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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第十話 剣道少女その十

「おかしな人でもないと」
「そんなことは言わないでしょう」
「そしてそんなことを言う人程、ですね」
「いい人ではありません」
「恥を知らないと言えないことですからね」
 本気でこう思う、そんなことを言える人は正真正銘の恥知らずだ。冗談でも言うべきことではないとさえ思う。
「尊敬されることがどういうことかわかっていたら」
「尊敬されて、それが変わることを思っても」
「怖いですね」
「それなら細書から軽蔑される方がましかと思います」
「失望や幻滅されるよりはですね」
「最初から尊敬されたり期待されない方がいいです」
 心が楽だというのだ。
「私も気にせずにいられます」
「軽蔑されていたらそれで終わりですからね」
「尊敬には様々なものが付きます」
 軽蔑と違って、というのだ。
「ですからそうしたことが怖いので」
「先輩は尊敬されたくないんですね」
「はい、そうした人間でもありませんし」
 ここでも謙遜の言葉を言う、先輩らしく。
「ですから」
「尊敬されたくないんですね」
「私自身は」
「そうですか」
「それで大家さんは尊敬は」
「あっ、僕も立派な人間じゃないですから」
 いい加減で適当な人間だ、勇気もないし何も出来ない。そんな人間だからだ。
「そうしたことは」
「いらないですね」
「はい、いいです」
 こう先輩に答えた。
「別に」
「そこは私と同じですね」
「そうですね。ただ軽蔑されることは」
「そのことはですか」
「ましとは思わないですね、癪に触ります」
 あまり強く思わないけれど実際にそう思うことだった。
「ですからそっちも嫌です」
「尊敬されることと同じ位ですね」
「はい、普通がいいです」
 尊敬でも軽蔑でもなくだ。
「中間で」
「中間といいますと」
「尊敬も軽蔑もいいです」
 本当にどっちもだった。
「嫌われたくはないですけれど」
「どちらもお嫌ですか」
「好かれたいとは思っています」
 僕の偽らざる気持ちだ、尊敬されたくも軽蔑されたくもない。もっと言えば嫌われたくもない。けれどどれかというとだった。 
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