ロックマンX~5つの希望~
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第四十一話 彼女達の戦い4
パレットが無事に帰還し、全員が司令室でミーティングを受けている。
ルイン「一般人及び、レプリロイドの避難はまだ完了していない…。出撃しようにも、彼らを巻き込んでしまう可能性が高い…危険すぎるね……」
シグナス「だが、このままではイレギュラーのメルトダウンを誘発する。今出る他はない」
エイリア「あなたはどう思う?レイヤー」
レイヤー「…危険は承知していますが……私も出撃するべきだと思います。機動力に長け、ホーミング弾を持つシリウスで攻め、ターゲットを叩くのが最善でしょう」
アイリス「そうね…」
アイリスは直ぐさまダグラスにライドチェイサー・シリウスの手配をするようにパネルを叩く。
アイリス「ターゲットはギガボルト・ドクラーゲン。飛行能力を持っているから、この中で1番有利に戦えるのはルインね」
ルナ「ルインか…ルインならセイバーやバスターが使えるから奴とまともにやり合えるかもな」
パレット「それにルインさんはエックスさんと同じくらいシリウスの操縦が上手ですし。セイバーやバスターだってエックスさんやゼロさんにも負けないですもんね」
ルインは遠近共にこなせるオールラウンダーだ。
この中で尤も、ギガボルト・ドクラーゲンとの戦いに向いている人物はいないだろう。
シグナス「分かった。ルイン、ダイナスティへの出撃を頼めるな?」
ルイン「はい。」
エイリア「ダイナスティへの転送準備を開始します。万が一の場合に備えて、ルナは転送室で待機を」
ルナ「了解」
アイリス「ダグラスさん。ダイナスティにはルインが出撃します。ルイン専用のシリウスの用意を」
ダグラス『おう、任せとけ』
レイヤー「パレット。私達はルインさんのサポートを」
パレット「はい!!」
彼女達は転送室に向かうルインを悲しみを耐える瞳で見送った。
高性能な新世代型レプリロイドが相手でも遅れを取ることはないだろうが、傷つかないはずがないから。
ダイナスティは大企業が数多く進出する巨大都市であり、ネオンが派手な光を放ち、雑多に並ぶ高層ビルを照らしている。
街をひしめくビル群は遠目から見ると巨大な塊を思わせ、シリウスに乗っているルインに、自分はこれから塊に突撃するのではないだろうかと思わせた。
アイリス『ルイン、移動中のターゲットを探し出して…何度かショットを当てれば暴走を止められるはずよ。頑張って!!』
通信を受けたルインは目をつぶり、意識を集中する。
全身の感覚を研ぎ澄ませ、イレギュラーの位置を捉えようとする。
ルイン「…そこだっ!!」
カッ、と開いた瞳に、豆粒の如く小さな光が映る。
火花を散らしながら暴走するそれが、ギガボルト・ドクラーゲンであった。
彼は身体に溜め込んだエネルギーを使って、力の限り暴走する。
ルイン「…行かせないよ!!」
アクセルを吹かして、一気に接近すると同時にホーミングショットを放つ。
ホーミングショットが機関銃の如く炸裂する。
ドクラーゲンが直撃を受けて狂ったような笑い声を上げた。
ルイン「まともな反応すら出来ない程にイレギュラー化が進行しているんだ…新世代型はイレギュラー化しないなんて言葉はアテにならないね」
イレギュラーに対し、哀れに思いながらショットを連続で放っていく。
爆煙に意識を移した瞬間、ドクラーゲンの爆弾が席巻した。
ルイン「っ!!」
急停止し、爆煙がルインを無粋に包み込んだ。
直撃は避けられたが、炎の熱と黒煙をまともに浴びてしまう。
ルイン「よくも…」
アイリス『ルイン、落ち着いて』
ルイン「分かってるよ…喰らえ!!」
ちっとも落ち着いてないが、怒りのショットは敵を射抜き、みるみるうちに敵の機動力を削いでいく。
ドクラーゲンの身体から火が噴き始めた。
ルイン「後少しで追いつく………」
ターゲットを逃さぬように、慎重に追い掛けていた。
減速した敵は猛スピードで走り回っていたとは思えぬ程にふんわりと、捉えどころのない顔をしていた。
追いついたビルの屋上で上空を漂う敵を睨み据える。
ルイン「ギガボルト・ドクラーゲン…。メガロポリスのエネルギーを暴走させた狙いは何なの?」
ドクラーゲン「…………」
ルインの問いにドクラーゲンはただ呆けるだけ。
ルインはドクラーゲンの虚ろな表情を見て、悟ったような溜め息を吐いた。
ルイン「もう、何を言っても無駄なようだね」
ドクラーゲン「………俺のしていることは無駄じゃないよ」
海月型のビットが舞い降りる。
ルインはセイバーでバサリと、落ちてきた“ソレ”を斬り払った。
ルイン「無駄じゃないなら無意味だね。罪のない多くの人間やレプリロイドを犠牲にすることに何の意味があるというの?」
直ぐさまセイバーを振るう。
翡翠の輝きを放つセイバーは天を刺し、ドクラーゲンの足を僅かに斬った。
骨格のない足がゆらゆらと揺れる。
ドクラーゲン「あの方が新しい世界を創るためにエネルギーが必要だったんだよ」
触手が獲物であるルインを捕らえるように伸びる。
だが、電撃を帯びた両腕はセイバーで弾かれてしまう。
ドクラーゲンが初めて驚きに目を見開いた。
ルイン「残念。あなたの攻撃は私には効かない」
セイバーを手に静かに言う。
まるで明鏡止水の諺を体言したような姿であった。
ドクラーゲン「……………」
ギガボルト・ドクラーゲンは朱の舞姫と謳われる戦士を、初めて意志のある瞳で見つめていた。
漂うばかりの水海月が、船の碇に貫かれたような衝撃を受けた。
彼が意志を言語化出来たのなら、こう言っていただろう。
“こんな強い女性がいるなんて…”。
ドクラーゲン「でも、俺は止められないよ………」
身体が緋色の光を発し、強烈な電撃を放出した。
白く輝く火花は天の雷の光そのもの。
メガロポリスのエネルギーがそのままルイン目掛けて落ちていく。
ルイン「やばい…」
息を呑んだ瞬間、雷が枝分かれして地面に注がれる。
ルインは咄嗟にダッシュすることで、電撃をかわし、次の一撃もギリギリでかわす。
ルイン「放電が激しすぎる…なら…!!」
チャージセイバーを繰り出すが、セイバーと衝撃波は放電のバリアに阻まれてしまい、ドクラーゲンの身体に傷をつけることは出来なかった。
攻撃する間に、放電が頂点を迎え、必殺技が炸裂する。
電撃がルインの真上から降る。
咄嗟に構えたセイバーに白い火花、真昼の陽光の如く鮮やかに散った。
電撃で空が真っ白になる。
強烈な光にルインの姿が消え、上空からは跡形もなく消し飛んだように見えた。
ドクラーゲンは光の爆発を遠い目で見る。
ドクラーゲン「これで終わり…」
ルイン「終わりじゃないよ」
言い終わらぬうちに彼を紫の閃光が貫いた。
ドクラーゲン「……え…?」
胴を紫色の輝きを放つセイバーが貫いていた。
刃の先が彼の背中に生え、腹にはセイバーが深々と刺さっていた。
アルティメットセイバー
“究極”の名を関する剣がドクラーゲンを串刺しにしたのだ。
地上には血を思わせる紅いアーマーを身に纏うルインが身体から煙を上げながらも立っていた。
ドクラーゲン「……嘘…」
胴から火花を上げ、目の醒める光を上げて大破する。
後に残ったのは、爆発の黒煙のみであった。
対象を失ったセイバーが一直線に落ち、ルインが立っている地面に突き刺さる。
ルインはドクラーゲンが消えた空を真っ直ぐに見つめた。
吹き荒れる風が彼女の長い金髪を靡かせる。
ルイン「新しい世界は君達が創るものじゃない。この世界を必死に生きるみんなが創るの…それに…時代っていうのは、前のを壊して創るんじゃなくて…受け継いでいくものなんだよ…」
翡翠の輝きを宿す瞳を、人類の移住の地である夜空に浮かぶ月に注いでいた。
後書き
ドクラーゲン撃破。
次はアクセルを覚醒させます。
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