ひねくれヒーロー
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過失の弁解
過失の弁解をすると、その過失を目立たせる。
—シェークスピア—
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過失の弁解
晴れることなく暗雲が立ち込める大海原
嵐が絶え間なく続き、船員たちにも支障が来していたがなんとか火の国の港へたどり着いた
正直に言おう
雷の国で入院すべきだった
船医はもうすぐ火の国へ着くと言った記憶はあるが、病室のベッドに身を任せたまま日数など感じられない
吐き気など通り越し、苦い液が口内を蹂躙した
どこからともなく、港についたことを知らせる声が聞こえて来たときには喜ぶ気力もなかった
陸にあがり、新鮮な空気を吸えたおかげか頭がすっきりしていた
先程までは——
「コンよ、よくぞ無事に火の国まで来れたッ
頑張ったぞ!」
俺を抱きしめ号泣するエロジジイのおかげですっきりした頭も頭痛に悩まされている
・・・木の葉で待ってるんじゃなかったのか、なんで港にいるんだとツッコミたいことは多い
だがそれよりも・・・
「抱きしめるどころかサバ折りに進化していくその行動を止めろ!!」
くの字に曲がり始めた体が限界を示すようにボキボキと鳴り散らす
道行く人々、特に老人が無事で良かったですのーと声をかけることがまた気に食わない
「しぬ!比喩表現じゃなくて死ぬ!モツでる、吐血した!!」
叫んだ拍子に溢れ出る血が自来也の髪を染めた
それでも気にせず抱き締め上げられる
ふざけるなジジイ
そのまま数分はサバ折りされたままだった
「死にかけてたお前が無事に自力で歩けていたことが嬉しくてのぉ・・・」
拘束から解放され、船着き場から移動し始めた自来也は言い訳がましく呟いた
吐血して失った分を補うように増血丸を貪り食いながら聞き流す
そりゃ、死にかけてたなら心配・・・するのかな・・・イマイチ分からない
「ここから木の葉まではわしが連れていくからの
さぁおぶされ」
町の門につくなり俺の前にしゃがみこみ促される
だから木の葉云々の試験はどうしたってんだよ
渋々背中に体を預け、首元に手をまわして固定する
それを確認して自来也は忍者的スピードで走り始めた
自動車よりもはやーい
周囲の景色が目まぐるしく変化し、認識できるのは色ぐらいだった
まるで溶けて行くような緑色に意識が飛びそうになり気を引き締めた
・・・そういえば、引っかかっていたことがある
「おいジジイ、なんで俺があの港に来るって分かった?」
手に微かな身震いの振動が伝わる
つばを飲み込んだ感触まで伝わってくる
「・・・んん、雷の国から来る船だったらあの港が一番多いからの、ヤマカンがあたったわい!」
誤魔化すような、そんな声色
ヤマカンのあたりでしゃべるのが早くなる
・・・雷の国から、ねぇ?
「・・・・・・なんで、俺が雷の国から来るって確定してんの?」
陸路から来る可能性も、あったよな?
耳元でそう呟く
感情の乱れを感じ取った狐火が発現する
「・・・・・・・・・いや、その、湯隠れから・・・だとそう考えるのが一番で・・・「ジジイ」
・・・すまん、尾行しとった」
首筋に大粒の冷や汗をかきながら誤魔化そうとしたジジイの耳元に狐火を押し付けた
痛みはさほど感じていないようだが呆気なく答えられた
「デイダラとか角都のときも、見てたのか?」
蝦蟇に試験だと言われたときから見られていたのだろうと予測する
角都のときは助けてもらいたかった
「ん?あの芸術家気取りの小僧と・・・お前を投げ飛ばした男か?」
そこまで見てたら助けてくれ
「あいつらS級犯罪者だぞ、助けろよ!あとあいつら月隠れで俺を拷問した奴らだよ!」
怖かったんだからなとジジイの髪を引っ張りながら叫び続け、木の葉に着くころにはお互い気力ゲージがゼロに近かった
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