいらしいぞ。」
提督、フォードはふとゴジラの時のことを思い出した。
提督は、最初のゴジラ襲撃以降フォードと知り合い色々と手助けしてくれた人物だった。
第二の父親のような存在でもあった。
フォードはふと首をかしげたが、提督のお呼び出しなら従おうと思った。
米国、某所。
シンクレア議員はゆっくりとファイルをみつめた。
長年の結果、ついに完成した。
テロ対策ができた。
これで、もう恐怖や狂気に悩まされることはない。
議員はそう思うと、ゆっくりとほくそ笑んだ。
ファイルの名前にはこう書いてあった。
「プロジェクト・ガイガン」と。
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