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パズル&ドラゴンズ ~Sundara Alabēlā Lā'iṭa Pānī lilī ~

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0話.キャラのつかみというか、プロローグというか、パズドラのパの字もない話。

 
前書き
先に言っておきますと、この話はプロローグです。
パズドラのパの字もなければ、ヒカーリーも出てきません。
えらく抽象的な上にエセシリアスな駄文の羅列です。
耐えられんわ!という方には、迷わず「1話から読んでバクシーシ!」とお願いしたい所存です。
面倒くさかったら飛ばしてくださって結構ですが、主人公の転生事情についてはこの0話にまとめておきます。 

 
「さて、仕事柄、まず最初に君にはこれを聞かなくてはならないんだが、今まで生きてきた人生について、何か思い返すこと、あるかね?」
 
 「……さぁ。別段、これと言っては」

 「え、無いの? 楽しかった思い出とかは?」

 「そりゃありますが、思い出ですし。過ぎ去ったもんは戻りやしません。過去ばかり省みたところで、意味なんぞ無いでしょう」

 「それじゃあ、会いたい人は?」

 「会いたくない奴なら山のくらい居ますがね。特別会いたい奴は……んー、すみません。ちょっと、考えさせてくれませんかね……」

 「愛する家族は? 愛する恋人は?」

 「ほっといてくれませんかね。ちょっと考えさせてください、って言っとるでしょうが」

 「やり残したことは? 未練は、無いのかね?」
 
 「……あー、ダメだ。これと言って浮かばねぇ。で? なんですって? また苦労して思い出さなきゃならんことじゃ無いでしょうね?」
 
 「どうにもやる気の感じられない返事だねぇ、君。今の自分の立場、理解してるのかね?」

 「理解もなにも、俺には、ここがどこで、どうやってここに来て、そもそも、どうしてここに来たのか、俺が話をしているこのヒゲのおっさんは何者で、さっきからなんでおかしなことばかり聞いてくるのか。なにもかも一切合切が理解出来てないんですがね」

 「分からないなら分からないなりに、想像力を働かせ給えよ。見晴かせ、この神々しい光に、神々しく広がる雲海に浮かぶ神々しい宮殿、そして神々しい私。説明は不要というもんだろう」

 「ダメですな。俺にはうさんくさい光に、うさんくさい雲、うさんくさい建物に居る、うさんくさいヒゲのおっさんしか見晴かせないんですが」

 「あれ? 私、今だいぶカチーンと来ちゃったよ? このクソ生意気な小僧に、うっかり神罰加えたくなっちゃったよ?」

 「いいんですか? 仮にも『カミサマ』が、そんな下賎な言葉遣いをしちまって」

 「うるさいやい! 先に仕掛けたのはそっちのほうだろうが! てか、分かってんなら余計な茶々入れんじゃない! さっきから話がずっと進んでないんだよ!」

 「大目に見てくれませんかね。俺もこれで、結構動揺してるんです。半畳入れないと、やってられんのですよ」

 

 「……ふむ、それもそうか。まぁ、誰しも『死』は初体験であるからな。無理からぬことか」

 

 「……やっぱり、俺は『死んだ』んですか。やーれやれ、ホント、参ったね……」

 「やはり、死ぬのは怖いかね?」

 「……別に。これといっては」

 「先にも言ったが、私は業務規程上、義務だから君にさっきのような質問をしたわけなんだが、実のところ、君のことはある程度、資料に目を通したから、もう分かっているのだよ、大体はね」

 「お見事。さすがは『カミサマ』ってわけですな。それで?」

 「……君の性格に関する欄には、でかでかと『とんでもない嘘つき』とあるわけだよ。ついでに言うと、堂々のトップを飾っている項目は、『減らず口』であるわけだ」

 「なんだか、随分と俗なんですな、神様のレジュメっていうのは。もっと他に書きようがなかったんですかね?」

 「事実なのだから仕方なかろう。そして、これによれば、見かけより、君はずっとクレバーだ。減らず口を叩くのも、相手に揺さぶりをかけ、自分のペースに相手を持ち込むためであり、情報を引き出すための君の処世術に過ぎない、と」

 「そこまで計算して喋っちゃいませんよ。口から先に生まれたような男だ、とはよく言われますがね……って、そうか、もうバレてるから、くだらねぇトークは要らないのか」

 「変な隠しだては出来ないと心得給え。神の眼はごまかせんよ。そして、『死ぬのが怖くない』、これもまた、真っ赤な嘘だ。違うかね?」

 「……違いやしませんよ。えぇ、違いませんとも」
 
 「…………」

 「確かに俺は死ぬのが、どうしようもなく怖い。恐ろしくて、たまらない。あんたの前じゃなけりゃ、身も世もなく泣き崩れたいくらいだよ。ああくそっ、なんだってこんなことに……」

 「そうだ、それが偽らざる、君の本音だ。―――しかし、タチが悪いことが、まだ1つ、残っている。……それは……」

 「……構うこたないですよ。とっとと言ってください。このやり取りにも、いい加減、うんざりしてたところです」

 

 「『これまで生きてきた人生、何か思い残すことはないか』という、あの質問。あれに関する君の答えは、――――全て本当のことだ。違うかね」

 「…………」

 

 「君の死に対する恐怖、これは疑いようもなく真実だ。しかし、君の人生に思い残すことは何もない。これもまた、真実だ。いったいこの矛盾は、どういうことなのだろうかね?」

 「…………」

 「やり残したこともなく、思い残すこともない。なのに君は、こんなにも死を拒絶する。奇妙奇天烈極まりないとは思わんかね?」

 「……未練がなけりゃ、生きてる意味は無い、とでも言いたいわけですか。良いじゃないですか、別に。目標がないのに、生きてても……」

 「君の場合は、それとは全く意味が違う。君には、言ってしまえば、『生きたい』という明確な目標すらもない。それでも、『死ぬこと』、それだけは絶対に許容できない、ときている。いったい、この感情の出処は、なんなんだろうかね? 君にだって分かるだろう。生きたい、ということと、死にたくない、ということは全く別物だ、ということくらい」

 「あぁもう、ごちゃごちゃと……結局、何が言いたいってんですか? 事実、俺はもう死んじまったわけでしょう? ならここで俺がぐちぐちごねることと、あんたから聞きたくもない説教を聞かされること、どっちも意味なんぞ無いでしょうが。何がしたいんですか、いったい」

 

 「そこで、だよ。君に1つ、チャンスをくれてやろう」

 

 「……チャンス?」
 
 「今こそ、君の質問に答えよう。これこそが、私が君をここに呼んだ理由に他ならないのだよ」

 「……ここまで来たんなら、もったいぶらずにとっとと、そのチャンスとやらを、俺にご講釈くださいよ。もうこの際だ、毒を食らわばなんとやらまで、ですよ」

 「私としては、君の得体の知れなさを、解明せずに捨て置くことが出来そうもない。―――だから、君を少し、泳がせることにする。これまでより更に、『死』と隣り合わせの世界で、ね。それがチャンスというわけだ。私を満足させるに足る結果を出せたなら、君にとって最も喜ばしいプレゼント、つまりは『元の世界での蘇生』を叶えさせてあげようじゃないか。悪い話ではあるまい?」

 「それはそれは。大層ご立派な趣味でございますね、そいつは。もしかして俺の死因、あんたが自分の無聊の慰めに俺を殺したから、とかじゃないでしょうな?」

 「冗談も休み休み言い給え。こちとら君一人にかかずらっている暇などありはしないさ。とっとと君に関する案件を終わらせたいというのが、正直なところでもあるんだよ」

 「ケッ、徹頭徹尾ふざけてやがるな、あんた。で、俺はどんなモルモットをやればいいんです?」

 「ロケーションは、そうだね。君の薄っぺらな人生において、多少なりとも君が取り組み続けた、『ゲーム』の世界にするとしよう。君に相応しい舞台だろう?」

 「もはやなんでもありですな。いいですよもうなんでも。とっととここから解放してください」

 「言われなくても、そうさてもらおう。しかし、神である私をここまで辟易させるとは、正直、それだけで君の価値が窺い知れそうなものだよ」

 「お褒めに預かり、光栄の至り。んで? この門から出てけばいいんですかい?」

 「そうだ。鳥になって来給え。幸運を祈るよ」

 「なんでそんな細かいネタ知ってんだよ……それじゃ、カミサマ。シーユーレイター、アリゲーター」

 「うむ。精々、気をつけてな」

 「…………」

 「…………」

 「……やれやれ、行ったか。全く、口の減らない男だったな。どれくらいぶりだろうかね、あれほど長く会話したのは」

 「しかしよくよく、本当に薄っぺらい人間だ、君は。それだけに、その異様な死への恐怖だけは、どうにも異常だ。まったく」

 

 「さて、見せ給え。そして、私の期待を裏切らないでくれ給えよ。人間」


 

 ―――これはまだ、物語が始まる以前。
 
 減らず口な男と、光の睡蓮が出会う前。
 
 物語はここより始まり、睡蓮は間もなく目を覚ます―――

 
 

 
後書き
はい、さっそく冗長でした。
「主人公神様の前に呼ばれる、主人公パズドラの世界にリンクスタート」の一言で済む話をここまで引き伸ばすのが、作者クオリティ。
常にこんなに会話文ばかりにはならないはずなので、どうか愛想をつかさず、お付き合いください。 
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