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マザコン

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第四章


第四章

「マミーに聞いてみるから」
「ああ、次の休みは絶対に大丈夫だから」
「今度はどうしてなの?」
「だって俺が大丈夫だって言ってるからだよ」
 明るい笑顔での言葉だ。白い歯が光ってさえいる。論理性も何もあったものではないがそれでもだ。彼は自信に満ちた声で言うのである。
「だから大丈夫なんだよ」
「そうなの?」
「疑うの?」
「ちょっと待って」
 またしても携帯だった。今でもう三度目である。
「マミーに聞いてみるから」
「それも安心していいよ」
「いいの」
「どうしても俺を信用できないのならさ」
「ええ」
「今この場でドカンとやっていいから」
 こう言ってみせたのである。
「ピストルでもライフルでも何でもいいからさ」
「殺人罪に問われるけれど」
「死体は森の中にでも埋めていいから」
「森の中って」
「そうしたらわからないからさ」
 これはジョークであるがあまりいいジョークではなかった。アメリカでは行方不明者が年間百万人出ると言われている。その中の幾らかは殺されて死体を始末されているからではないかという説もあるのである。物騒な話である。
「それでね。どう?」
「それは」
「それもマミーに相談する?」
 にこりと笑って問うのだった。
「それはどうなの?」
「いえ、それは」
 流石にそうした相談はできなかった。母親に対してもだ。さしものサリーでもだ。
 そうしてであった。彼女も遂に言うのだった。
「それじゃあ」
「いいんだね、それで」
「今度の休みよね」 
 サリーの表情は少し観念したようなものになっていた。そうした顔での言葉だった。
「その時よね」
「そうだよ、映画館にね」
「映画館でデートね」
 また言うサリーだった。
「わかったわ。じゃあ」
「うん、それじゃあね」
 こうして話は決まった。二人は次の休みに一緒にデートをすることになった。細かい場所もやることも全て決めてだ。そうして行くのであった。
 待ち合わせ場所の駅前に行くとだ。サリーはまた携帯を見ていた。それを見ながらそのうえで彼のところにやって来たのである。
 その彼女のところに来て尋ねるとだ。こう答えるのだった。
「ちょっと。これからのことをね」
「相談してたとか?」
「マミーにね」
 まさにそうだというのだ。つまりメールで相談しているのだ。
「ちょっと」
「それで何て?」
「まだ返信来てないの」
 困った顔での言葉だった。
「それが」
「じゃあいいじゃない。それじゃあ行こうよ」
「いいって」
「行こう」
 また言う彼だった。
「それは置いておいてさ」
「えっ、けれど」
「いつもでなくていいじゃない」
 ハイメは明るい顔でサリーに告げた。
 
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