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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第九話 はじめて見たツンデレその十

「美味しいわよね」
「よく冷えていてとても」
「味もね」
「冷えたお抹茶もこれはこれで」
 熱い時と味が違う気もする、けれどそれでもだった。
「美味しいです」
「そうよね」
「もう一杯あれば」
「はい、あります」
 小野さんは小夜子さんの今の言葉にすぐにだった、笑顔で答えた。
「それではですね」
「頂きたいのですが」
「どうぞ」
 これが小野さんの返事だった。
「お楽しみ下さい」
「ではお願いします」
「お砂糖は抜きですね」
「はい」
 甘いものはというのだ。
「遠慮します」
「畏まりました」
「小夜子さんお茶には甘いものは入れないのに」
「はい、そうです」
 そうだとだ、小夜子さんは詩織さんにすぐに答えた。
「お抹茶にも他のお茶にも。コーヒーにも」
「茶道の作法にないから」
「いえ、好みで」
 小夜子さん個人のそれだというのだ。
「それでお砂糖やシロップは入れません」
「お茶にもコーヒーにも」
「いつもそのまま飲みます。コーヒーにミルクを入れる時はありますが」
 それでもだ、甘いものはというのだ。
「そのままです」
「お菓子は好きなのに?」
「飲みものには入れないです」
 このことは絶対と言う小夜子さんだった、絶対という言葉は言葉には出ていなかったけれど声の色に出ていた。
「それは」
「そういえば飲みものが甘くないと」
 ここでだ、詩織さんも考える顔で言った。
「一緒に食べるお菓子がね」
「味が際立ちますね」
「はっきりと。甘く感じるわ」
「甘いものに甘いものですと」
 食べものも飲みものもどちらも甘いならというのだ。
「お互いの味が甘さで相殺されますが」
「一方が甘くないとね」
「お茶やコーヒーがそのままの味ですと」
「お菓子が余計に甘く感じられて」
「お茶やコーヒーのその味も生きます」
「そうなるのね」
「そうです、ですから私はです」
 飲みものには、というのだ。
「甘いものは入れません」
「成程ね」
「甘いものとお茶、コーヒーの組み合わせは最高です」
 このことは話を聞いている僕も同意だ、心の中で頷いた。お菓子だけでもそうした飲みものだけでもいいけれど一緒になるとこれ以上のものはない。
 茶道でもだ、お茶とお菓子があるということが最高だ。お茶だけだと茶道はもっと寂しいものになるかも知れない。 
 僕は心の中で頷きながら小夜子さんの話を聞いていた、小夜子さんはそのアイスグリーンティーのおかわりを小野さんから頂きながら詩織さんに話を続けていた。
「その最高の組み合わせの中で」
「甘いものが両方だと」
「どうもぼやけてしまいますので」
 甘さが相殺されてだ。
「私はそう思いますので」
「飲みものはそのままなのね」
「はい、そのままです」
「お茶とかだけでもお砂糖は入れないのね」
「その時もです」
 同じだというのだった。 
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