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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第九話 はじめて見たツンデレその七

「だからね」
「わかりました、私も操は結婚するまでと」
「えっ、結婚するまで」
「はい、そして旦那様とお一人だけ」
 物凄く古風な考えだと思った、聞いていて。
「そう考えていますので」
「だからなんだ」
「お父上にはお会いしない方がいいですね」
「そのことはね」
 僕も否定しなかった。
「絶対にいいと思うよ」
「そうさせて頂きます」
「皆にもね」
 小夜子さん以外の人にもだった、それこそ。
「会って欲しくないね、親父とは」
「どうも大家さんのお父様は」
 早百合先輩もだ、首を傾げさせつつ言う。
「ドン=ジョヴァンニの様ですね」
「ドン=ジョヴァンニですか」
「モーツァルトの歌劇の主人公でして」
「聞いたことがあります、確か物凄い女好きなんですよね」
「はい、相当な方で」
 先輩は僕にそのドン=ジョヴァンニのことも話してくれた。
「カタログの歌に各国ごとに女性の数を書いていますが」
「そうした女性ですね」
「そうです」
 この辺りのことは言わずもがなだった、僕も先輩もあえて言及せずにまさに言葉と言葉の間に置いて話した。
「もう何千人単位で」
「そこもうちの親父ですね」
 何しろ四千人以上だ、どうしてそこまで出来るのか僕にはわからない。
「そっくりだと」
「似ておられますね、ただドン=ジョヴァンニは人も殺しますが」
「うちの親父はそれはないです」
 それどころか動物もいじめない、動物愛護の精神もしっかりとしている。
「絶対に」
「そうした無頼の方ではありませんね」
「無頼って言えば無頼ですけれどね」
 何しろ美女と美酒の生活だ、ボードレールの芸術的生活を真似ているんじゃないのかと思ったことすらある。
「それでもそうしたことはしないです」
「ですから」
「そこはドン=ジョヴァンニとは違いますね」
「そう思います」
「まあとんでもない親父なんですけれどね」
「わきまえているところはわきまえておられますね」
「美学とか言ってます」
 俺の美学とか言っている、女好きの。
「その様に」
「それはいいことですね」
「それで、ですけれど」
 詩織さんが言って来たことはというと。
「一つ気になることが」
「何かな」
「食後のデザートが来ていますが」
「あっ、そうだった」
 言われて思い出した、このことを。
 丁渡僕達の前に食後のデザートが運ばれて来た、今日のデザートはパンケーキだった。シロップがたっぷりとかけられていてパンケーキの生地が狐色から蜂蜜色になっている。
 そのパンケーキを見てだ、ダオさんは目を輝かせてこう言った。
「合格よ」
「合格なんだ」
「ダオパンケーキ大好きなのよ」
「そうだったんだ」
「甘いものは大好きなのよ」
「そうだったんだ」
「だからね」
 パンケーキも、というのだ。
「ダオ大好きよ」
「それでしたら」
 小夜子さんがダオさんが甘いものが大好きという告白を受けてダオさんに言った。
「茶道部はどうでしょうか」
「お茶を飲むのよね、日本の」
「はい、お茶と一緒にお菓子も出ます」
 それで、というのだ。小夜子さんは茶道もしているからこそ言えた言葉だ。 
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