インフィニット・ストラトス ―蒼炎の大鴉―
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福音戦
先に出撃した白式と紅椿は目標地点に超音速で移動している。
俺と簪はそれから400m離れて追いかけていた。
「簪、そろそろ目的地に着くぞ」
「…うん…」
「それと、篠ノ之が浮かれている。あの精神状態は危険だ。何か重大な失態をやらかすかもしれん。頭に入れておいてくれ」
「…わかった…」
そのとき、戦闘の光をセンサーが感知する。
「戦闘が始まった。気を引き締めろ」
「…了解…」
俺はビームスマートガンを展開、レドームで戦闘を拡大して見る。センサー系の塊であるレドームはこういう時にも役立つ。
「爆発するエネルギー弾の弾幕…それもあれではまるで近接信管か時限信管だな」
エネルギー弾は直撃せずとも爆発している。
「かなり押されている…」
織斑が突撃を仕掛ける。だが、突如反転し、海面付近の光弾を切り裂き、かき消した。
「あれは…密漁船か…。こんな時に」
「…放っておけないの…?」
「織斑の性格からして放っておくとは思えん。それに、あんな奴らだが、ここで死ねば国際問題になりかねん」
その後、篠ノ之が何故か止まる。そして降り注ぐ光弾。織斑は篠ノ之を庇い、降り注ぐ光弾を受けている途中でISが解除された。
クソッ、最悪の状況だ。
「簪、お前は篠ノ之と織斑を連れて撤退しろ。俺は殿を務める」
ブースターユニットを装着、リミッター解除をして福音に突撃する。
マッハ12で直線に突撃する機体は、接触まで0.1秒もかからなかった。
膨大な運動エネルギーを伴ったシールドの刺突は福音を弾き飛ばすのに十分だった。
「貴様の相手は…この俺だ」
弾き飛ばした福音にミサイルを発射する。マッハ1.5で飛来するVTFミサイルは福音の付近で爆風の壁を作り、福音の機動を制限した。
その間に簪が2人を連れて撤退した。
「あいつらは撤退したな」
福音の反撃、降り注ぐ光弾。
俺はリフレクタービットを展開し防ぐ。エネルギー兵器は力場による干渉に弱い。福音の光弾も例外ではなかった。
ビームスマートガンを収束モードに変更、背部スラスターを狙撃、1基破壊。
「これであいつらには追い付けないはずだ」
――――――――――――――――――――
「織斑は重傷、篠ノ之は織斑の怪我からのショックで出撃できる状態じゃない。現在は黒鉄が単独で福音と戦闘中か」
「…はい…」
「わかった。報告ありがとう」
「…その…私はなぜ待機なんですか?私はまだ戦えます…」
速く援護に行きたい。こうしている間も彼は孤独な戦いに身を投じている。
「今、お前が援護に行ったところでどうにもならない。むしろ邪魔になりかねん」
「………分かりました…」
和也くん…無事でいて…
――――――――――――――――――――
「これで終わりだ」
ビームライフルで福音の胸部を撃ち抜く。福音は崩れ落ちるように海中に没した。
「終わった…のか…?」
そして福音は再び動き出した。姿を変えて
「セカンドシフト…!?」
先ほど以上の光弾が降り注ぐ。リフレクタービットでも防ぎきれず、何発か被弾する。
「かなり削られた…」
今の攻撃でシールドエネルギーは2000も削られていた。リミッター解除をしていなければ確実に死んでいただろう。
スマートガンは銃身が焼け付き、もう使えない。確実な決定打になりうるのは2発のみのハイメガキャノンだけだ。
「なら…全開でいくしかない。ナイトロ」
NEWTYPE-INJECTION-TRACE-REFORMED-OLDTYPE
バイザーにそう標示され、そのバイザーは緑から赤に染まる。
各関節と開いた胸部排熱溝から蒼炎が吹き出し、機体を包み込む。
「いくぞ」
ナイトロが発動したことで機動性はさらに1.5倍になる。
その速度はマッハ18に達した。
もはや蒼い残光だけが見える中で繰り出される精密な狙撃は確実に福音を損壊させていく。
反撃の光弾。数初が命中、シールドエネルギー -1500
「砕け散れ」
ハイメガキャノンを福音に照射、躱されるもスラスターユニットに損傷を与え、福音の速度を落とす。
あと1発だけか…
「いい加減にくたばれよ」
ファンネルを展開、福音を挟み撃ちにした状態で発射。ビームの散弾が福音の装甲を溶かしていく。それでもなお、福音は止まらない。
相性の悪い相手だ。福音は相手がいると思われる方向に撃てば高確率で当たる。だが、広範囲攻撃の手段を持たないこちらはそうとはいかない。
「墜ちろ」
レールガンで福音のスラスターを撃ち抜き、さらに機動性を奪う。現状それしか出来ない。
早くけりをつけないと俺の身体がもたない。戦闘中にかかり続けたG負荷とナイトロで俺の身体は悲鳴をあげていた。ナイトロの適性が高くても、全く負荷がないわけではない。特に、今のような多大なG負荷を受けている状態では、それが追い討ちのようにかかってくる。
どうすれば殺れる?考えろ
福音が光弾掃射の構えをとる。一瞬のチャージののち、おぞましい量の光弾が発射され、雨のように降り注ぐ。
リフレクタービットで防いでも数初は被弾する。
チャージ?あの掃射攻撃の前の瞬間は全く動いていない?なら…賭けてみる価値はある。
ビームライフルで牽制しながら接近し、光弾の誘発を狙う。
掃射以外なら避けられる。距離約50m
そして掃射の構え。一瞬の隙が出来た。
「これで、終わりだ」
ハイメガキャノンを福音の腹部めがけて照射。メガ粒子の塊は今度こそ福音を停止させた。
腹部の搭乗者が海に墜ちる。だが俺に助けに行けるほどの余力はなかった。
照射中に直撃した光弾は、デルタカイのシールドエネルギーを容赦なく奪い、シールドエネルギーを失った機体が解除される。
そして俺は福音の搭乗者と同じように海に落下した。
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